脱出方法
ホテル
B-12
2号室
「…何の音?」
周囲をキョロキョロと見回す楓
彼女は決して戦闘向きの能力では無い為
試験開始からずっとホテルで待機していたのである
「何だろう…」
ガラッッ
楓は窓を開ける
彼女の目に飛び込んできたのは
燃え盛る地下街
閉鎖されたゲート
そして
倒壊した建物の下敷きになってる雨雲だった
「ーーーーーーーーーーッッッッ!!」
バタァンッッ!!
地下街
「二天・雨威羅」
ガァンッッッッ!!
「…大丈夫か、雨雲」
「む…、すまない…」
「急な爆発で、試験後の事もあって疲れてたんだろう」
「気にするな」
「…あぁ」
「お兄ちゃぁーーーーーーんっっ!!!」
「何処ぉおおーーーーーーーー!?」
「…妹に愛されているな」
「卯琉、と言ったか」
「行くな…!」
「ん?」
「行かないでくれ…」
「…何故?」
「…頼む」
「…」
「…解った」
カタッ
「…震えて、いるのか?」
「…」
「…?」
無能力者で5本の指に入る強者
俺はコイツと引き分けるので精一杯だろう
いや、試験時は雨雲は俺よりも強者と戦闘していた
肉体ダメージか精神ダメージか
どちらが作用したかは解らんが…
もし、そうと言うのならば引き分けれたのも奇跡だろう
だが、間違いない
例え、雨雲が肉体ダメージを完全回復したとしても
今のコイツには勝てる
「…」
「…行こうか」
「貴様がそこまで言うのならば、俺も関わらん」
関係有るのか
貴様の[妹]に
あの、雨雲一族虐殺事件に
精神島
山頂
「…えっと」
「つまりね?」
「この精神世界をぶっ壊します!」
「…えーっと?」
「何で解んないかなぁー!!」
「解った方が凄ぇよ!!」
「この世界をぶっ壊す?」
「つまり…!!」
「…どういう事だよ?」
「はぁ~…」
「良い?肉体と精神は同じ体の中に宿っているの」
「でもね、それが混同しないのは何故?」
「壁があるから!」
「…つまり?」
「体の中には2つの領域がある…、って事で良いのか?」
「お!ご明察~♪」
「それが肉体と精神ね」
「で、それを隔ててるのが」
「壁?」
「そう!」
「だけどね、決してその領域は壊してはいけないの」
「…じゃぁ、駄目じゃん」
「違う違う!」
「あの機械って凄くてね?」
「その2つの領域+1つの領域を生み出してるの」
「隔ててる壁に上書きしてる形かなぁ」
「…で?」
「それを壊せば壁が再び出来る…」
「OK?」
「NO!」
「何でよー!もー!!」
「…お前さ」
「それの理論が合ってるかどうかは解んないけど」
「どうやるんだよ、具体的に」
「それって地球を破壊するって言うよりは…」
「むしろ、世間を破壊するぜ!って言ってる様なモンだろ?」
「なんつーか、イメージ的な物を破壊するって言われてもなぁ?」
「んー…、この世界はイメージじゃないけどね」
「機械を通して入って来てるから、その機械が作ってる世界を壊せばいいワケ!」
「どうやって?」
「…例えば、だけど」
「水風船って知ってる?」
「あぁ、アレだろ」
「よく遊んだりしたなぁ」
「で、それなんだけどさ」
「どうやったら割れる?」
「…そりゃ、壁にぶつけたりしたらだろ?」
「それ意外は?」
「中の空気を入れ過ぎたり…?」
「そう、それ」
「中に空気を入れたら風船は弾ける」
「じゃぁ、中の水は?」
「飛び散る…」
「風船が精神世界」
「水が私達」
「…もう、解ったでしょ?」
「…そういう事か!」
「つまり、要領オーバーを狙うんだな!!」
「そうそう」
「で、その要領オーバーなんだけどね」
「私と君が協力しないと出来ないのよ」
「どうやるんだ?」
「力、かなぁ」
「力?」
「例えば君の能力」
「どうやって発動してるのかな?」
「…そりゃ、普通に発動条件で」
「それは鍵に過ぎない」
「君の中の能力への扉の、ね?」
「君は本当は鍵なんて必要ないのに使い続けてる」
「…どういう事だ?」
「お前…、何を知って…」
「…ま、それはそうと」
「やろっか」
「おい!」
「知ってどうするのかな?」
「結局そうだよね」
「物事を知りたいくせに、それを知ってもどうする事もできない」
「上辺だけで良いのに、どうして知りたがるの?」
「それは…」
「理由なんてないんでしょ?」
「コレ以上聞くのなら、協力しないけど?」
「…っ」
「…解った」
「はいはい、ありがと~」
「それじゃ、やろうか」
「…どうすりゃ良いんだよ」
「こう、心の中にパワーを集める感じで」
「…何か変な感じだ」
「RPG風に言うなら魔力って所ね~」
「それを変換せずぶっ放す」
「コントロールするワケじゃないから簡単でしょ?」
「んな無茶苦茶な…」
「思いっきりするだけ」
「それをやれば皆、助かる」
「保証は?」
「私の経験則!」
「…信用ならねぇ」
「大丈夫だよ」
「こんな世界なら壊せる」
「…思いっきり、で良いんだな?」
「えぇ、そうよ」
「…ぶっ放す!」
読んでいただきありがとうございました