雨雲VSクォン
精神島
草原
「一天・牙刺」
「時雨」
キィインッッ!!
地面からの突起を切り刻む雨雲
クォンは雨雲と常に直線的な位置を取っている
「まだ一天しか使わないんだな」
「何だ?二天も三天も使って欲しいか?」
「かくいうお前も時雨しか使っていないだろう」
「基礎しか使わない相手には、こちらも基礎しか使わない」
「そうか」
「俺は戦わない人間とは戦わない主義でな」
「…どういう事だ?」
「貴様と手合わせしたのは2度目だったな」
「前は俺が申し込んだんだったか」
「…」
「あの時は貴様に興味を抱いたさ」
「冷静な判断と洗練された剣技」
「迷いの無い太刀筋」
「…だが、今の太刀筋は何だ」
「迷いの塊、困惑の剣技」
「戦うというよりは遊びだな」
「何を言う」
「俺は貴様の技を全て防いでいる」
「そうだ」
「防いでいるだけだ」
「攻めてこない」
「…」
「一撃を交えると相手の精神状態が解るモノだ」
「嘆かわしいな、雨雲 卯月よ」
「貴様の剣技はその程度か」
「…時雨(影)」
「三天・空撃」
ギィンッッ!!
「空気で防げる」
「天雨之刀」
「三天・空撃」
ヒュゥーーー…
ピィンッ
「むっ…」
「斬ったぞ」
(空撃が斬られたのは解ったが…)
(威力を殺せなかったか?)
「空撃を殺したのは流石だが…」
ブヅッッ
「…ッ!?」
「斬った、と言ったはずだ」
視界が赤く染まっていく
感覚が消えていく
腹を斬ったか
「さらばだ」
「…雨雲よ」
「何だ」
「もう、動ける状態ではあるまい」
「貴様は弱いな」
「…何?」
「貴様は強い」
「無能力者にして、その恐ろしきまでの強さ」
「守る者の為の強さか?」
「強者を対する為の強さか?」
「自己満足の強さか?」
「…」
「己を律する物は何だ?」
「強さか?信念か?過去か?」
「全てだ」
「だから弱いのだよ、貴様は」
「…何?」
「全てだと?」
「全てに律される程、貴様は強いのか」
「否、違う」
「それは嘘でしかない」
「無意識な嘘だ」
「…言いたい事があるならば、ハッキリ言え」
「では、言おうか」
「逃げるなよ、小僧」
「…!?」
「深くは言求せん」
「だが、解る」
「戯れ言を」
「戯れ言を信じるかどうかは貴様次第だろう」
「…」
「…」
「…その傷では、もう追ってくる事もできないだろう」
「先に現実に帰っていろ」
「1人でか?」
「付き合え」
「何を…」
「六天崩拳」
「…」
構える雨雲
クォンは構えない
ただ、それを呟いただけ
それだけで
雨雲は危険を察知した
相手は手負いだ
距離も離れている
このまま放っておけば死ぬ
それなのに
それなのに、何だ
コレは
背を見せれば死ぬ…?
いや、違う
見せなくても…
「六天・白鈴華」
死ぬ
地下7F精神実験室
プシューーー…
「…む」
「おや、クォンさん」
「貴方が失格とは珍しい」
「あー…、クソ」
「小僧め」
ボリボリと頭を掻きながら機械を出て行くクォン
「?」
プシューーーー…
「…ロ・クォンか」
「流石だ」
ロ・クォン
雨雲 卯月
失格
3F待機室
ガチャッ
「ゼロー」
「ウェスタか…」
「何?この死屍累々」
「院長の馬鹿が酒さえ持ってこなければ…」
「酒かよ…」
「何でセントまで寝てんの?」
「グランが飲ませた…」
「娘に飲ませんなよ…」
「で、何の用だ?」
「あぁ、お前の好きそうな試合があったぜ」
「誰と誰だ?」
「雨雲とロ・クォン」
「録画は?」
「バッチリだ」
「ナイスだ」
「んじゃ、見に行くか」
「行こうぜ」
「いや、お前はコイツ等をどうにかしてくれ」
「えー」
「映像ぐらい1人で見に行ける」
「ガキじゃあるまいし」
「そうか?」
「んじゃ、行ってこい」
「あぁ」
バタンッ
地下3F~4Fの階段
「おや」
「奇怪神か」
「えぇ、どうも」
「ゼロさんは何処へ?」
「地下4Fに、ちょっとな」
「お前こそ何処に行ってるんだ」
「ステラさんにグランさんを呼んでくる様に言われまして」
「ステラが来てるのか?」
「えぇ、はい」
「…そうか」
「どうかしましたか?」
「いや、別に」
「何処に居る」
「地下4Fの放送室隣りの部屋に居ると思いますが」
「そうか、助かる」
「じゃぁな」
「…ゼロさん」
「何だ」
「この前の…、件ですが」
「…お前に言う事はない」
「…そうですか」
「では、私から言いましょう」
「…」
「守るべき物はあるんでしょう」
「…さぁな」
「貴方は…」
カンッカンッカンッ…
ゼロは布瀬川の言葉を無視し、そのまま下へと降りていく
「…貴方は」
「何を見ているのですか…」
読んでいただきありがとうございました