黒い悪魔
マンション
301号室
完全に引っ越し作業が終わった波斗の部屋
火星達も帰り、波斗は部屋の中を再点検していた
「…ありゃ、もう7時か」
「そろそろ夕ご飯を作らないと…」
ーーーーーーーーーーーあぁあああああ
「…ん?」
バタァンッッッッ!!
ズルズルズルズルズルズル!!
「あ、あおあおあおあ蒼空君んんんんんん!!」
「ぎゃぁああああああああああああああああっっっっっっっっっ!!!!」
「這いつくばって出て来ないでください!!」
「マジで怖かったですが!?」
「うぅ…、ごめんよぉ…」
「でも…!でも…!!」
「奴が出たんだ…!!」
「…奴?」
「ゴキブリがぁあああああああ…」
「…俺、片付けましたよね?」
「朝起きたら元に戻ってたぁ……」
「何でッッッッッ!?」
302号室
「お、驚くべき再生率ッ…!!」
「ごめんね…」
「…いえ、今はそれよりも」
「黒い悪魔は何処です!?」
※ゴキブリです
「だ、台所に…」
「奴め…!最悪の拠点を築きやがったな!!」
※台所です
台所
「美栗さんはここに!」
「う、うん」
「フッフッフ…、黒い悪魔よ!」
「俺が滅してやろう!!」
※ゴキブリです
「何処だ?何処だァ…」
ブーンッッ
「ぎゃぁああああああああああああああああああああっっっっっっっ!!!!!」
ブーンブーン
「ぎゃぁっっっ!ぎゃぁあああああああああああああああああああ!!!!!」
カサカサッッ
「ぜぇーはぁーぜぇーはぁー…」
「おのれ…!黒き大翼を羽ばたかせてきたか…!!」
※ゴキブリの羽です
「…だがぁ、甘い」
「黒き悪魔を滅せよ…」
「[聖剣]ァアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
※丸めた新聞紙です
「うぉおおおおおおおおおおッッッッッッ!!!」
ブーッン
「ぎゃぁあああああああああああああああああああ!?」
カサカサカサカサ
「ぐっっ…!クソぅ…!!」
「…仕方ない、か」
「蒼空君…?」
「これだけは使いたくなかった」
「ですが、仕方ないのでしょう」
「…?」
「右に在すは[聖剣]」
※丸めた新聞紙です
「左に在すは…」
「[神の吐息]ァアアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!」
※殺虫剤(室内用)です
「そ、それは…!!」
「そう、何よりもリスクが高いのです…」
「使うのは…!心が痛む…!!」
※値段が高いので消費したくないだけです
「[聖剣]ならば!リスクは低いですが…!!」
※丸めた新聞紙なので安いだけです
「使うしかっ…!ない…!!」
「英断…、だね」
「…はい」
カサカサカサカサッ
「出たな!!黒い悪魔ッッッ!!」
※ゴキブリです
「[神の吐息]ァアアアアッッッッッッッッッッッッッ!!!」
※殺虫剤(室内用)です
シューーーーーーー
ブーーーンッッ
「と、飛んだっっ!!」
「黒い悪魔よ…、その選択こそが貴様の過ち」
「地に落ちろッッッ!黒い悪魔ァッッッ!!」
「[聖剣]ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
※丸めた新聞紙です
バチンッッ!
カサッ…
「…」
「…」
「黒い悪魔を…」
「撃退…、した!」
※ゴキブリです
「やったぁああああああーーーー!!!!」
「ありがとうっ!蒼空君!!」
「長い…、闘いでした」
「悪魔の拠点に乗り込み…」
※台所です
「うぅ、やっと安心して料理が作れるよ」
「いえ、その前に」
「掃除しましょうか」
「えっ?」
「掃除」
「…えぇ~」
「嫌そうな顔しないでください!」
「また黒い悪魔が出ますよ?」
※ゴキブリです
「うぅ…」
「俺も手伝いますから!」
「…解ったよ」
「じゃ!俺はここと居間を掃除しますんで」
「美栗さんは風呂場とトイレとかをお願いします」
「うん!任せて!!」
「蒼空君も頼んだよ!」
「はい!」
「…ふぅ、こんなモンか」
再び、波斗は大量のゴミを廃棄した
心なしか前回の廃棄量よりも増えている気がする
「何処をどうやったら、ここまでゴミが溜まるんだ…」
「ある意味、怪奇現象じゃねぇか」
とは言え、なんとなく掃除に来るのが楽しみだったりする
前のアパートじゃ近所間の交遊とか無かったからな
有っても大家さんからキュウリを貰うぐらい
正直な話、こんな交遊が夢だったりもする
「♪」
お隣さん同士のコミュニティって大事だよな
信頼関係ってのか?
何か有ったときには、すぐに対応できるし…
「蒼空くーん」
「はーい」
残り、3週間とちょっと
残り短い時間だけれど…、去り際が惜しくなるような良い関係を作っていこう
風呂場
「お礼に背中流すよ~」
「…遠慮します」
「ぼ、僕じゃ不満かな…?」
「そういう問題じゃなくてですね!!」
「美栗さんも女性なんですから!」
「少しは身の危険という物を…」
「身の危険?」
「男は野獣ですよ」
「…君も?」
「かも知れませんね」
(フッ、前回の様には流されないぜ!!)
「君にだったら…」
「…良いかな」
「えっ」
「僕は…、足が動かない」
「けれど、君はそんな私でも分け隔て無く接してくれる」
「…蒼空君」
「年上の女性は…、好みかな?」
「え、えっと…」
ドタンッ
傾れるように波斗を押し倒す美栗
美栗の熱い吐息が波斗の頬へとかかる
「あ、蒼空君…」
「蒼空君が良いなら…、僕は…」
「み、美栗さ…」
ドサッッ
「…蒼空?」
「…誰?」
「…委員長?」
※修羅場突入です
読んでいただきありがとうございました