探偵の仕事
西の廃工場
「…何だよ、コレ」
4人の目に入ったのは信じがたい光景
「や、奴がやったのか…!?」
優に5、60人は居る縛双の面々
それ等が呻き声をあげて地面に伏している
「…違うね」
「蔵波は女性に手を挙げないよ」
「万が一の場合でも、絶対に怪我はさせない」
「じゃぁ、誰が…」
「…貴方達も縛双の一員ですか?」
「「「「!!!」」」」
「こんにちは」
「誰だ!?テメェ!!!」
「皆に何しやがった!!」
「淑女が大声を出すなんてはしたない…」
「何、彼女らには少し黙って貰っただけですよ」
「貴方達も…、ね?」
「…釜藁さん?」
「おや…?蒼空君ではないですか」
「あ、蒼空…、知り合い?」
「俺の隣人の知り合い…」
「…わぉ」
「学生が、こんな所に来てはいけませんね…」
「早く帰りなさい」
「…釜藁さんこそ、どうしてここに?」
「あぁ、私ですか?」
「探偵業でしてね、ここで人捜しをしているのです」
「彼女らは妨害をしてきたので黙って貰いましたが」
「やり過ぎですよ…!」
「相手は凶器を持っていましたのでね」
「こちらも仕事です」
「心を鬼にしないと食べていけないのですよ」
「…っっ」
「釜藁さん、だっけ?」
「おや、君は?」
「熊谷って言います」
「ほう、熊谷君」
「何かね?」
「ここに俺達と同じぐらいの年齢の奴が居ませんでしたか?」
「高校生の男です」
「…ふむ、高校生か」
「残念ながら見てないですね」
「…そうですか」
「行こう、皆」
「く、熊谷!」
「彼女らは大丈夫だよ」
「怪我こそしてるけど、痕が残らないように加減されてる」
「…ここに居ないなら、丘だ」
「あそこに居るかも知れない」
「ん、解った」
「君は?」
「私は皆の手当をする…」
「…桜見さんを頼んだぞ」
「任せてね~」
「おう!」
「うん」
西の廃工場前
「波斗は何処かしら」
「熊谷君も居るはずだ」
「それよりも、あの見張りをどうにかしない事には始まりませんよ」
「…そうね」
「火星」
「お、俺?」
「あの子達を傷付けろってのか!」
「そうは言ってないでしょ」
「ちょっと気を引いてきなさい」
「…その隙に行くのか」
「そうよ」
「彩愛も付いてきなさい」
「了解しました」
「頼むわよ、火星」
「了解!」
「ちょっと」
「…誰だよ?オッサン」
「ここに高校生が居なかったかな?」
「知るか!」
「…そうか」
「それは残念」
ボンッッッッッ!!
「っ!?」
(煙幕だと…!?)
火星の投げた空音を立てながら周囲に煙をまき散らす
見張りは口を防ぐが、煙の全ては防げない
「おい!どうした!」
「何が有った!?」
「来るな!」
「煙…ま……」
ドサッッ
倒れ込む縛双の一員
「ぐぁっ…」
ドサドサッ
その周囲に居た者達も次々に倒れていく
「残念、煙幕じゃない」
「睡眠ガスだよ」
ガスマスクを着けた火星は、煙の中を横断する
(…さて、粗方の見張りは片付いたかな)
「後は任せるぞ、織鶴、彩愛」
西の廃工場
ガタンッ
「壁が脆いわね」
「かなり前に潰れましたから、ここは」
「…さて、と」
「彼が居るのは厄介ですね」
「彼?」
「おや、貴方達は」
「来るのが遅いじゃありませんか」
「釜藁…!」
「彼女等を倒したのは貴方ですか?」
「えぇ、まぁ」
「ここは任せても大丈夫ですか?」
「…任せる?」
「ハッ!去り際に盗聴器とGPSを仕掛ける様な奴の言う事を聞くとでも?」
「おや、気付きましたか」
「何……、力試しですよ」
「ちょっとした、ね?」
「…」
「…ともかく、貴方の依頼は受けますよ」
「構わないでしょう?織鶴さん」
「…えぇ」
「そうですね」
「では、ここは任せます」
「アンタは?」
「…知り合いの少年が居ましてね」
「彼を危険には晒せません」
「…少年?」
「えぇ、まぁ」
「好奇心旺盛なのは良いのですが…、危険に首を突っ込むのは感心しませんね」
「…その子を助けに?」
「はい」
「…そう」
「彩愛、ここは任せるわよ」
「肉体労働は苦手です」
「…こんだけボロボロの相手なら大丈夫でしょ」
「ボロボロと言いますか…、何人か手当を受けて…」
「な、何だ!お前等!!」
「「「!」」」
「…貴女は、先刻の」
「そいつの…!釜藁とか言う奴の仲間か!?」
「違うわよ、こんな奴と一緒にしないで欲しいわね」
「貴女は?縛双の一員?」
「…あぁ」
「そうだ」
「ここに高校生が来なかった?」
「2人か、3人ぐらいの」
「き、来たけど…」
「お前は誰なんだ!?」
「誰、ってねぇ…」
「…その子の雇い主って所かしら」
「おや、貴女も探し人が居るのですか」
「…フン」
「私も居ましてね」
「その子と一緒に居れば幸いですが」
「私としては嬉しくないけどね」
「…そいつは、何て名前だ?」
「「蒼空 波斗よ」です」
「「……え?」」
読んでいただきありがとうございました