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秋鋼  作者: MTL2
223/600

隣人への手土産

万屋


「…織鶴さん」


「何?彩愛」


「どうして言わなかったんですか」

「縛双を潰せ、と依頼が来ている事を」

「潰せば一石二鳥ですし、知らせても…」


「駄目よ」

「あの釜藁とか言う男と波斗を接触させるべきではないわ」


「何故です?」


「…波斗が先刻みたいな盗聴器やGPSを仕掛けられて気付くと思う?」


「…なるほど」


「火星や鉄珠なら大丈夫でしょうけどね」

「出来れば、今回は同時進行」

「且つ、波斗と釜藁の接触を避けながら行うわ」


「…難しいですよ?」


「百も承知よ」

「彩愛、縛双のアジトとテリトリーを調べられる?」


「勿論です」


「潰すわよ、縛双」


「…了解」




マンション


3階


301号室


「ん、もうこんな時間か」


波斗の新しい住居を見て騒いでいた3人

しかし、気が付けば時計は6時を指している


「もう帰るね~、蒼空」


「俺も帰るかな」


「ありがとうございました!」


「あぁ、忘れてた」

「コレ」


「?」


火星から手渡される包み紙


「何ですか?コレ」


「お隣さんに挨拶用の手土産」


「えぇ!?悪いですよ」

「自分で用意しますって」


「良いの良いの」

「ほら、引越祝いにね?」


「祝える場所なんですか」


「…」


「…」


「熊谷君-!途中まで送るよ-!!」


「ちょ!逃げんな!!!」





「…逃げられた」

「…」


暗い部屋


「…電気電気」


カチッ


「ハッハッハ!!」

「壊れてやがる…」


やっべ


マジ怖い



真っ暗な部屋

家具も何もない


「…」


ポタポタポタ


「…え」


雨まで降ってくる始末


「うわ…、最悪」






数時間後


ゴロゴロゴロゴロ…

ガァアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッッッ!!!



「…雷のオマケ付きですよ、ハイ」


やっべ、泣きてぇ

怖い、マジで怖い


部屋の隅の暗闇から何か出てくるんじゃねぇの?

っていうか、出てきたら泣きます

マジで



カサッッ


「ひぃっ!?」

「…って、これ」


波斗の足に当たったのは火星から渡された隣人への手土産


「…」


このまま、ここに居たら怖ぇよなぁ…

…どうしよ?

隣人に挨拶に行くか…

気を紛らわす事ぐらいは出来るはずだし




廊下


ガチャッ


オドオドと廊下へ出る波斗

忍び足で隣へ向かい、ゆっくりとチャイムを押す


ピンポーン


「…」


シーーーーーー…ン


「留守かよッッ…!!」


キィイ…


「…え?」


キィイ…キィイ…



暗闇に静かに響く金属音


「…おいおいおい」


やべぇって

洒落になんねぇ


キィイ…キィ…


「…っ」


体が動かない

動けない


キィイイー…


音が近付いてくる


キィイ


逃げろ


キィイ…


逃げろよ


キィイイイ…


逃げーーーーーーー…




「何してるんだ?」


「ぎゃぁあああああああああああああああああっっっっっっっ?!!?!?」


「ひぅっっ!?」


「…っっっっっっ」


「な、何だい?君は」


オドオドとした表情で波斗を見つめる女性


「ちょ…、すいません…」

「ちょっと待って…」


「う、うん」


「…」


「…」


「…げほっ」

「はい、すいませんでした」


「い、いや…」

「大丈夫かい?」


「えぇ、もう大丈夫です」

「驚いただけなんで」


「そ、そう…」

「もしかして金属音かな?」


「え、えぇ」


「だとしたら、ごめんね」


「あ…、車いす」


「そうなんだ」

「足をやちゃってね…」

「そろそろ錆びてきてるから、取り替えないといけないかな…」


「そうなんですか…」


「で?君は誰なんだい」


「あ、俺は蒼空 波斗って言います」

「301号室に引っ越してきました」


「隅部屋のかい?」

「僕は302号室の美栗ミクリ 遊乱ユウランだ」


「美栗さんですね」

「よろしくお願いします」


「うん、よろしく」

「…それにしても301号室か」

「大変だろう?あそこは」


「…えぇ」

「何か出そうで」


「あはははっ!確かにそうだね」

「あそこは電気が回りにくくて、電球が切れやすいんだ」


「…へ?」


「ん?」




「…フフフフ」

「アハハッハハッハハハッハハハ!」


「わ、笑わないでくださいよぉ…」


「いやいや、ごめんごめん」

「あそこで事件なんて起きてないよ」

「その人が悪戯心で言ったんだろうねぇ」


(火星ィ…)

「…って、ん?」


気が付くと、美栗と名乗った女性はビショビショに濡れている

水が髪から滴り落ち、何とも言えない色気を醸し出している


「濡れてますね」


とは言え、この鈍感馬鹿がそれに反応する事はない


「ん?あぁ」

「この為体だからね」

「雨に濡れてしまった」


「そうですか…」

「タオルでも有れば良いんですけど、引っ越してきたばかりで荷物が…」


「…その手に持ってるのは?」


「あぁ、貴女に引っ越しの挨拶代わりに、と」


「もしかして、中身はタオルじゃないのかい?」


「なるほど!こういうのってタオルが多…」



洗剤



「…火星ィ」



読んでいただきありがとうございました

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