新しい住居
路地裏
「ちっ…」
流石ですね
気付きましたか…
釜藁の持つ液晶画面には[LOST]の文字
「駄目だったみたいだね」
「まぁ、簡単にいくとは思ってませんよ」
釜藁へと語りかける1人の女性
その女性は車いすに乗っており、金属音を立てながら釜藁へと近付いてくる
石榴色の髪の毛
桃色の目
紺色のジーンズと、白いTシャツ
「美栗!」
「女性が、そんな薄着ではしたない」
「そうかい?」
「僕からすれば、この季節にそんな格好をしてる君の方がどうかしているよ」
「コレは探偵の服装ですよ」
「破るわけには行かないのです」
「…はぁ、変な所に拘るね」
「でも君の腕は確かだ」
「私の依頼を…、達成してくれるんだろう?」
「勿論ですよ」
「貴方は私の優秀な助手で在りーーー」
「依頼者なのですから」
「頼むよ」
「あの、万屋は絶対に何かを知っているんだ」
「僕の未来を奪った…、奴等の事を」
「…えぇ、そうでしょうね」
「ですから私は接触を試みました」
「尤も、失敗に終わりましたが」
「…大丈夫ですよ」
「必ず、彼等の秘密を暴きます」
「頼むよ…、釜藁」
「えぇ、約束しますよ」
「美栗」
九華梨高校
校門前
「やっほー」
「遅いぞ、熊谷」
「何してたんだよ」
「プリント忘れてた」
「行こっか」
「はいはい」
「おい、お前等帰らないのか?」
「おぉ、蔵波に桜見」
「馬鹿ップルじゃん」
「どうしたの?」
「だ、誰が馬鹿ップルだ!!」
「そうだぞ!俺達はカップルだ!!」
「こ、声がでかい!!」
「事実だろ?舞桜」
「う、うぅ…」
「リア充共がァ…」
((蒼空も大概だろ…))
「で?何してるんだ」
「俺と熊谷でちょっとな」
「用事か?」
「んー、まぁ、そうだね」
「一緒には帰れないよ」
「そうか…、仕方ないな」
「帰ろうか、舞桜」
「お、おう」
「じゃぁな、蒼空、熊谷」
「「お幸せに」」
「う、うるせぇっっ!!」
万屋
カランカラーン
「ただいま、戻りました」
「あら、お帰り」
ソファに座る織鶴と、キーボードを弄くっている彩愛
波斗は熊谷とそのままソファに直行し、織鶴の前に座る
「…隣の子は?」
「俺の友人の熊谷 鈎です」
「へぇ、よろしくね」
「どうも」
「で?熊谷君は何の用かしら」
「えっと、お願いして良いですか?」
「構わないわよ」
「ただし、それ相応の報酬は貰うけど」
「あ、それなんですけど」
「俺の給料から差し引いてくれませんか」
「良いの?」
「えぇ、俺の依頼でもあるんで」
「…解ったわ」
「ありがとう~、蒼空」
「いやいや、俺も頼むワケだしな」
「で?依頼って何かしら」
「織鶴さん、縛双って知ってますか?」
「!」
彩愛の手が、一瞬止まる
「…さぁ?」
「巷で有名な暴走族なんです」
「実は、そこの連中が俺の友達を尾行してるらしくて…」
「その目的を知りたいのね?」
「はい」
「よろしくお願いします」
「お願いします」
波斗と熊谷は2人揃って頭を下げる
「うん、了解」
「それじゃ依頼を受けるわね」
「「ありがとうございます!」」
カランカラーン
「「ただいまー」」
「あ、お帰りなさい」
「ん?お客さん?」
「って!熊谷君じゃないか!」
「お久しぶりです、火星さん」
「火星じゃなくて火星!!」
「…あれ?」
「解りました、火星さん」
「…」
(狙ったな…)
「で、何処に行ってたんですか?」
「お前の仮入居を探してきたぜ-!」
「本当ですか!?鉄珠さん!!」
「仮入居?」
「あぁ、俺さ」
「家が工事中で…」
「大変だねぇ…」
「全くだよ…」
「で、何処なんですか」
「前の依頼人が管理してるマンションでね」
「空き部屋が出来たらしくて、次の人が来るまでなら大丈夫らしいよ」
「4週間はいけるはずだから」
「おぉおおおお!ありがとうございます!!」
「今から下見に行くかい?」
「家具は届くのに2日ぐらいかかるかも知れないけど」
「行きます!行きますとも是非!!」
「蒼空~、依頼はどうするの?」
「こっちも情報収集とかに時間が掛かるし、そっちは依頼人よ?」
「別に構わないわ」
「そういう事だ!」
「行こう!熊谷!!」
「う、う~ん」
「じゃぁ、織鶴」
「俺は蒼空君と熊谷君を連れて下見に行ってくるから」
「えぇ、いってらっしゃい」
「あ、俺も外出するぜ~」
「は?何でよ」
「先刻ナンパした女の子から連絡来てさ~♪」
「熊谷、熊谷」
「ん?何」
「あっち見てみ?」
「あっち?」
ゴキンッッ
「何もないけど」
「そうだね、うん」
「それじゃ行こうか」
「…?」
カランカラーン
「織鶴さん、このゴミどうしますか?」
「外に捨てときなさい」
マンション
「…でっか」
「そうかい?」
蒼空の目前には5階建てのマンション
別段、言うほど大きくは無いが蒼空のボロアパートに比べれば大きいのは当然である
「いやいや…、何コレ」
「でか過ぎでしょう」
「普通じゃない?」
「いや、でけぇって!」
「蒼空君の部屋は3階だよ」
「隣人とかに挨拶しておく様に!」
「はい!」
3階
301号室
「ここですか」
「うん、そうだよ」
「はい鍵」
「ども」
ガチャッッ
「…フフッ」
「広い…、広すぎる…」
「落ちつかねぇ…」
「落ち着こうか、取り敢えず」
「大きいですねぇ」
「高いでしょ、コレ」
「確か月50万だったかな?」
「ごっ」
「ココココココココココ?」
「壊れた…」
「五十万なんて払えませんよ!!」
「大丈夫!無償だから」
「無償?」
「随分と気前が良いんですね」
「そりゃー、ここは首吊…」
「…」
「…」
「…管理人が前はお世話になったからって」
「何を言いかけた、何を」
読んでいただきありがとうございました