嘘と策略
住宅街
『…仕方ないね、約束は約束だ』
『雨雲 卯琉』
『彼女は…』
『…!!』
「…どうした?」
『…』
敗北?
ヘルンも、ジャックも…
バムト・ボルデクスまでもがァ…!?
「…?」
監視させてた人形からの情報だ!間違いはない!!
ヘルンはともかく、ジャックが負けたァ!?
バムトに至っては戦闘放棄だと…!!
どうなってやがる!?
「…言う気は無いのか」
チッッ!うるさい!!
こっちは、それ所じゃねぇってのに!!
『…待て』
「言い逃れはさせんぞ」
『まぁ、待てって』
『逃げはしないさ』
「…」
マズい!マズい!!マズい!!
『逃げはしない』ィ?
逃げられないんだよ!屑がァ!!!
目の前には[東の剣士]と[西の銃士]をブチ殺しちまうような野郎が居る!!
そんな奴に背を見せた瞬間!この体は壊されちまう!!
どうする!?どうする!?
「…」
使えねぇ奴等だ!!!
アイツ等のせいで俺の計画が台無しじゃねぇか!!!
「…言う気は無いようだな」
刀を鞘から抜く雨雲
『わ、解った!言う!!言う!!!』
『ちょっと思い出してたんだよォ!せっかちな奴だなァ』
「そうか」
使えない雑魚共の事を考えてても仕方がねェ!!
今はコイツに集中だ!
アイツが!アイツが来るまで!!
時間を稼がなきゃならねェ…!!
『雨雲 卯琉はなァ』
『テメェを殺したくてウズウズしてるみたいだぜェ』
『アイツは…』
「…もう充分だ」
『は?』
「嘘を聞きに来たのでは無い」
『う、嘘じゃねぇよ!!』
「卯琉は俺を「殺す」などと言わない」
「そんな事、解りきった事だ」
『チィ…!!!』
せめてもの時間を稼ぎたかったが…!
「言わないのならば、用は無い」
「さらばだ」
『ま、待て!』
『本当の事を言おう!!』
「何を今更」
「貴様の戯れ言などに…」
ゴキンッッ
「…がッ」
『…ククッッ』
『グギャハハハハッハハハッハッハハハハッハ!!!!!』
雨雲の右肩を潰す巨岩
腹を抱え、声が潰れる程に笑い上げるモルバ
『後ろがガラ空きだぜェエエエエエエエエエエエエエエ!!!!』
「コイツは…!!」
『取って置きだァ…!』
『元[守護神]!キース・ジャスミン!!』
『[東の剣士]よりも![西の剣士]よりも!強力!!!』
『あの2人に苦戦したテメェの倒せる相手じゃねェェェェよォォォォオオオオオ!!!』
「くそッ…!!」
カラァーーー……ン
(刀が…!)
『ギャハハハハハハッハハハハハハッハハ!!!』
『油断!油断!油断ン!!』
『死ねッ!死ねッッ!死ねッッッ!!!』
「…ッッ!!」
右肩は潰れ
相手は能力者
武器を落とした
拾い上げていては潰される
「…ッッ!!」
逃げ切れるのか?
逃げられるのか?
否
退いてはならない
「…頼むで」
「あの人の体…、埋葬したりたいねん」
男が頭を下げたのだ
決してプライドの無い様な男ではない、あの男が
頭を下げたのだ
それを無下にするなど、出来るはずが無い
退いてはならない
今、退けば奴は逃げるだろう
この男の亡骸も持ち去られるだろう
ならない
逃がしてはならない
卯琉の事を知っているのは確かだ
逃がすものか
「無刀斬撃…!!」
「薙払!!」
ゴゥンッ!
キースの脇腹へと直撃する雨雲の拳
だが
「がっっ…!!」
『馬鹿だねェ!そいつは属性系統の岩属性!』
『防御力は一級品さァ!!』
「ッッ…」
やはり無刀斬撃が効く程、甘くはない
絶望的だ
右腕は最早、上がりすらしないだろう
「…」
振り上げられるキースの腕
腕は岩に覆われ、鈍器と化し
雨雲へと振り下ろされる
「薙払…!!」
ガァンッッ
「ぬっっ…!がァ…!!」
『まだ防ぐかいィ?』
『だが、今のでヒビがいったはずだ』
「くッッ…」
『時間の問題ですら無い!』
『次の一撃で終わりだァ!!!』
「[地砕弾]」
ゴッッッ
「……ッッ!!」
ドォオオオオオオオオンッッッ!!!
『な…』
「貴様は…?」
「…[破壊屋]」
「ダボル・ベードガンだ」
『ダボルゥウウウウウウウ!!!』
『裏切ったのかァアアアアアア!!!!』
「裏切った?違うな」
「お前を仲間だったと認識した事はない」
『貴様ァ…!!』
「…どうして俺を助けたんだ」
「ハデスの一員だろう、貴様は」
「…逃げるのをやめただけだ」
「…?」
『役立たずだけじゃ収まらず!!裏切り者に成り果てるかァアアアア!!!』
『殺すッッ!殺すッッッ!殺すッッッ!!』
「人形を操るだけの貴様が俺を殺せるものか」
『その傷だらけの体で!よく言えるなァ!!』
『キース・ジャスミン!!!』
『殺せぇっっっっっ!!!』
「…」
立ち上がり、腕に岩を纏うキース
狙いは雨雲ではなくダボル
「…今、楽にしてやろう」
「キース…」
「ダボル」
「!!!!」
ゴキッッッッ
「がぁあああああああああああああああ!!!!」
『…クッッ』
『ギャハハハッハハハハッハハハハハハハッハハハハ!!!!』
『引っかかりやがったァ!馬鹿だァ!!!』
『グギャハハハッハハハッハハハッハハハ!!!』
「ダボル、ダボル、ダボルー」
「ダッッボボダオッドバボオボ」
『人形に声を発せさせたら動きが鈍りやがった!!!』
『馬鹿だ!馬鹿!!』
『ゲハハハッハハハハッハハハハッハ!!!』
「人形師…!!!」
『どうする?オイ』
『倒せるのかよ、今のお前に』
『無理だな!無理!!』
『無理だ!!!!』
「ッ…」
「…ダボル、と言ったか」
「頼みが有る」
「…何だ」
「数分で良い」
「元[守護神]を止めてくれ」
「…人形師を狙うのか」
「あぁ、元を叩く」
「奴自体の戦闘は高くはないはずだ」
「大本を…、叩く」
「…解った」
「任せたぞ」
「あぁ」
ジリッッ…
背を合わせるダボルと雨雲
『…馬鹿がッ』
ドンッッ!!
2人は同時に疾走する
「[岩砲弾]!!!」
ゴォオオオオオンッッッ!!!
「雨雲!今だ!!!」
雨雲は急速にモルバへと接近する
「無刀斬撃!!!」
「薙は…」
雨雲の目前に現る数十体の人形兵
「「「「キケケケッケケケッケエッッケエケッケッッ!!!」」」」
『人形兵は終わりだと…、言ったかな?』
「しまっ…」
「雨雲ーーーーーーーーッッ!!!」
ザンッッ
「キケッッ」
『な』
「…何?」
空間が、斬れた
「お兄ちゃん♪」
聞き覚えの有る声だ
「…まさか」
「久しぶりだね!」
忘れもしない声
「元気だった?」
「卯琉…?」
読んでいただきありがとうございました