治癒力
病院
135号室
「…ぅ」
(ここは…?)
白い天井
カ-テンで隠れた周り
手足が動かない
妙に息苦しい
ピ-という音が規則的になり続いている
(…病院?)
ピ-…
(え…)
音が止む
(機械が止まったのか…?)
シャァ-
カ-テンが開き、悲しそうな火星さんと織鶴さんが見える
それと…、医者
「残念ですが…」
「蒼空君…」
「仕方ないでしょう、火星」
「彼も解ってたはずよ?この世界に入ればどうなるか」
「だけど…」
「身よりもない様だし、葬式は上げるわよ」
「ちょっと、この子の死亡原因と時刻を総督に伝えて」
「畏まりました」
(死亡原因…?)
(死んだのか…?俺)
(って事は、今は霊体ってヤツなのか…)
「…墓は新しく作ってやるわよ」
珍しく悲しそうな織鶴さん
(何か罪悪感が有るなぁ…)
(…死んだんだな、本当に)
考えると今まで色々と有った
…いや、有り過ぎたかな
最後の記憶が無い
確か、あの男に腹に凄い物を喰らわされて…
…アレが死因か
幽霊になったら呪ってやろうかとでも思う
まだまだ、やりたい事は沢山有ったのになぁ…
どうも後悔してしまう
死に際ぐらいサッパリしてやりたい物だが
…無理もない、か
「はい!ドッキリ大成功~♪」
「…え」
「いや-!本当に致死量の傷だったんだけどね!?」
「生きてるからドッキリしてみようって話になって!!」
「まさか本当に生きてるとは思わなかったわ」
「オメデト-」
「ハッハッハ!良い演技だっただろう?私!!」
「死因とか!神妙な顔付きとか!!」
「いや-!ありがとうございました~」
「気にしない気にしない!!」
「ハッハッハッハ!!」
「そうですね!」
「アハハハハハハ!!」
「…」
「…ハハ」
「…」
「お、怒ってる?蒼空君」
「…」
「あ、本当に死んでるね」
「心臓マッサァ-----ジ!!!」
「三途の川って綺麗なんですね」
「ゴメンって…」
「天国と地獄、どっちに行こうか迷っちゃいましたよ」
「あ、どっち逝こうか迷っちゃいましたよ、か」
「いや、本当にゴメン…」
「それはそうと、何で俺は病院に?」
「貴方、軍の非常回線を使って助けを呼んだじゃない」
「非常回線?」
「何ですか、それ」
「知らないの?」
「全く」
「…じゃぁ何で」
「さぁ?」
「…そう言えば!あの男!!」
「?」
「変な奴が居まして…」
「俺と同年代か、それ以下か…」
「普通の格好だったんですけど、変な能力を使ってました」
「どんな能力?」
「拒絶がどうとか…」
「!!」
「腕を治して貰ったんですけど…」
「その後…、後…」
待て
委員長の事を話したらマズいんじゃないのか?
委員長は…、五眼衆
しかも幹部だ
話せば委員長の身が危ない…
「…戦闘になりまして」
「何で?」
「人類進化の事について議論したら意見が割れたので…」
「…馬鹿じゃないの?」
(信じる貴女もどうかと)
「ともかく、よく生きてたわね」
「確かに死ぬかと」
「一度死にましたが」
(根に持ってるな…)
「もの凄く強かったですよ」
「正直、軍の能力者を舐めてましたね…」
「強くて当たり前でしょ」
「確かに軍もそれぐらい強くないと…」
「No,1よ、それ」
「え?」
「だから、No,1」
「軍最強の能力者」
「…え?」
「いや、え?」
「しかも、奴は負傷してしばらくは再起不能状態らしいわ」
「波斗がやったの?」
「…蹴りと殴りを」
「それかもね」
「驚いたわ、No,1に勝つなんて」
「良くて引き分けだと思いますが…」
(本当、よく生きてたな、自分)
「本当にNo,1なんですか?」
「間違い無いわ」
「拒絶を使うのはNo,1よ」
「その拒絶ってのは…?」
「言葉通り」
「全てを拒絶する特殊系能力」
「生命も、痛覚も」
「拒絶出来る物は全て拒絶出来るわ」
「厄介な能力なのよね」
「発動条件も解らないし」
「凄い人を敵に回してしまった…」
「後で総督に言い訳でも言いに行きましょ」
「知らなかったとは言え、軍の最高戦力をぶちのめしたんだから」
「はい…」
コンコンッ
「失礼します」
「総督に報告は?」
「済みました」
「さて、蒼空 波斗さんの怪我の状況ですが…」
「内臓破裂、多量出血」
「不可解なのは傷ですが、一切の血が出てないんです」
「じゃぁ何で出血多量になるのよ」
「他の傷ですね」
「腹以外の傷は出血してましたので」
「しかし、興味が湧くのはそれ以外なんですよ」
「?」
「傷の治りが異常に早いんですよ」
「全快も時間の問題でしょう」
「そんなに早いの?」
「そりゃ-、もう」
「あと3日ぐらいで治りますよ」
「3日!?」
「幾ら何でも早過ぎないか!?」
「ですから興味が湧くんです」
「この軍専属病院一の医師と言われた私でも不可解ですしね」
「…前に腕が折れたときは普通に治らなかったわよね?」
「折れたままだったよな」
「腕?腕なんて折れてませんよ」
「え?」
「あ、腕なら戦闘前にNo,1の人に治して貰いました」
「触ったらいつの間にか…」
「…腕だけですよね?」
「腕だけです」
「全身の傷は説明できませんね…」
「まぁ、傾向を見るとしましょう」
「もう帰って良いですよ」
「良いんですか!?」
「傷は治りかけてますしね」
「安静にしてれば3日以内に治りますよ」
「良かった…」
「その傷の治癒力が一時的な物か、それとも永久的な物か」
「詳しく検査させて欲しいですねぇ」
「…そうね」
ゴキンッッッ!!
「あがっっ!?」
織鶴さんの鉄拳(能力使用)が俺の頭にめり込む
洒落にならない
「留守番って言ったわよね?」
「…スイマセン」
「今回は初犯だから見逃すけど…」
「次は無いわよ?」
「…はい」
「まぁまぁ、まずは帰ろう」
「鉄珠と彩愛が待ってる」
「…そうね」
「はい!」
読んでいただきありがとうございました