表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秋鋼  作者: MTL2
204/600

仲裁人

「ガァアアアアアアアアアアアアッッ!!!」


「ヴォオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」


ガキィイイイインッッッ!!!


化獣同士の殺し合い


自然の掟に従う野獣の様に争い、喰らい合う


「ガァアアアアアッッ!!」


ゴキィンッッッ!!!


骨が砕ける


「ヴォオオオオオッッ!!!」


ブチブチブチッッ!!


肉が裂ける


「「アアァアァアアアアアアアアアアアッッッ!!!」」


しかし、意味は無い


急速に再生し、傷は跡形も残らない


「グァアアアアアアアアアアッッ!!」


「ヴォゥウウウウウウウウッ!!!」


実力は拮抗

一向に勝負は終わらない


当然だ


双方、傷は負わない

その上、実力に差はない


着くはずが無いのだ


絶対に


永遠に決着の無い勝負


それを止められるのは第三者のみ



「衝撃の拒絶」


バチィイイインッッッ!!!


「ガァアアアアアアア…」


「ヴォッッ…?」


「やめろ、バムト・ボルデクス」

「貴様は意識があるはずだ」


2人の仲裁に入ったのはNo,1

波斗とバムトの拳撃をいとも簡単に受け止めたのだ


「…小僧」


バムトの体から闇紋が引き、元の姿へと戻っていく


「邪魔をするのか」


「邪魔をするさ」

「殺す気だっただろう?」


「殺す気など無かった」

「ただ、それ程までに危ない相手だった…、と言う事だ」


「身勝手だ」

「[核]から連絡が来てなかったのか」


「いつまでも母親離れできないようじゃ、困りものだぞ?小僧」


「…何?」


「ケンカ早いのも原因だ」

「それよりも、そいつをどうにかしたらどうだ?」


「ガァアアアア……!!」


「貴様を見て昂ぶっている様だぞ?」

「仕留め損なった獲物を見たのだから、当然だがな」


「…意識の拒絶」


バチィイイインッッッッ!!!


「ガッァッッッ…!」


ドサッ


その場に倒れ込む波斗

眠るように目を閉じ、静かに息を立てている


「随分と強めだな?」


「こうでもしなければ気絶しないだろう」


「…なぁ、小僧よ」

「時は動き出した」

「貴様は…、どうする?」


「…」


「蒼空 波斗は目覚め始めている」

「軍も動きだし、[核]も、祭峰も動き出した」

「これからは[五紋章]の争奪戦が始まるだろう」

「無論…、あの者も動かないはずがない」


「俺は俺のやりたい様にするだけだ」

「貴様も、軍も、何もかも知った事ではない」

「利害が一致するならば利用するし、対等するならば潰す」


「勝手だな」


「勝手は貴様だ」

「[核]の命令を無視し、さらには[憑神]を使った」

「どうして俺がここに居ると思う?」

「貴様を殺すように、奴に言われたからだ」


「従ってるのか」


「一時的にな」

「俺としても、まだ軍のNo,1の地位は惜しい」

「元老院の老害共と、奴に従うべきだというのは承知している」


「…貴様も、無知ではないのだな」


「当然だ」


「では、小僧」

「4人目を」

「6人目を」

「7人目を」

「9人目を」

「10人目を」

「12人目を覚えているか」


「…」


「全て、貴様が殺した人物だ」

「壊したと言えば…、1人目も含まれるがな」


「奴等は力に溺れ、化け物へと成り下がった」

「1人目は…、邪魔だっただけだ」


「邪魔だった、か」

「貴様は幼い」

「その得手勝手な理由で蒼空 波斗をも殺すのか?」


「…何故、そう思う」


「監獄で過ごそうとも、噂ぐらいは耳に入る」

「軍最強能力者集団No,1の貴様が負けた…、と」

「貴様を負かすなど、[憑神]の誰かぐらいの物だろう?」


「流石の洞察力だ」

「…では、次は俺が問おうか」


「あぁ、答えられる範囲ならな」


「貴様は何故、自首などした?」


「…ふむ」


「貴様も同じだったはずだ」

「力に溺れ、殺戮を楽しみ、血を啜る日々を送っていた」

「No,1を殺してくれたのには感謝しているが…、その後は俺が貴様を始末するはずだった」

「それが自首だと?笑わせる」


「手柄を無くして悪かったな」


「全くだ」


「…いや、俺も自首する気は無かったんだがな」

「だが、如何せん退屈になってきていた」


「退屈?」


「当然だろう」

「最強の能力者を倒せてしまったんだぞ」

「目標が無い、と言うのは…、詰まらん」


「それで自首したのか」


「いや、本来なら本気で軍を潰しに行こうかと考えていた」

「…その前に、小娘が来たが」


「小娘?」


「今の総督だ」

「契約をしないか、と言われてな」


「契約だと?」

「何だ」


「そこまでは言えない」

「諦めろ、小僧」


「…フン」

「では、貴様が軍潰しを止める代わりに何を受け取った?」

「それぐらいは教えてくれても良いだろう」


「酒と飯と時計」


「…それだけか?」


「それだけ…、ってワケでもない」

「小娘はな、単独で来たんだ」


「単独?」


「あぁ、単独で」

「俺が中国の山で飯を食っている時に来てな」

「通りすがりの女かと思ったんだが…、面白い奴だった」

「俺の前に座り込んで、酒を突き出しやがった」

「俺も気が立っていて「去れ」と言っても去ろうとしない」

「まぁ…、奴が総督と知った時には驚いたが」


懐から煙草を取り出すバムト

火を付け、緩んだ口へと運ぶ


「そこから交渉を始めてな」

「アレだコレだと永い話をした後、条件を出された」

「対価は?と聞いたとき、小娘は言った」

「「私の愛用の腕時計と、お気に入りの食事所の飯と、この私が愛飲している酒」と」

「酒は安物だ」

「日本でも簡単に手に入る、な」

「だが……、気に入った」

「人を殺すよりも、この享楽を見据えている女の方が面白いと思ったのだ」


「…それで自首を?」


「そうだ」

「コレが約束の時計でな」


バムトはNo,1に時計を見せびらかす

No,1は時計を見て呆れるようにため息をつく


「…角が取れたか」


「俺も歳だ」

「若者のように戦場を駆け回るだけが楽しみだった時代じゃぁないんだよ」


「では、コレからどうする気だ?」


「貴様が来たのでは俺も暴れられんだろう」

「大人しく、当初の予定通りにロシアの大監獄にでも向かうさ」


「…貴様が大人しく収容されるのか?」


「美味い飯と酒、日本新聞さえ有ればな」


「…掛け合っておこう」


「助かるよ、小僧」


「ぐっ…」


「…目覚めそうだな」

「蒼空 波斗を軍本部の病院に連れて行け」


「ロンドン病院で充分だろう」

「そもそも、怪我を…」


「ロンドン病院でコイツの回復速度が怪しまれたらどうする?」

「院長ならば上手く言い訳を付けるだろう」


「…解った」


波斗を背負うNo,1


「…小僧!」


「何だ」


「道を…、違えるなよ」


「貴様に、その言葉をそのまま返す」


「…結構だ」

「ではな、小僧」


「さらばだ、バムト・ボルデクス」

「2人目よ」

「空間距離の拒絶」


トンッ


波斗と共にバムトの前から姿を消すNo,1


「…11人目の小僧め」

「見ない間に大きくなりやがった」


バムトは懐から煙草を取り出し、口へと運ぶ

火を点し、空へと白煙を立ち上らせる


「…時は、動き出したか」



読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ