化獣
裏路地
ゴォン!!ゴォン!!ゴォンッッッ!!!
「[闇豪拳]!!!」
「ガァアアアアアアアア!!」
ゴォオオオオオオオンッッッ!!!
双方の拳は交差し、互いの顔面へと猛撃する
「くっ…!!」
「ガァアアアアア!!!」
ゴォオオオンッ!!!
(振り切りやがった…!!!)
体制を崩すバムト
その機を見逃さず、波斗は追撃を掛ける
「[黒跳]ッッッ!!」
ドンッッ!!
バムトは空中へと飛空し、地上を見下ろす
死の恐怖
長らく感じ得なかった物ではある
だが、それ以上に!この躍動感!!!
見事!見事!!見事!!!
------むな
「…」
また、お前か
いや……、確かにそうだな
暫く振りで、俺も興奮していた
------楽しむな
全く、貴様には呆れるな
自分では手を下さず、俺を利用する気か
だが、敢えて利用されてやろう
要するに、殺さなければ良いのだろう?
「[闇帝]」
殺さなければ良いのだろう?
俺が殺されては意味が無い
少し…、本気を出そうか
闇
全てがバムトを覆い尽くす
「おぉおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
天へと咆吼するバムト
闇に呑まれた姿は悪魔の様に
化け物の様に
魔王の様に
「はぁああああァアアアアアアアアアーーーー…」
腕脚は黒鋼の如く妖輝し
両指は先尖する
背からは闇が風に揺れ
牙は獣の如く
体には闇紋が刻まれる
眼は紅く
隻眼
「この姿は久しぶりだな」
「不完全な俺でも…、少しは完全に近づける」
---------殺すな
「殺しはしないさ」
「そこまで本気は出さねぇよ」
---------加減できるとは思えない
「加減はする、と言っているだろう?」
「まぁ…、奴なら腕の1本や2本は再生できるだろうしな」
---------…任せても?
「あぁ、大丈夫だ」
「ただし…、いざというときには止めてくれ」
---------解った
「ガァアアアアアアアアアアアアア!!!」
バムトへと飛びかかる波斗
「…[闇滅]」
掌には闇
橋を消滅させた時とは違う
掌に明らかな[闇]が有るのだ
そして
-------…ゥンッ
威力もケタ違いだ
「ガァッッーーー…!!」
波斗の右半身は消滅
背後の建物、道、並木も全て
消滅
「やり過ぎたか?」
「ガァアアアアアアアアアアアアア!!!」
ボゴボゴボゴオオッ!!
傷すらも意味は無い
数秒で回復
いや再生とでも言うべきか
ゴゥンッッッ!!!
「ぬがっ…!!」
バムトの腕に乗し掛かる重々しい一撃
骨は悲鳴を上げ、肉はブチブチと千切れていく
「ーーーーーーッッ!」
「[闇豪拳]ッッッッッッッ!!!!」
「ガァアアアアアアアア!!!」
バチィンッッ!!
「[黒虚]!!!」
「グルゥアッッ!!!」
ガッ
「なっ…」
波斗はバムトが[黒虚]を放つよりも速く腕を掴み
地上へと向かって
「ガァアアアアアアアアアアッッッ!!!」
ゴォオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!
叩き付ける
「ぉっ…!!」
どうする?
予想以上だ
13人目の力を侮っていた
11人目の小僧が負けたのも何かの間違いか
小僧が油断したか、どちらかであろう、と
強い
----------駄目
無理だ
----------使ってはいけない
使わなければならない
----------彼を殺す気?
こちらが殺されては元も子もない
そうだろう?
----------それは
元より、舞台裏で傍観している貴様の意見を聞いている俺が馬鹿だった
自由にやらせて貰う
----------駄目だ!!
なに、最低限のノルマは果たす
殺さなければ良い
----------彼は[希望]!
----------本来なら傷付ける事すら…
俺には[絶望]にも見える
見極めれるのなら見極めてみたいではないか
----------ッッ!!
「[闇狂神]」
「ガッッ……?」
壁に建つパイプを掴み、高所で停止する波斗
獣同然に敵を殺し、壊し、喰らう
化け物である波斗は化獣だ
獣
まさしく猛獣
その様な波斗が
感じ取ったのだ
「ヴォオォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
下で咆吼する化け物に
恐怖を
「ヴォゥウウウウウウウウウウウウアアアア!!!」
ガシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッ!!!
方向によって周囲のガラスは砕け落ち
空気は振動する
「ガァアアアアアアアアアアッッ!!」
猛進
波斗は化け物に対して時間を与えるべきではない、と判断したのだろう
化け物に猛進し、破壊を試みた
だが、結果的に
破壊されたのは波斗だった
「ガァッ…」
右の袋はぎを噛み千切られ
腹に風穴を開けられ
片目を抉られた
「ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ガァアアア…!」
黒く闇に覆われた右目が波斗を見る
紅く血に濡れた左目が波斗を視る
獣は喰らう
自然の摂理に則って
弱肉強食
読んでいただきありがとうございました