[守護神]と支部長と[破壊屋]
ロンドン支部
地下牢
「…ふぁぁ」
「おい、欠伸をするな」
「仕事中だろう」
「す、すいません!支部ちょ…」
「…っと」
「いや、気にするな」
「[元]だろう?」
「…何で捕まっちまったんですかねぇ」
「貴方は罪を犯すような人じゃぁ…」
「仕方が無いさ」
「俺は知ったんだからな…」
「知った…?」
ガシャァンッ
「だ、誰だ!?」
「…」
見張りの前に現れる男
全身を黒いーブで覆い、顔が見えない
「…遅いぞ」
「すまんな」
「お、お前…」
「[地砕弾]」
ウー!ウー!ウー!
地下牢に鳴り響く警報
牢は破壊され、見張りは気絶している
支部長執務室
「コレが資料だ」
「どうも」
「えっと、ウェスタ君だったかな?」
「私は[守護神]のキース・ジャスミンだ」
「えぇ、噂は聞いてますよ」
「何でも首席卒業だったとか」
「君もだろう?」
「だが、元は兵士希望だったんだってね?」
「まぁ…、変えました」
「…詳しくは聞かないでおくよ」
「で、君には名前を変えて貰う」
「仕来りでしたね」
「支部長は代々、[ガーディアン]の名を…」
ウー!ウー!ウー!
「!?」
「警報だな」
「君はここに居なさい」
「あ、貴方は!?」
「仕事だよ」
ロンドン郊外
裏路地
「…君が[破壊屋]だな?」
「あぁ」
月光に照らされるロダとダボル
「まさか…、キースが連れてきたのが[破壊屋]とはな」
「だが助かったよ、感謝する」
「いや、構わない」
「…そろそろ移動するか」
「そうだな」
「行かせませんよ」
「!」
「…テメェは」
「総督側近の白月 霙です」
「ロダ・ファミア…、脱獄しましたか」
「…貴様等の思惑通りにはさせない」
「そうですか」
「では、死んでいただきましょう」
構える白月
「…[破壊屋]」
「あぁ、任せろ」
「逃げるぞ」
「はぁ!?」
「奴とは闘うな」
「…逃げ切れるのか」
「ここは俺の育った町だぞ?」
「外者の知らない道なんて幾らでもある」
「俺は闘いたいんだがな」
「計画だ」
「…解った」
「[斥疾]」
ヒュンッッ
「…逃がしません」
酒場裏
「はぁっ!はぁっっ!!」
「情けないな」
「こちとら滅多に動かないんだ…」
「管理職だからな…」
「…全く」
「お、来たか」
「[守護神]、連れてきたぞ」
「ご苦労」
「…コイツが軍を裏切ったのか?」
「そうは見えないぞ」
「…あぁ、そうだろうな」
「ロダ、聞かせてくれ」
「何をした?」
「…何もしていない」
「俺は知っただけだ」
「何を?」
「総督の目的を…」
「軍は!奴等は…!!」
グチャッ
「かっ…」
ロダの足首に突き刺さる突岩
「一天・牙刺」
「もう来やがった…!!」
「[土壁]!!」
ドガァアアアアアアアアアッッ!!
道を覆い尽くす土の壁
白月の進路は[土壁]によって寸断され、キース達と別隔される
「逃げるぞ!」
「奴とは闘わない方が良い!」
「おい!俺が何の為に…!!」
「奴はケタが違う!!」
「Noでもないんだろう!?」
「違う!」
「奴が総督側近になったのは理由は、その実力!!」
「無能力者にしてNoとも張り合える実力を持っているからだ!!」
「…面白い!」
「話を聞け!!!」
「奴とは闘うな!!」
「何でだよ!!」
「実力なんざ…!!」
「違う!」
「奴は…!!」
「…」
壁で音が聞こえませんね
何かを話してるのは解るのですが…
いえ、それよりも
今…、垣間見えたのは[守護神]?
裏切ったのですか?
彼が?
…彼が裏切るのは計算外です
何より彼を失うのは軍にとって不利益
総督に指示を仰ぐべきでしょうか…
シーーーーー…ン
「…音が」
逃げた?
逃がすのは最も失策
「…追わせていただきます」
ベルアの家
ガタンッッ!!
扉を乱暴に開けるダボル
その後ろからはロダに肩を貸したキースが入ってくる
「くそっ…」
「足!大丈夫か!?」
「この程度など…」
「…お前の家か」
「家族は?」
「全員、俺の知り合いの家に行かせた」
「今は誰も居ないはずだ」
「…すまない、キース」
「やめろよ、辛気くさい」
「俺とお前の仲だろう?」
「…すまないな、本当に」
「ありがとう」
「やめろって~」
「仲が…、良いんだな」
「まぁな!」
「軍学校からの付き合いだ」
「…あぁ」
「因みに軍学校でフロラと出会ってな!」
「やめろ、お前の惚気話は長い」
「え?そうか?」
「あぁ、長い」
「そうかなー」
「で、その後は悪ガキを預かったりしてな!」
「忙しかったが、その頃のベルアがもう、可愛くて!」
「いや、今でも可愛いんだぞ?」
「再開しやがった…」
「コイツは妻子最愛だからな…」
「言うだけ無駄だ」
カランッ
「…何の音だ?」
3人の足下に転がっている爆弾
「逃げーーーーーーーーーーーッ!!!」
ガランッ
「がっ…、はっ…」
残骸と化した家の中から這い出るダボル
足に感覚が無く、右肩には木の破片が突き刺さっている
「痛ぇっ…!くそっ…!!」
「[守護神]…!ロダ…!!」
「何処だ…!!」
ザリッ……
「…嘘だろ」
ダボルの手元に居たのはロダ
正確にはロダだった人肉
焼け焦げ真っ黒になり、血すらも蒸発してしまっている
「そんな…」
「…っ」
「…[守護神]?」
「[守護神]!!」
「流石…、タフだなぁ…」
苦笑するキース
しかし、その体には幾つもの鉄骨が突き刺さっている
「お前…!俺とロダを庇ったのか!?」
「能力がギリギリで間に合わなかった…」
「お前しか…、っ」
「おい![守護神]!!」
「探せ!近くに居るはずだ!!」
「!?」
「…やっぱり来やがったか」
「軍の連中!?」
「お前の助けが…!」
「いや…、奴等は敵だ」
「俺とロダを殺しに来た」
「な、仲間だろう!?」
「…知ったのさ」
「俺も、ロダも」
「何処から漏れたかは知らないが…、それがバレた」
「俺は殺される…、家族も」
「家族も…!?」
「…妻も、ベルアも護らなければならない」
「妻のお腹には新しい命もあるんだ…!!」
「…ッ!」
考えろ!!
どうする!?どうする!?
どうすれば、この状況を打破できる!?
死ぬべきじゃないんだ!コイツは!!
死んじゃ駄目なんだよ!!
「…なぁ、[破壊屋]」
「名前を…、教えてくれ」
「ダボルだ!ダボル・ベードガン!!」
「…ダボル」
「俺を殺せ」
「…は?」
「俺を殺せば…、情報の漏洩は無かったと判断されるはずだ」
「家族の身も…」
「じょ、冗談だろう!?」
「…俺は真面目だぜ?」
「嘘だろう…?なぁ?」
「嘘だよなぁ!!」
「…楽しかった」
「じゃぁ…、な」
「嘘だろ!おい!!」
「[守護神]!!!」
「…キース」
「キース・ジャスミンだ」
「キース…」
「…娘が居るんだろ?」
「妻が居るんだろ!?」
「死ぬなよ!生きろよ!!!」
「妻達を護るためなら…、俺は喜んで死ぬよ」
「何を…」
「何を知ったんだ!?お前達は!!」
「総督って何だよ!?」
「白月の背後に何が有るんだ!?」
「なぁ、おい!」
「キース!!!」
「…」
最早、動かなくなった口
その口から滲み出る言葉
「…何、言ってんだ」
信じられるものか
こんな戯言を
「…」
キースはダボルの思想を否定するかのように目を伏せる
「お前は…!!」
「…みだ」
「何だ!?」
「頼み…、だ」
俺を
殺してくれ
「嫌だよ!なぁ!!」
「俺は…!!」
「…ダボル」
「皆を…、護ってくれ」
血で濡れた手がダボルの頬へと触れる
冷たい
もう、永くない
「お前が…、俺を殺している所を…、証明しなければ…、意味が無い…」
「頼…む…」
何でだよ
何でお前みたいな人間が死ななきゃいけないんだよ
何で、どうして
「俺を…、殺してくれ」
…何でだよ
「[岩砲弾]」
何でお前が死ななきゃなんねぇんだよ
どうして俺が
お前を殺したんだよ
読んでいただきありがとうございました