能力発動
ガチャッ
静かにドアを開け、逃げ出す波斗
「…」
ダッ!!
焼却炉
「はぁっ…、はぁっ…」
何処だ、ここは
元から知らない場所で迂闊に行動したのが間違いだったか…?
パァン!
「!」
しまった
銃声だ
近い
「逃げなきゃ…!!」
ぐらっ
「!」
立てない?
長く座り続けたせいで足が痺れたか?
ポタッ
「…ん?」
地面に血が広がっている
ビリビリと電撃が足から脳まで広がっていく
そうして漸く理解した
撃たれた
「ぁっ…!がぁ…!!」
声は出すな!!
先刻の銃声は俺の足を狙っていた!!
闇雲に撃ったか狙ったのかは解らないが、声を出せば完全に的になる!!
「-----ッ!!」
口を押さえ、血が溢れる足を押さえる
立つ事は出来ない…、が足を引きずる事は出来る
狙われているのなら死ぬ
闇雲に撃たれたのならば逃げる
「畜生っ…!!」
ズルッズルッ…
(死んでたまるか…!!)
ガチャッ
「…!!」
感じる
自分のすぐ後ろに居る
誰かが銃を向けている
「クソガキ…、アイツ等の仲間か」
「…違う」
「嘘をつけ」
「アイツ等の車から出てきただろう」
「連れ去られたみたいな物だ…」
「黙れ」
ガチャッ
不味いな…
どうする?この状況を
「どうせ軍の新人だろう」
「芽は早い内に潰しておかなければな」
逃げるか?この足で?
助けは?来るはずがない
ザザ-
(無線…?)
警察が使ってるタイプのヤツだ
「おい、ガキを発見した」
「奴等相手に人質が効くとは思えないが、試して…」
「…おい、どうした?」
『はい、抹殺決定ね』
「!?」
カチッ
「まさか…」
「…?」
「来い、ガキ」
「え!?おい!!」
ズルズルと引きずられて行く波斗
男の額と手には汗がじっとりと湿着いている
「不味い不味い不味い…」
「奴等…、まさかアイツを殺すなんて…」
「アイツは元々仲間だったんじゃねぇのかよ…!!」
「…?」
「動くなよ」
「!!」
「アイツが殺られた以上、テメェは俺の命綱だ」
「命綱は大人しく…」
「それが命綱?」
「ハッ!笑わせんなよゴミクズ」
「…!!」
「そのガキは採用してないわ」
「まだテスト中だし、逃げ出したし」
「殺して良いわよ、サクッと」
「!?」
「まぁ、そういう事よ」
「アンタ…!!」
「死にたくない?蒼空 波斗」
「当たり前だ!!」
「じゃ、私を助けたときみたいにしなさい」
「な…!!」
起こせと言うのか
あの「奇跡」を
「無理だ…!!」
「じゃ、死になさい」
「--ッ!!」
「おいおい…」
「良いのか!?このガキを殺して!!」
「織鶴…」
「良いのよ、殺して」
「私達を見たときから死ぬか生きるか」
「その子の運命は決まってるのよ」
「フザけんなよ…!!」
「本当にっ!本当に殺すぞ!?」
「良いって言ってるでしょ?」
「殺しなさいよ」
「でも…、殺した瞬間に貴方も死ぬわよ」
「…!!」
「選びなさい、蒼空 波斗」
「死ぬか生きるか」
「死んで…!たまるか…!!」
「じゃ、使いなさいよ」
「能力を」
「え…?」
「解ってるはずよ」
「貴方は生まれ持った能力がある」
「私を助けた時みたいにね」
「どうやって…!?」
「知らないわよ」
「貴方がいつも能力を使ったとき、何かしてなかった?」
「え…?」
「条件よ」
「発動条件」
「…」
そういえば…、いつも危険に発動してたわけじゃなかった
何だ…?何が…?
「畜生が…!!」
「ガキィ…!!」
ゴリッ
銃口が波斗の首筋に当てられる
「どうせ死ぬんだったら…、道連れだ…」
「死のうぜ…!!」
ブツブツブツ…
「おい!聞いてるのか!?」
能力
発動条件
死
足
血
「あれ?血が出てる…」
「あ、前に鋏で切っちゃいまして」
「大した事ないですよ」
「…---!!」
「死ね!クソガキャァ!!!」
ガチッ
「あ?」
何かを考えた訳ではないが…
銃を掴んだ
バチィイイイイイイン!!
またあの音だ
落雷したかの様な音
鼓膜が痺れる
ただ…、今回は目を開けるのが怖くなかった
「あ…?」
銃はひん曲がり鉄塊と化している
勿論、もう使い物にならない
「はい、合~格!!」
「へ…?」
「合格よ、合格」
「頑張ったわね」
「火星!」
「解ってる!」
パァン!!
「あがっ!!」
カラ-ン
男の持っていた銃が火星によって打ち落とされる
「…ふぅ」
「流石ね」
「波斗は店に戻ってコレからの事とか説明するから」
「で、アンタはね-」
「…死んどく?」
「…ッ!!」
ダッ!
逃げ出す男
「逃がすか」
ボゴンッ!!
横にあるドラム缶を掴む織鶴
「よっと」
ゴォオオオン!!
「ひぃ…!!」
メギャッ
生々しい粉砕音と潰肉音
「う…」
「この程度で吐かないでよね」
「火星、軍に連絡」
「ああ」
カチカチッ
「さて…、行きましょうか」
「死体は…」
「軍が処理してくれるわよ」
「軍って…?」
「…後で説明するわ」
「今は帰りましょ」
「は、はい…」
読んでいただきありがとうございました