見解の違い
「…1人で大丈夫?」
「貴様は速く、その女を病院へ連れて行け」
「辛うじて息はある」
「…!」
「任せたよ?」
「無論だ」
『行かせないね!!』
キィンッ
「こちらの台詞だ」
馬常へと突進した人形は雨雲に斬られ、悲鳴すら上げる事が出来ずに崩れる
『チッ…』
「問う」
「貴様の目前に居る男は他に気を持って戦える男か?」
『随分な自信だねェ』
(…逃げやがったか)
「「自信」?違うな」
「確証だ」
中央通り
ゴォオオオオオオオオオッ!!
ドンッッ!ドンッッ!!
バイクで道路を走行する響
その前方を疾走するダボル
「…中々、良いバイクだな」
「…」
…どういうつもりや、コイツ
先刻、響が護符を取り出し攻撃を仕掛けようとした瞬間
ダボルは響を余所に全く別の方向に走り出した
響はバイクで追いかけたが、明らかにダボルの方が速い
このバイクはゼイル特性バイクやぞ…?
フェラーリなんざ目でもない程のはず…
しかも、完全にアイツは加減して走っとる
誘導の罠か…?
「どうした?スピードが落ちてるぞ」
「うるさいわッ!!」
「スピードで勝てないのなら、運転手の実力を見ようか」
「!?」
ダボルは空中で向きを180℃変える
つまり、バックステップで走っている状態なのだ
(スピードが落ちひんやと!?)
彼のスピードは変わっていない
まるで何かに引っ張られているかのように疾走しているのだ
「[地砕弾]」
ボゴンッッ!!
「!!」
ダボルの疾走した地面が粉砕され、破片が響へと飛来する
「壁、盾、守!!!」
キキィンッ!
「防ぐか」
「何のつもりや!?」
「何で逃げるねん!!」
「「逃げる」?まさか!」
「移動してるだけだよ」
「誘導か…!!」
「…そうだな」
トンッ
「さぁ、着いた」
「ここは…」
廃工場
「荒廃した工場だよ」
「ここなら存分に戦えるだろう?」
「…何で、こんな所を選んだんや」
「さぁ?何でだろうな」
「敢えて言うなれば…、俺が戦いやすいからだ」
グンッ
「…?」
響の体が小さく振動する
「[反動]」
ガァンッッッ!!!
「かっは…」
響の背中に走る鈍く重い衝撃
つい先刻まで目の前にいたはずのダボルが遠い
「ぶっ飛ばされた…!?」
「…どうした」
「俺を殺すんだろう?」
「…上等や」
重々しく響は起き上がる
懐から五枚の護符を取り出し、地面に叩き付ける
「風、雷、嵐」
響の腕の中で吹き荒れる風雷の嵐
「手加減も糞も…、有ると思うなや」
「当然だ」
嵐は次第に巨大に
大きく大きく
「…む」
身構えるバムト
ゴォオオオオオオオオオ!!
遂に嵐は廃工場ほどの高さへと成る
「切り裂かれろ」
その一言と共に、嵐はダボルへと進路を向ける
「…フン」
ダボルは動じず、狼狽えず
嵐へと向かって手を伸ばす
「鎖」
ガキィンッッ!!
「なっ…」
「させると思ぃなや」
ダボルの四肢に護符の鎖が巻き付き、動きを封じる
「っ…」
「[反盾]!!」
キィンッ!!
ダボルへと接近していたはずの嵐が急に方向を変え、響へと向かってくる
「…ッ!」
「解除!!」
パチンッ
響は能力を解除し、更に護符を構える
「不動で防ぎおったな…」
「舐めて貰っては困るな」
「…」
この男、能力が解らん
先刻のぶっ飛ばされたんや岩の破片で攻撃してきたし…、念力系か?
いや、もしほうならワイの技を防御できんはずや
攻防両立する念力系統の能力なんざ有り得へん
…いや、待てぇよ?
何か引っかかる
「こちらから行くぞ」
「!!」
ゴゴゴゴゴ…
「[岩砲弾]
地面が大きく抉れ、巨大な岩石がダボルの頭上に浮き上がる
「考える暇ないやないか…!!」
「壁、盾、守!!」
ガァンッッッッッ!!!
(重ッ…!)
パキィンッッ!!
「砕かれーーーーーー」
ゴキンッッ
「がッッ」
ミシミシミシミシッ
「あがぁああああああああ!!!」
岩石によって地面に挟まれる響
圧倒的な圧力によって全身の骨が悲鳴を上げる
「…」
グンッ
「かっっーーーーーーー」
ゴキンッ
「がぁあああああああああああああああああ!!!!!」
「折れた、か」
「がっ…!あっ…!!」
息が出来ん
アバラが折れて肺に突き刺さった
「ゲホッッッ!!!」
響の口から血が吐き出される
土の上に落ちた血はびちゃびちゃと音を立てて広がっていく
「…勝負は付いたか?」
「まだ…、がっっ!!」
「無理はしない事だな」
「…消」
「無駄な足掻きだな」
「体…、骨」
くしゃっ
無理矢理、響は護符を口の中へと詰め込む
「げぁっ…!!」
ゴクンッッ
「札を飲んだ…!?」
ぼこんっ
「…っかぁあ!!!」
「死ぬかと思ぅたで」
「馬鹿な…!!」
「回復したと言うのか!?」
「…違うなぁ」
「消したんや、骨を」
服をめくる響
その下には大きく凹んだ腹部
「アバラの骨を!?」
「勝つためならな、骨や惜しいないねん」
「仇討ちも楽やないで?」
「面白い奴だ…!」
「骨が刺さったのなら、治すのでは無く!」
「消すとはな…!!」
「見解の違いやろ?」
「ワイに必要なんは結果」
「勝利、それだけや」
「…[鬼]が」
-------待てぇや?
今、ワイなんて言うた?
「見解の違いやろ?」
そうや、見解の違いや
考えろ
何が引っかかとった?
もし、アイツの能力が
攻撃でも無く
防御でも無い
[何か]なら-----------?
「…雷、弾、貫!!!」
宙に停空する三枚の護符
「撃ッッ!!」
「[反盾]!!!」
キィンッッ!!
先刻と同じく、軽々しく響の雷弾は弾かれてしまう
弾かれた雷弾は響へと直線的に跳ね返っていく
「解除」
パチンッ
(この男…!!)
「雷、弾、貫」
「[反]ーーー!?」
護符は直線上ではなく、ダボルを取り囲むかのように浮遊している
「撃ッ!!」
(気付いたのか!!!)
ドンッッ
ダボルは防ぐのではなく
[避けた]
「…解ったで」
「お前の能力!!」
「貴様…!!」
「[斥力]…!」
「それがお前の能力や!!!」
読んでいただきありがとうございました