謎の男
「何…で…?」
「…」
「もしかして、誰かに人質に!?」
「早く逃げた方が!!」
ヒュンッ
カァ--…ン
蒼空の頬をかすめ弾丸が柱へと向かう
「…蒼空 波斗」
「私は貴方を殺さなきゃならない…」
「委員長…」
「折れた腕、嘘だったのね」
「すっかり騙されちゃった」
「コレは先刻…!」
「もう…、喋らないで」
「喋っちゃ駄目…」
「委員長…」
「貴方は…、矢毘詩さんを殺した」
「違う!俺じゃない!!」
「違わない!!」
「貴方は矢毘詩さんを殺して、その仇として私に殺されるの…」
「そうでしょ…?」
「その人を殺したのは俺じゃない!!」
「委員長は気絶してあの場にいたけど!!」
「俺じゃないんだ!!」
…待てよ?
あの場にいたのは俺と矢毘詩とか言う人
それと気絶した委員長と暴走した生徒
矢毘詩と暴走した生徒を殺せたのは
「…委員長?」
「…」
「まさか、委員長が…!!」
「見たくなかったの…」
「友達が死ぬ所なんて…」
「だから…」
「2人を殺した…」
「…五眼衆の皆には貴方が殺した事にしてるわ」
「それで間違いはない」
「結果がそれ…」
「…貴方がここに来なければ」
「殺さずに済んだのに…」
「委員長…!!」
「ゴメン、蒼空 波斗」
波斗に銃口が向けられる
「貴方を…」
ガシャァアアアアアアアアン!!
突如響いた轟音
2人の視線がガラスに向く
「レッ…トラ?」
ガラスに張り付いていたのは血にまみれた男
原型こそ殆ど留めていないが、慈愛のレットラと名乗った男の様だ
「く…!がぁ…!!」
「レットラ!!」
ガラス越しに叫ぶ森草
「逃げ…ろ!!」
その瞬間
レットラの後ろに
あの男の影
「飛んでる…?」
「いや…!空を…!!」
歩いている
さも当然の様に
一歩一歩を踏み出し
ガラスにめり込んだレットラに向かい手を突き出す
「生命の拒絶」
パンッ
小さな破裂音がしたかと思うと
レットラという男は息絶えていた
「レットラ!!」
「お前が結界を張っていたのか」
「蒼空、何をしている」
「殺せ」
「…!!」
「レットラ!レットラ!!」
「お前が殺さないのなら俺が殺す」
ズルッ
男がガラスに手を当てる
ガラスは割れるワケでも外れるワケでもなく
その場から消えた
ただ単に消えた
「一瞬だ」
「すぐ済むだろう」
ガラスに張り付き息絶えているレットラに向かって叫ぶ森草に男の手が伸びる
「ひっ…」
「…ほう」
「何のつもりだ、蒼空」
男の手の先に
森草の前に蒼空が立ちはだかる
「…やめろ」
「それは五眼衆の1人だ」
「選択の森草…、幹部だ」
「殺せ」
「やめろ!!」
「…どうする?」
「殺させない…!!」
「ならば貴様が殺すか?」
「…殺さない」
「では、どうする?」
「見逃して貰う」
「…ハッハッハッハ」
「面白いな、本当に」
「見逃せるはずがないだろう」
「…なら、俺を殺してからにしてみろ」
「委員長は殺させない!!」
「…そうか」
ガシッ
男が蒼空の頭を掴む
「生命の拒絶」
「…?」
「何をした?」
「な…」
男がゆっくりと蒼空から離れる
「…馬鹿な」
「このっ…!!」
バチィイン!!
「ぐっ!!」
「え!?」
地面が渦巻き男を捕らえる
(血…、出てないよな!?)
「拒絶!!」
バシィッ!
岩が消える
「おらぁっっっ!!」
ゴキンッ
「…痛覚の拒絶」
パシンッ
蒼空の渾身の一撃に一切ひるむ事なく男は反撃してくる
「筋力の拒絶」
「…?」
「…やはり、か」
蒼空から距離を取る男
「効かないな」
「え…?」
「空圧の拒絶」
シュゥウウウウ!!
凄まじい空音
「な…!!」
波斗が男の元へ吸い寄せられていく
「真空状態の場には空気が吸い寄せられる」
「お前ごと、な」
「このっ…!!」
ゴッ!!
「ぁっ…!!」
波斗の腹部に重い一撃
「どうした」
「その程度か」
波斗の膝が落ち、地に手を着く
バチィイン!!
「ッ!!」
「!!」
男の顎を地面が跳ね上げる
否、正確には波斗の能力で凹凸化した地面が跳ね上げる
「っっらぁあああ!!」
ここぞとばかりに蒼空が男を蹴り上げる
「がッ!!」
そして完全にノ-ガ-ドとなった腹部に狙いを定め、一撃を放つ
ゴキンッッ!!
「カハッ…!!!」
ドタァアン!!
「はぁ…!はぁ…!!」
「…」
ゆらりと立ち上がる男
「…面白い」
「面白いぞ!蒼空ァアアアアアア!!」
「法則の拒絶!!」
メキメキメキ…
空中から現れる2本の刃
「空圧の拒絶!!」
男の眼はタガが外れたかの様に血走っている
「刀!?」
「ッハ!!」
音もなく波斗を襲う斬撃
「危っ…!!」
「空気抵抗を一切無くした真空の刃だ!!」
「何処まで避けきれる!?」
男の斬撃を紙一重で避ける波斗
(このままじゃ…!!)
「委員長!銃!貸して!!」
「え?」
「早く!!」
「は、はい!!」
ゴロゴロと転がりながら銃を構える波斗
「そんな体勢で撃った銃が当たると思っているか!!」
「どうかな!」
ドンッ!
全く見当違いの方向に飛んでいく銃弾
「無駄な事を!!」
キィンッ!!
男の刀が弾け飛ぶ
「な…!!」
次に男の眼に映ったのは靴
メギッ
「あがっ-----!!」
ドォオオン!!
吹き飛ばされる男
「真空なら空気が吸い寄せられるんだろ?」
「それに斬撃に空音が無いのは刃の周りが真空だからだ」
「俺が吸い寄せられたんなら…、銃弾もそうじゃないかと思ってな」
「…殺さまい、と」
「手加減したが…、腕の1本や2本は良いか」
「重力の拒絶」
男が掌を合わせる
その間から出てくる黒球
「重力が反発し合い、生み出すエネルギ-弾」
「何もかもを圧砕しうる物」
「ブラックホ-ルだ」
「当たればただでは済まんぞ」
「当たれば、だろ?」
「お前は大したスピ-ドじゃないし、当たらねぇよ」
「空圧の拒絶」
一瞬、波斗の視界から男が消える
気が付けば目の前には黒球
(空気抵抗をなくして…!!)
「当たるんだよ」
「こういう風にな」
読んでいただきありがとうございました




