響の頼み
応接室
「ソルナが勝利したそうだ」
「…ほか」
机の上に置かれた2杯の珈琲
「さて…、用件を聞こうか」
「すまんのぅ、こんな夜遅ぅに呼び出して」
「…この人、知っとるか?」
懐から写真を取り出す響
そこには若かりし頃の響と2人の男女
「…中心に居るのは貴様だな」
「左右の2人は?」
「フロラ・ジャスミンとキース・ジャスミン」
「先代と先々代の[守護者]か…」
「あぁ、そうや」
「ワイの師匠でも在んねん」
「貴様の?」
「…ワイが[鬼]言われとった後の事や」
「昕霧に拾われて、ロンドンに連れて来られてな」
「ほんで、あの人達と会ったねん」
「…貴様の護符術は、彼等から?」
「いや、コレは元からや」
「あの人達には戦場での基礎を教わった」
「根性を教わった」
「絆を教わった」
「信念を教わった」
「…今のワイが在るんは、あの人達のお陰や」
「恩人…、か」
「そうや」
「…だが、フロラ・ジャスミンは[守護神]を引退」
「キース・ジャスミンは…」
「…」
「…失言だったな」
「気にしぃなや」
「あの人は強い」
「ホンマに強かった」
「…ほなけど[破壊屋]には負けたねん」
「…要するに」
「貴様が[破壊屋]に負けたら」
「俺が代わりに戦ってくれ、とでも?」
「ほう言うと思うか?」
「…だろうな」
雨雲は珈琲の容器に手を掛ける
「[人形師]」
小さく雨雲の手が震える
「…解るな?」
「冷静温厚なお前が、あんだけ頑なに討伐したがった奴や」
「因縁が有るんやろ」
「…因縁と言うほどではない」
「だが、奴直々に指名が有ったのでな」
「…ほうか」
「んでな、頼み言うんは」
「あの人の…、キースさんの死体を取り返して欲しいんや」
「…キース・ジャスミンの?」
「死体というのは…」
「[人形師]は人間の死体を操るねん」
「雑兵なら体の中身を抜いて、より高性能に」
「それ相応の強さ持っとんなら、そのまま使う」
「ほんな具合やな」
「…ヤケに詳しいな?」
「裏筋の情報や」
「秘密やで?秘密」
「…細部までは聞かずとしよう」
「助かるわ」
珈琲を一気に飲む響
容器を机に置き、立ち上がる
雨雲も同じように珈琲を啜る
「…頼むで」
「あの人の体…、埋葬したりたいねん」
「解った」
「予め、言っておくが…」
「解っとる!」
「…頭だけでも上等じゃけぇのう」
「…うむ」
ガチャッ
「…雨雲」
「?」
「何を抱え込んどるかは知らん」
「ほなけどな、言うといたる」
「お前、恨みで動きぃなや」
「昔のワイみたいになるで」
「…肝に命じておこう」
バタンッ
「…恨み、か」
恨みではない
人形師
俺は知りたいだけだ
貴様が[卯琉]の名を知っている理由を
それだけだ
それ以外に
「…用は、無い」
機械室
カチャカチャカチャ…
「…クロちゃん」
「く、クロルです!」
「そこのスパナ取ってください」
「は、はい!」
油塗れになりながら、バイクを弄るゼイル
クロルはゼイルのバイク弄りを補助している
「作業は順調かいなー?」
煙草を吸いながら作業場へと入ってくる響
「…来やがりましたか」
「順調ですよ、吐き気がするぐらい」
「ほりゃ、何より」
「…で、どうや?」
「…こっちは終わりましたよ」
ゼイルは懐から透明のケースを取り出す
「テメェの言う通りに弄ってみました」
「…本当に試しやがる気ですか?」
「勿論や」
「能力は密接な関係で成り立ってます」
「それを素人が…」
「いけるて!」
「ワイはコレと腐れ縁出来る程、付き合っとるねんで?」
「…テメェが、そこまで言うなら知った事じゃありません」
「あ、あの…」
「ん?」
「どしたんや?クロル」
「け、ケンカですか…?」
「だっはっはっは!ちゃうちゃう!!」
「コイツとはケンカせぇへんで!!」
「私もですよ」
「こんな腐れ野郎とはケンカしません」
「で、でも…」
「…」
ゼイルの体が震える
「…ヤバいな」
「クロル、向こうに」
「え、え…?」
ぎゅっ
「ひゃぁっ!?」
「可愛いですね」
「今晩の予定は…、開いてますか?」
「ぜ、ぜ、ぜ、ゼイルさん!?」
「あちゃー、スイッチ入ってしもうたか」
「小ぶりな足…」
「すべすべな肌…」
「…食べちゃいたいです♥」
「だ、駄目ですっ!」
「そんな事、言わずにぃ…♥」
ゼイルの腕が、ゆっくりゆっくりクロルの服の中に入っていく
「ひ、ひゃうぅっ…!」
「だ、駄目ですよぅ…」
「その割には抵抗しませんね…?」
「た、助けてくださいっ!響さん!」
「えー」
「眼福…」
「お、お願いですぅっ!!」
「しゃぁないのう」
「ほれ!やめんか!!」
「邪魔しやがるなよ、ぶっ殺すぞ」
「お前なぁ」
「ぜ、ゼイルさんは女性じゃないですかぁ!!」
「じょ、女性同士で、こんな…!」
「…大丈夫♥」
「私は[女性]だけど」
「貴女は[女の子]だから♥」
「…諦めぇや」
「に、にゃああああああああああああああああ!!!」
翌日
仮眠室
「…むっ」
目を覚ます波斗
「よく寝た…」
ぷにっ
右手に柔らかい感触
「…」
波斗の掌に収まっていたのは
「ん…♥」
ベルアの胸
「!?!?!!??」
「眠る美女」
「手を出す者に」
「お仕置きを♪」
左に殺気
波斗の目に映ったのは
鬼神
「お、お、お、織鶴様…」
「ちょーっと目を離したらコレ?」
「良い度胸してるわね♪」
「覚悟は…」
ゴキッゴキッ
「良いかしら?」
「グッバイ、my人生」
読んでいただきありがとうございました