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秋鋼  作者: MTL2
185/600

ジャック・ザ・リッパー

「[切り裂き]?」

「ジャック・ザ・リッパーか?」


「うん、そう」


「…コイツが?」

「今先刻、ミロ・ルーズリアと聞こえたのは俺の聞き間違いか?」


「…話せば長いのですが」


「構わんよ」


「…彼女は確かにジャック・ザ・リッパーです」

「尤も、過去に噂されたそれではありません」


「ふむ」

「血縁者、だな?」


「…はい」


「そこで問題が生まれたんだよ」


「問題?」


「呪われた体」

「もう1人の魂」


「…つまりは?」


「夜だ」

「不定期ではあるが、夜」

「この子は豹変する」


「2重人格か?」


「いや、違うな」

「体そのものが変わるんだ」


「…体が?」


「あぁ」


「身体強化の能力か」


「いや、違うな」

「[そのもの]なんだ」


「…特異体質か」


「そんな所だろうな」

「俺達ですら、よく解らない」


「ふーん」

「…で、だ」

「どうして軍を潰す?」


「「!」」


「それを聞いておきたい」


「…理由次第では貴方の行動は変わりますか?」


「いや、全く」


「…解りました」

「私は…、初めは軍に入ろうと思っていたのです」

「ですが、どうしても軍の意向に賛同できなかった」


「軍の意向?」


「裏切り者は皆殺し、という部分です」

「能力犯罪者も同じく…」


「確かに穏便じゃない」

「だが、それは表に生きる一般人の為だ」

「能力という凶悪な物を裏で封じ込める」

「そこまでしなければならない程、危険だからな」

「…と、言うのが軍の言い分だが?」


「確かにそうかも知れません!」

「能力は危険です!」

「でも、それ以上に有効利用できるはずです!!」

「人の傷を治療したり、災害時の救助などにも役立てます!!」

「能力を表に出して、もっと有効活用すべきだと私は思います!」


「うん、確かにそうだ」

「だが、甘い」


「え…?」


「軍の重過ぎるとも言える圧力」

「異常と言えば異常だ」

「だが、それ故に能力という[異端]を封じ込めている」


「ですが…!」


「例え話をしようか」

「お前等も答えろ」


「うん」


「へいへい」


「お前等は100人の村人が住む村に101人目として派遣された」

「そこでは50人が武器を持ち、50人が武器を持たない村だ」

「お前等は武器を持つ51人目として派遣された」

「では、質問だ」


口に煙草を咥えるバムト

両手の指を広げ、前へ突き出す


「今から50人殺せ」

「然もなくば、お前等を殺す」

「さぁ、武器を持つ村人か持たない村人か」

「どちらを殺す?」


「そ、それは…」


「武器を持たない村人」


「正解だ、ミロ」


「えへへ」


「そちらの方が速いし、何より的確だ」

「俺達はそれなんだよ」


「…?」


「武器を持った村人だ」

「目の前には無力な獲物」

「引き金を引けば終了」

「剣を振り下ろせば終了」

「簡単なゲームだ」


「人の命はゲームの材料ではありません!!」


「…ヘルン」

「お前の能力は治療系だな?」


「えっ…?」

「どうして…」


「そんな綺麗事は戦場に立つ人間は言えない」

「言えるのは後衛的な役割を持つ者か、経験の浅い者だ」


「…っ」


「ダボル、お前はどう思う」


「そもそも、答えが違う」

「俺は武器を持つ50人を殺す」


「…何故だ?」


「楽しみたいからだ」

「命のやりとりを」


「…面白い奴だな」


「序でに言っておくぜ」

「俺が軍に属さない理由はな」

「強者に会う為だ」


「強者?」


「Noの連中」

「織鶴、雨雲、響、ロ・クォン」

「シーサー、西締…」

「他にも数え得ないほどの強者」

「俺は奴等と戦いたい」


「どうして、だ?」


「ハッ!理由?」

「お前は飯を食うのに理由が要るのか?」

「お前は息をするのに理由が要るのか?」

「お前は女を抱くのに理由が要るのか?」

「それと同じだ」

「理由なんざ、ねぇ」

「俺がしたいから、そうする」

「強いて言うなら、それが理由だ」


「…嫌いじゃないぜ」


「男に好かれる趣味はねぇよ」


「心配するな、俺もない」


「で?で?」


ぐいぐいとバムトの服を引っ張るミロ


「おう、興味津々か」


「うん」


「で、お前はいつまで俺の膝の上に居る」


「ずっと」


「…そうか」


「私はね」

「武器を持たない奴が殺しやすいと思う」

「でもね、一番良いのはね」

「命令した奴」


「…ん?」


「そいつ等を殺せ、って命令した奴」

「そしたらね、そいつ1人しか殺さなくて良いでしょ?」


「…あ、あぁ、そうだな」


「私が正解?」


「コレはあくまでも例題だ」

「正解はないぞ」


「えー!」


(…幼いな)


「…バムトさん、ちょっと」


「ん?おぅ」


「ダボル、ミロを見ていてください」


「あぁ、任せろ」



岩陰


「…何だ」


「感じましたか?」


「あぁ、よく解った」

「あの子は[切り裂き]じゃない」

「そうだろう?」


「…はい」

「正しくは彼女の裏の人格…」

「つまりは歴史に名を刻んだ男が[切り裂き]なのです」


「歴史上の人物が生きている、と?」


「…彼女の中に」


「どういう事だ?」

「いや、その前に聞くべきか」

「どうして隠した?」


「っ…」


「それを聞かずに、この話を聞くわけにはいかないだろう?」


「…一時的な共闘の関係ですから」

「情報を…、漏らしたくは…」


「…ふむ」

「そうか」


「ごめん…、なさい」


「いや、気にするな」

「お前の言ってる事は正しい」

「それに俺も情報を漏らすような真似はしない」


「…」


「で、どうして話す」


「…これ異常、隠すのは不可能だからです」

「下手に隠せば、貴方からの信用すら失いかねないと…」


「…あぁ、その通りだ」

「良い判断だな」


「…ありがとうございます」


「で?ミロは何だ」


「…リッパーの一族には仕来りが有るそうでして」

「彼女の名にリッパーが無いのは、彼女が名を捨てたからです」


「名を捨てた?」


「彼女自身は優しい…、良い子です」

「私も妹的な存在として見ています」


「確かに姉妹の様だったぞ」

「仲が良いんだな」


「はい…」

「…でも、彼女の中に居るジャックは別です」

「アレは人じゃない!」


「…そもそも、どうしてジャックが居るんだ」


「…仕来りです」

「彼女の一族は代々、殺人の一族」

「その中で最も優秀とされたジャック・ザ・リッパーを子に残す」


「残す?」


「降霊術、とでも言うべきでしょうか」


「そんなモンを現実的に行うのか…」


「公にはなっていませんが、ジャック・ザ・リッパーは黒魔術も行っていたそうなんです」

「それが続いて、今に至ります」


「…ふむ」

「ミロは一族からジャック・ザ・リッパーを体内に宿された」

「だが、ミロ自身にはジャックは影響していない」


「はい」

「彼女自身の性格や身体には影響していません」

「ただ、不定期に夜はジャックになります」


「…どうして、それを隠す?」

「別に…」


「…ジャック・ザ・リッパー」

「彼はハデスの主戦力とも呼べる人物です」

「ですから、彼を失いたくはない」


「…ミロの時を狙われるからか」


「…はい」


「…そうか」

「話してくれてありがとう」


「えっ?」


「…何だ?」


「い、いえ!」

「急に畏まられると何だか…」


「俺だって人間だぞ?」

「急に畏まりもするさ!」


大声で笑うバムト

ヘルンはそれに合わせて背を縮める


「…他の奴等にも挨拶はしておきたいな」

「何処に?」


「今は別で動いてます」

「そろそろ戻るかと」


「うん、そうか」

「じゃぁ、最後に」


「はい、何でしょうか」


「人形師」

「奴を殺して良いか?」


「…え?」



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