大西洋の小島
ロンドン支部
支部長執務室
「…はい?」
「…言った通りだ」
「[闇紋]のバムトと戦え、と?」
「補助で構わない」
「何このデジャヴ」
「No,2の時もそうでしたよ!?」
「あの時は全くの役立たずでしたし!!」
「殺すぞ」
「昕霧さんじゃねぇえええええええ!!!」
「でも、生きてるじゃない」
「奇跡ですよ!」
「それに、ゼロさんが居たから…」
「俺は賛同できない」
「幾ら何でもバムトと蒼空を戦わせるには危険すぎる」
「…その少年は強いのか、弱いのか」
「…誰?」
「ほうか、紹介しとらんかったな」
「コイツはソルナ・キューブ言うねん」
「ソルナさん」
「現支部長直属部下[守護神]のソルナ・キューブだ」
「は、はい…」
(堅そうな人だな…)
「強くて弱いわ」
「…解るように言ってくれ」
「No,1に勝利し」
「他の奴等にはボッコボコよ」
「…少し、時間をくれないか」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…解らない」
「でしょうね」
「私も解らないもの」
「俺自身も解ってないです…」
「…No,1を倒したのは事実か」
「ま、まぁ」
「ハッキリした記憶はないですが」
「…珍しい事じゃない」
「戦闘時に極度の興奮状態や気絶した場合は記憶を損失する事もある」
「際ですか…」
「確かにNo,1に勝ったと言う事実は有るようだ」
「だが…、どうして軍の人間と軍の人間が戦った?」
「あ」
「…」
「…」
「…おい」
「いや、いや、いや!!!」
「そのですね、アレですね」
「コレが、その」
「手違いよ」
「五眼衆事件の時、波斗はNo,1を五眼衆側の人間だと勘違いした」
「そうでしょ?」
「は、はい!」
「…そうか」
「そう言えば、なんやが」
「何でハデスは五眼衆事件の時、ロンドンで行動を起こさなかったんや?」
「それは私も疑問に持ってたぜ」
「軍を潰すのが目的ならば五眼衆と手を組んだ方が…」
「…それについては[食人]が話していた」
「アイツが供述とかしたのかよ…」
「…その事なんだが」
「昕霧は席を外してくれないか…」
「あ?何でだよ」
「いや…」
「支部長」
「いつかは解る事です」
「…むぅ」
「良いから教えろよ」
「…あの時はNo,3が参加していただろう」
「あぁ、そうだな」
「No,3と戦うのは得策ではない、と…」
「…おい、待てよ」
「私は?」
「…No,4は恐れるに足りない」
「所詮は名ばかりの雑魚だ、と」
ォオオオーーーー…ン
「!?」
咄嗟に耳を押さえる波斗
何だ!?
この音は!!
頭が中から割れるような激痛
嘔吐感すら覚える
「能力発動してんじゃないわよ」
「…」
鬼のような形相のまま、制止する昕霧
毛先すら動かさず、静かに表情を怒らせてる
「…落ち着け、昕霧」
雨雲は昕霧の手を握る
「気にする事はない」
「お前は奴を倒し、その言葉を撤回させたも同じだ」
「お前は弱くない」
「それは俺達が、よく知っている」
「伊達に軍最強能力者集団のNo,4でもないでしょうが」
「貴女の実力は私も目にした」
「否定など出来るはずが無い」
「俺もだ」
「支部長名義で宣言してやる」
「そ、そうですよ!」
「Noの人達の強さは俺も、よぉーく知ってます!!」
「ワイもアンタの強さ知っとるで」
「ほなから下に着いたねん」
「茶柱さんがアレだからね…」
「直に見た事は無いけど…、解るよ」
「…皆が言っている」
「お前はNo,4として自信を持って良いんだ」
「ありがとう…、ございます」
「ありがとうございます…!雨雲さん…!」
「「「「俺等は?」」」」
「予想通りね」
「そうだな」
大西洋
小島
「ほー、島まで持ってるのか」
「私の物です」
「小さな島でしょう?」
「いや、[島]を持ってる時点で凄いだろう…」
「…なんて事はありません」
「所詮は親の資金です」
「…コロネア?」
「あぁ、あのIT企業の大会社か」
「はい」
「確か、一人娘が行方不明って何年か前にニュースで…」
「それが私です」
「ご存じだったんですね」
「糞狭い牢獄じゃ、新聞とかの外の情報が楽しみだったからな」
「一番楽しみだったのは日本の新聞だ」
「お陰で日本語が、こんなに流暢になっちまった」
「だが、この様子だと行方不明と言うよりも家出か?」
「…っ」
「言いたくないなら、言わなくても良い」
「…どうして日本の新聞が?」
「面白いじゃないか」
「政治面では毎日毎日、同じような事ばかり」
「だが、反面しておめでたい事も載ってる」
「あと、一番の楽しみは4コマ漫画だ」
「…は、はぁ」
「中々、傑作でなぁ!」
「日本の漫画は好かねぇよ」
岩に座る1人の大男
茶黒いドレッドヘアー
黒いサングラス
口に加えた煙草
体の至る所に傷があり、右肩には大きな切り傷がある
「…コイツは?」
「[破壊屋]のダボル・ベートガンです」
「ダボル、ね」
「アンタが[闇紋]か?」
「あぁ、そうだ」
「名はバムト・ボルデクスだが…」
「…何だよ」
「煙草、くれ」
「アンタも吸うのか」
「大好物だ」
「…体壊すぞ」
「お前に言われたかねぇな」
ダボルから煙草を受け取るバムト
カチッ
「ぷはぁーー…」
「…うん、美味いねぇ」
「今までは牢獄に居たんだろう?」
「ん、まぁな」
「月1で見張りがくれたんだが…、安モンだったんでな」
「中々、良い煙草だ」
「俺のお気に入りでな」
「…っと、無駄話してる時間はねぇ」
「ヘルン、来てくれ」
「何です?」
「ワースが死んだ」
「No,4に殺られたらしい」
「ワースが、ですか…」
「残念です…」
「想定内ではあったが、な」
「奴を引き入れられたのか?」
「流石に仲間とまでは」
「…一時的な協力関係か」
「はい」
「祭峰側とは?」
「駄目だった」
「モルバの野郎、門前払い同様の扱いを受けたそうだ」
「…そう」
「おーい、何をコソコソ話してるんだ?」
「失礼しました」
「こちらの内分事情です」
「ふむ…」
「で、だ」
ちょこん
「俺の膝に座ってる、この餓鬼は何だ?」
「「あ!!」」
「お腹すいた」
バムトの膝の上に小さく丸まっている少女
白いセミロング
丸々とした青い目
真っ白なワンピース
「アイツ等に何か貰え」
「嫌だ!」
「誰も遊んでくれないもーん!」
「…腹が減ってたんじゃないのか」
「減ってるなう」
「なう、って?」
「知らない」
「知らねぇのかよ」
「ミローーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!」
「うぉっ!?」
「ヘルン、うるさい」
「その方はバムト!」
「私達を助けてくれる方ですよ!?」
「へぇ」
「ごめんなさい!バムトさん!!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「い、いや、そこまで謝るなよ…」
「この子は何だ?」
「ミロ・ルーズリア」
「私達の仲間です」
「…2つ名を持つ6人の内の1人だな?」
「何の2つ名だ」
「…」
「…」
気まずそうに視線を逸らすヘルンとダボル
「いや…」
「…」
「[切り裂き]」
「ん?」
「私は[切り裂き]」
「切り裂きジャック」
読んでいただきありがとうございました