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秋鋼  作者: MTL2
181/600

敷地庭

「あー…」


やっちゃった

[盲目]に抑えるように言われてたのに


ジュゥウウウウウ…


「死んだかな?」


壁に開いた巨大な穴隙

ワースは口端に付いた血を拭い取る


(ボクの血じゃない)


ボクの[巨食スタイート]は食べた物を実感できない

[食]よりも威力は大きいけど、それが難点


「…どうしよう」



防銛の異常状態

それを察し、ワースは[巨食]を放った

何故か、と聞かれれば「直感」と答えるしかない


背筋を走った寒気

危険信号を出した脳

自然に動いた体


あの子の目は狂気を含んでいた

とても少女の目とは思えない

化け物か悪魔の目だ


「…」


だけど、もう殺した


ガシャァンッ


「きひっ!きひひひ!!」

「殺ッッすっ…!!」


…と思ったのに


防銛の腹部が抉れ、血が出ている


「間一髪で直撃は避けたみたい」

「でも、食う」


「殺っす!!」

「殺すぅ!!」


「…[巨食]」


バクンッッッッ!!


「きゃひひひひひ!!」


(見切られてる…)


ワースは燃穴場に挟まれて動けない

それに対し、防銛はワースの攻撃を自由に避けられる


「不利」


圧倒的なまでに

子供の小賢しい策にハメられた

迂闊だった


「でも関係ない」


どうしてか?


簡単な話


もうお腹いっぱい


だから


食べなくて良い



ドンッ


「ーーーーー?」


防銛の片目に直撃する火弾


「ぐぎゃぁああああああああああああ!!!!」


「自分の能力をくらった気分どう?」


「あっあっぁあああ!!」


「熱いよね」

「苦しいよね」

「でも」

「美味しいよね?」


「いっぎぃ…!!」

「糞がぁああああああ!!!」


ボゴォンッ!!


「危ないなぁ」


ワースの不意を突いた一撃も軽く避けられてしまう


「はっ!はっ!はっ!!」


ボンッ


「こうやって少しだけ能力を発動」

「そうすれば跳躍力も強化」


カンッ


防銛の目の前に降り立つワース

彼女の小さな頭を鷲掴みにし、ゆっくりと口を開く


「レア?ミデュアム?ウェルダン?」

「どれでも美味しいと思う」


「ふざけるな…!!」

「私の能力を…!勝手に!!」


「でもね」

「生でも食べられる」


ブチブチブチブチ…


ワースの両頬の糸が千切れ、巨大な口が露わになっていく


「いただきます」


「くっ…!!」


[音槍スプラク]」


バゴンッ!!!!


「…!」


「ケッ、雑魚じゃねーか」

「テメーも、[食人]も」


「No,4…」

「…邪魔する?」


「邪魔はしねーぜ」

「だがな、テメーの[食事]を見逃すと後々面倒なんだよ」

「コレでも日本の警察庁総監だぜ?」


「…」


得策じゃない

相手は階段の上に居る

逃げ場が無い


[音槍]だっけ

アレは厄介

先刻は威嚇射撃だったけど

直撃すれば…


…腕1本じゃ済まない


「おい、テメー」


「…何?」

「ボクにはワースって名前ある」


「じゃー、ワース」

「その糞ガキを解放しやがれ」


「食べたい」


「テメーも餓鬼か?」


ドンッ


防銛はワースによって突き飛ばされる


「…解放した」


「じゃー、死ね」


「言うと思った」


「[音槍]」


ばくんっ


「げぷぅっ…」


「…チッ」

「やっぱり食いやがる」

「監視カメラから見えたのは見間違いじゃねーみてーだな」


「この子を見殺しにしてた?」


「死んでねーから良いだろ」

「敵の情報を集めるのは基本だろうがよ?」


「確かに」


くいくいっ


「…何だよ、死に損ない」


「…」


ボソボソと何かを呟く防銛

昕霧はそれに耳を傾けている


「…フン」

「死に損ないは死に損ないなりに役に立つじゃねーか」


「…っ」


「はいはい、寝てろ」

[子守歌スリーピア]」


「…!…っ」

「……」


「…寝た?」


「寝かせた」

「で?テメーはどうするよ」


「…うーん」

「美味しそうだね」


「食わせねーっつてんだろ」


「違う」

「お前」


「…私か?」


「そう」


「良い目してるじゃねーか」

「こんな青尻のガキなんかより、よっぽど美味いぜ?」


「…食べて良い?」


「駄目に決まってんだろうが」


「…残念」

「上」


「上で戦おうぜ、ってか?」


「空が見えた方がご飯も美味しい」


「…上等だ」

「今日は絶好の歌唱日和だからな」


カンカンカンカン…


防銛を無視し、階段を上っていく2人



1階


ざわざわ…


「…うるさい」


「テメーが脱獄してるからだろ」


脱獄囚と歩くのNo,4

必然的に視線を集める


「妙な行動、起こすんじゃねーぞ」


「解ってる」

「早く食べたい」


「待てよ」


「待ってる」

「と言うより動けない」


「…はぁ?」


「結界が張られてる」

「誰かに見られてる」


(…ソルナの野郎か)

「この先に広い敷地が有る」

「芝生の生い茂った庭だ」


「そこで食べて良い?」


「勝てたらな」



敷地庭


「綺麗」


「ウェスタが精魂込めて育てたらしいぜ」

「存分に食え」


「…草は食べない」


「そうなのか?」

「豚は何でも食うんだろ?」


「…豚じゃない」


「見た目は豚だがな」


笑いを抑える昕霧

反するようにワースの表情は曇る


「で?豚は何を食うんだったか」


「お前」

「それと豚じゃない」


「豚だろー?」

「豚、豚、豚、豚、豚、豚」

「豚」


「…もう良い」

「話しても無駄」


「あー、無駄だろうな」

「豚は言葉を話せねー」


「…」


「怒ったかよ?」


「食う」

「毛すら残さず」

「食う」


「豚は毛まで食うのか」


ブチッ


「食われてぇのかよぉおおおおおおおお!糞女ァアアアアアア!!」


「タガが外れたなー♪」


巨大な口を限界まで広げ、ワースは咆吼する


「食ってやるッッッッッッッッ!!!」


「やってみろ」



読んでいただきありがとうございました

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