敵取りの頼み
ベルアの家
1階
「…夫、か」
「あの人を殺したヤツが解ったんやな?」
「えぇ、そうなの」
「前「守護神」のあの人が負けるほどの手練れよ~?」
「任せても…」
「愚問や」
「アンタ等には育てて貰ろぉた恩が有るねん」
「何でも任せぇや」
「…そう」
「ほなけど、アンタは?」
「元とは言え[守護神]やろ?」
「私は、もうオバサンだからね~♪」
「相手にすらならないと思うわ~」
「…ほうか」
「で、誰やねん」
「元[守護神]のアンタが相手にならん」
「前[守護神]の旦那さんが負けた相手ってのは」
「[破壊屋]ドルフ・スタンダウィ」
「元、傭兵よ~」
「…何で名前を知っとんかいな?」
「軍の資料にゃ…」
「独自に調べたの~」
「軍には言えない方法でね~♪」
「さ、流石やな…」
「…いや、そこまでせなアカン相手なんやな」
「そうよ~」
「…お願いできるかしら?」
「任せぇや」
「…と言うより」
「やらせぇや」
「…流石ねぇ~」
「私と彼が認めただけは有るわ~♪」
「…ほな、もう1つ」
「墓参り…、させてくれんかいな」
「…駄目なのよ~」
「お墓…、無いから」
「はぁ?」
「体が無いのよね~…」
「…体が無い?」
「何でや?」
響は机に出された茶を飲もうと持つ
「…人形師に盗られたのよね」
ピシッ
「人形師…?」
「恐らく人形にされちゃったわね~…」
「…ほうか」
「死体も取り返して来たる」
「頼れるわ~♪」
「でも、コップは割らないでね~?」
「…こりゃ、すまん」
ドタドタドタドタッッッ!!
「…何の音や」
「上か?」
「騒がしいわね~」
「青春かしら♪」
「青春ってなぁ…」
2階
「…ははっ」
「ちがっ!違うんですぅうううううううう!!!」
「いや…、ははっ」
「…はっ」
「嫌ぁああああああああああああああ!!!」
遡る事、数十分前
空き部屋
「…何と言うか」
「古風と言うかですね」
「ご、ごめんなさいです!」
「暫く掃除してなかった物ですから…」
「あ、あぁ!そうでしたか」
「こ、ここに座ってくださいです」
「は、はい」
「…」
「…」
「…リンデルに会ったんですよね!」
「あ、会いましたよ」
「一斑と仲良くやってるみたいです」
「良かったです」
「人見知りをする子ですから」
「あははは、俺も始めは避けられてましたよ」
「別れ際は口きいてくれましたけど」
「蒼空君に懐いたんですか!」
「やっぱり私と似てるです♪」
「…似てる?」
「かかかかっか!顔がですよ!!」
「あぁ、なるほど」
「お母さんとも似てますね」
「容姿は母譲りですか?」
「はい!」
「そう言えば、お父さんはお仕事に?」
「…父は」
「死にましたです」
(しまっ…)
「…すいません」
「い、いえ!気にしないでくださいです!!」
「リンデルが生まれる前でしたですし、実感が沸かないって言うか…」
「何て言うか…」
(マズっちまったなぁ…)
「ご、ごめんなさい!変な空気になっちゃったですね!」
「お茶でも持って来るです!!」
「は、はい…」
「…えっと、お手洗いは?」
「オテライ?」
「…トイレは」
「あぁ!トイレですね!!」
「部屋の右です!」
「あ、ありがとうございます」
ぱたんっ
部屋から逃げるように外へ出る波斗
廊下
(…馬鹿だなぁ、俺)
家族が居ない事が、どれだけ悲しい事か解ってるはずなのに
無闇に聞いて良い事じゃないって解ってるはずなのに…
(ほんっと馬鹿だ…)
出て右、だったな
ガチャッ
「…何コレ」
空き部屋
「お茶…、取ってこなきゃ…」
「…あれ?」
出て右の部屋
私の右の部屋がトイレ
じゃぁ、空き部屋の右は?
「…」
バタァンッッッ!!
廊下
「蒼空君ーーーーー!そこじゃ…」
「…えっと」
「コレは…、一体」
開けられた扉
そこから見える本当のベルアの部屋
壁に貼り付けられた波斗の写真
写真立てにも、机にも
「 」
時は戻って現在
「…ははっ」
「ちがっ!違うんですぅうううううううう!!!」
「いや…、ははっ」
「…はっ」
「嫌ぁああああああああああああああ!!!」
「…トイレは右でしたね」
「ははっ…、はっ」
「蒼空君!違うんですってばぁああああああああ!!」
「何や何や、うるさいのぅ」
「どうしたのかしらぁ~♪」
「ママぁあああああ!」
「響さん…」
「…あらあら」
「見られちゃったの~♪」
「狙ってたんですかぁっ!?」
「…ウフフフ~♪」
「マァアアアマァアアアアアアア!!」
「怒っちゃ嫌ぁよ~♪」
「何や?何を見られ…」
「…うわぁ」
「ベルア、流石にコレはなぁ…」
「いやぁあああああああああああ!!!」
「発狂するで、コレ」
「仕方ないわねぇ~♪」
「あ・お・ぞ・ら・く・ん♥」
「へっ?」
ボキンッ
「かっ…」
ドサッ
「数十分間の記憶を飛ばしたわぁ~♪」
「マ、マ、マ…」
「…流石やな、悪女」
ロンドン支部
女子寮
「おっとっと…」
「大丈夫か?馬常」
「ん…、大丈夫」
「よく持てるね…、俺より多いのに」
「何、大した事ではない」
姿を覆い尽くす程の荷物を持つ馬常と雨雲
馬常は覚束ない足取りだが、雨雲はしっかりとした足取りで歩いている
「お疲れ様です」
「僚艦殿、荷物に過不足は無いか?」
「えぇ、ありませんよ」
「申し訳ないですわね、買い出しに行って貰って」
「いや、暇だったからな」
「構わないでくれ」
「俺も暇だったし…」
「何よりロンドンを見回れて良かったよ~」
「そうでしたか」
「…No,4は?」
「昕霧はロンドン支部に居る」
「ウェスタと話をしているそうだ」
「そうですか」
「がうっ!」
「おやおや、出てきたんですね」
「へぇ、虎」
「珍しいね~」
「えぇ、私が旅行先で拾いまして」
「「拾った」…?」
ドォオオオオオオオオオンッッ!!
「…何の音だ?」
「爆発音だねぇ…」
「支部の方ですね」
「お願いします」
「…行くぞ」
「はいはい…」
「仕事だからね…」
読んでいただきありがとうございました