応接室の尋問
「…囮?」
「…あぁ」
「私達を囮にしたのかしら」
「…そうだ」
「…殴って良い?」
「待て!待ってくれ!!」
「ちゃんとした理由がある!!」
「…何かしら」
「奴等の特性を利用した」
「…ソルナ」
「アンタから聞いた方が早いわね」
「だろうな」
「…えー」
「奴等は名の有る人間は殺さない」
「よって、No,4、織鶴 千刃を囮に使った」
「どうして殺さないのかしら」
「使うからだ」
「…使う?」
「何?特殊性癖なの?」
「いや、そうじゃない」
「人形と戦っただろう」
「あぁ、戦ったわね」
「奴等は元は人間だった」
「…詳しく教えてくれるかしら?」
「人形師」
「奴は生きた人間を人形にする」
「死んでいるから感情などは勿論ない」
「だが、能力も身体能力も…」
「全て生前のそれと同じだ」
「…その事実」
「知るまでに何人の同胞が犠牲になったのかしら」
「…300人以上は」
「…そう」
「つまり、奴等は名の有る人間…」
「そいつ等を人形にするために生け捕りにするのね」
「あぁ、そうだ」
「で、どうして私達を囮に使ったのかしら?」
「それに私達は殺されかかったわよ」
「…いや、奴等は貴女達を殺そうとはしていない」
「実力を試しただけだ」
「…試験とでも?」
「そうだろうな」
「実力を知りたかったのだろう」
「現に奴等相手に苦戦はしなかったんじゃないのか?」
「まぁ、そうね」
「で、それを知った上で私達を囮に使ったのね」
「…それについては謝罪する」
「だが、それ相応の収穫はあった」
「何?」
「奴等の1人を捕縛した」
「今、ロンドン支部の監獄に幽閉している」
「あら、やるじゃない」
「…それ相応の犠牲は払ったがな」
「でしょうね」
「伊達に有名な組織じゃないわね」
「[ハデス]…、か」
ガコンッ!!
「織鶴-、扉壊せたよー…」
「お疲れ、馬常」
「雨雲と一緒に中の乗客を救出しといて」
「はいはいー…」
「…航空機は?」
「能力痕跡を見られたら厄介よ」
「消しなさい」
「…了解」
「ウェスタ」
「何だ?」
「奴等は名の有る人間は殺さない…」
「…つまりは生け捕りにされた[名の有る人間]が居るってことでしょう?」
「…あぁ」
「先代の[守護者]だ」
「彼が!?」
「俺も未だに信じられない」
「彼は…、相当の実力者だった」
「でも、生け捕りなら生きてる可能性は…」
「…」
静かに首を横に振るウェスタ
「恐らく、もう…」
「…そう」
「…彼の後継者として俺は選ばれた」
「よって、ロシアの監獄から支部長によって出されたのだ」
「どうしてソルナを?」
「実力だな」
「先代の[守護者]を倒すほどの相手だ」
「俺が知ってる上では、コイツを選ぶのが最善だと判断した」
「…なるほど」
「それにしても、前科有りねぇ」
「…信用できないか」
「いや、別にそうでもないわよ?」
「今回、連れてきた響も前科有りだし」
「…響 元導か?」
「確か護符術の使い手の」
「そうそう」
「アイツ、元は能力者狩りの[鬼]だから」
「「!?」」
「噂には聞いていたが…」
「…本当に?」
「嘘言ってどうすんのよ」
「…頼もしい限りだ」
「まぁ、アイツも昕霧に会ってから丸くなったわよ?」
「そうなのか…」
ガタァン…
「あ、出てきたわね」
「全員、病院に運ぼう」
「一応…、身体検査をするべきだ」
「そうね」
「ウェルタ」
「何で俺が雑用係みたいになってんだ…」
「…誰のせいで、こんな事になったと思ってんの?」
「…悪かった、って」
軍病院
病室
「ふぅ…」
ベットの上で包帯を解く波斗
「無事だったかしら?」
「あ、織鶴さん」
「はい、大丈夫ですよ」
「大した傷もないし、擦り傷ぐらいです」
「アンタの事だから、その擦り傷もすぐに治るでしょうね」
「喜んで良いのやら…」
「で、アンタに面会人」
「え?誰ですか?」
「お、お久しぶりです…」
「こ、こんにちは」
「ベルアさん!クロルさんも!」
「お久しぶりです!!」
「蒼空君が怪我したと聞いて心配で…」
「大事にならなくて、良かったです」
「ありがとうございます!」
「…ありゃ?」
「どうかしましたですか?」
「ベルアさん、俺の呼び方変わりましたか?」
「え?」
「あっ…」
「し、親しくなった証拠です…」
「あぁ、なるほど!」
(助かりましたです!クロル!!)
(あ、後でパフェ…)
(…はいです)
ロンドン支部
応接室
「…病院から引っ張り出された思うたら」
「何で応接室やねん」
「すまないな」
「私が聞きたい事が有ったからだ」
「…えっと?」
「ソルナ・キューブ」
「支部長直属部下、[守護神]だ」
「あー!聞いた事あるで!!」
「ロンドン支部の部隊で総隊長的な役目を与えられるんやろ?」
「あぁ、そうだ」
「支部長は代々[ガーディアン]の名継ぎ、[守護者]に守護されるのが仕来りだ」
「…で?」
「ほの[守護神]がワイに何の用事や?」
「…護符術」
「コレについて聞きたい」
「護符術?」
「聞いてどうすんねん」
「いや、興味本位なんだが」
「私の呪言と貴方の護符術は似ているだろう」
「…そうやな」
「何故だと思う?」
「知らんがな」
「第一、お前の呪言は能力やろ?」
「ワイのは違うで」
「そうなのか?」
「ワイのは能力未満、道具以上のモンや」
「護符術ってんは、3枚の札を使って発動するねん」
「お前は違うやろ?」
「…あぁ」
「俺のは呪言全書という本に記述された呪文を唱える」
「暗記しとんか?」
「あぁ、している」
「3年有れば可能だ」
「…ほの能力」
「誰に教わってん?」
「…」
「能力専門の本やと?」
「ほんなモンないで」
「ほうやろ」
「…あぁ」
「ホンマの事言えや」
「ワイと[同じ]やろ?」
「…」
「前科…、か」
「ワイの前科は聞いたか?」
「…聞いた」
「ほうか」
「ほれなら話は早いやろ」
「お前の前科は何や?」
「…」
「答えろや」
「信用する為には必要やで」
「…その為に俺の招待を受けたのか」
「そうや」
「ホンマは病院で精密検査受けたかったねんで?」
「ベットで寝たかったがな」
「悪いな」
「お前の質問時間をワイの尋問時間に変えてしもうて」
「…いいや」
「尤もだろう」
「…教えてくれるねんな?」
「あぁ、教えよう」
「俺の罪を」
「…何や?」
「殺した」
「…何を?」
「師を」
「父を」
「家族を」
読んでいただきありがとうございました