計画開始
万屋
「痛てて…」
「動かないでください」
「火星の腕、千切りますよ?」
「千切るの!?」
「冗談です」
「怪我の治療が出来ないので動かないでください」
「お、おう」
「…」
「イラついてるな」
「まぁ、無理もないか」
「あの雑魚共…」
「私の服に傷付けやがって…!!」
「おお、怖い怖い」
カランカラ-ン
「ただいまです」
「あ、お帰り」
「お帰りなさい」
「お帰り」
「お帰り~!」
「火星さん!大丈夫ですか!?」
「どうって事ないよ」
「君に比べたらね」
「腕、3本逝ったんだって?」
「え?あぁ、はい」
「しばらく治りませんかね…」
「それなんだけどね」
「あの子が居るわよ」
「あ-!ユグドラシルの!!」
「ゆぐどらしる?」
「私達と同じ万屋」
「軍公認のね」
「他にも居たんですね!」
「結構、居るわよ」
「面識は殆ど持たないけどね」
「で、そこのユグドラシルって所の女の子が珍しい能力を持っていてね」
「回復系なんだ」
「回復系?」
「ゲ-ムとかで言う僧侶みたいな能力かな」
「能力で珍しい特殊系の中でも、さらに珍しい回復系」
「その子に治して貰えば一発だよ!」
「火星もよく治して貰ったよな-」
「昔は失敗ばっかりだったし!」
「黒歴史なんだが…」
「その人がユグドラシルの主人さんですか?」
「いや、主人は別に居るわね」
「…面倒くさい奴だけど」
「そうなんですか?」
「…あれ?」
「どうしたんだい?蒼空君」
「ゼロさんは?」
「調べ事が有るとか言って帰ったわよ」
「コ-ヒ-代はしっかり請求しといたけど」
(抜け目ないなぁ…)
軍本部
13F資料室
「…」
パラッ
「…やはり、か」
「調べ事ですか?ゼロさん」
「布瀬川、お前は覚えてるか?」
「昔の五眼衆事件」
「懐かしいですね」
「あの事件がどうかしましたか?」
「あの事件でな、ガキが1人行方不明になったらしい」
「その詳細が載ってないんだよ…」
「妙ですね」
「逐一、事件は記録するはずなのに」
ガチャンッ
「誰か来ましたね」
「誰…が?」
暗い資料室に響く革靴の音
黒いス-ツと青いネクタイを着用しオ-ルバックの髪と白い手袋
そして眼には尖ったサングラス
「No,2…!」
「久しいな、ゼロ」
「貴様が調べ事とは珍しい」
「何でテメェが居る?」
「南の大戦に行ってるはずじゃ…」
「終わらせた」
「あの20年続いていた大戦を、か?」
「所詮は雑魚共の集合体に過ぎん」
「…全員、殺したのか」
「今、軍は死体処理に追われてるだろう」
「1ヶ月以内に片付くだろうがな」
「あの大戦には計50万の勢力が有ったはずだ」
「全て消したさ」
「…まぁ、良い」
「アレで近隣の住民が…」
「言わなかったか」
「全て、と言ったんだ」
「…近隣の住民も消したのか」
「大した数じゃないし損失でもないだろう」
「高々、120万程度だ」
「軍の許可も下りている」
「そんな事より、面白い情報が有るぞ」
「何?」
「今回の五眼衆事件…、だったか」
「その事件にNo,1が出る」
「…この程度の事件にか?」
「俺は興味本意だが、No,1が興味だけで出るとは思えん」
「軍の命でな」
「…軍の?」
「妙だとは思わないか」
「この程度ならNoすら使う必要性は無い」
「貴様は興味本意だろうが、別の指令に従えと言うことすら言われていない」
「五眼衆事件に何かが関わっている、と考えるのが妥当かも知れんな」
「…何が?」
「さぁな」
「だが、興味は有る」
「この事件の真相、話してくれよ」
「お前は?」
「西で戦争が勃発したらしくてな」
「消す」
「…そうか」
「No,2さん」
「資料室には何か調べ事が?」
「あぁ、丁度良い」
「No,2のIDカ-ドだ」
「重要資料室への入室を許可してくれ」
「解りました」
「ですが、1つ言っておきます」
「何だ」
「IDカ-ドではなく切符です」
「いい加減にカ-ドにしないか?」
「格好悪いだろう」
「キザナルシのNo,2?」
「消すぞ」
「戦闘以外能なしのNo,3」
「あぁ?」
「フン」
「ケンカしないでください」
「処理が面倒くさいので」
「チッ…」
「…そう言や、お前の秘書…だっけ?」
「アイツ、元気か?」
「秘書ではなく部下だ」
「俺は知らないな」
「アイツの出す茶は美味ぇからな」
「よろしく言っといてくれ」
「…その程度は言っておいてやる」
「ありがとよ」
「てか、重要資料室に何の調べモンだ?」
「別に関係ないだろう」
「大した事じゃない」
「そうか…?」
「じゃぁな」
「おう、秘書によろしく」
「秘書ではないと言っている」
バタン
「何の調べモンだろうな、アイツ」
「…さぁ、何でしょうね」
廃墟
「集まったか」
薄暗くジメジメとした廃墟には5人の人影
「解ってると思うが、矢毘詩が死んだ」
「…仇は討つ」
「急くな」
「今までの計画を泡にするワケにはいかん」
「どうする?」
「少し早いが計画を実行に移す」
「使える能力者は?」
「ざっと6000人程度」
「…あまり、残らなかったな」
「仕方ないだろう」
「元々に無理がある」
「…まぁ良い」
「ご苦労様だったな」
「計画開始か」
「そうだ」
「…一応、皆に言っておく」
「?」
「俺達の計画の最終目的は解っているはずだ」
「だが、それよりも、まずはお前達の身を按じてくれ」
「頼む」
「「「「了解」」」」」
「それでは計画を開始する」
「全員、解散!」
「…森草、残れ」
「え?」
「お前、雅堂の話を聞いたな?」
「…はい」
「奴が説得できないのなら私でも説得できまい」
「その事に着いては深くは問わん」
「だが、もし敵に敵わない様なら降参してくれ」
「生きるんだ」
「…どうして貴方は!そんなに!!」
「まだ、知るには早い」
「この戦いが終わり次第、話そう」
「…知ってるんですよね?」
「私の両親の事を」
「殺した人間を」
「…知っている」
「ボスも生きてください」
「そして私に教えてください」
「私の両親を殺した男を」
「あぁ、そうだな…」
読んでいただきありがとうございました