2つ名を持つ6人
「…まぁた、ここかよ」
「あ!久しぶり-」
また夢の中だ
…いや、俺の夢じゃないんだっけ?
「…はぁ」
「何食ってんの?」
「たこ焼き」
「何でたこ焼き!?」
「て言うか、ここで飲食とか出来たんだな…」
「フッフッフ…」
「もう1つ気付かないかな?」
「…ん?」
何か変化…?
「…浴衣姿ぁ!?」
「似合う?」
「いや、全く」
「そこは似合う、って言ってよ!!」
「似合う似合う」
「棒読みぃー!!」
「…ハハッ」
「ど、どうしたのよ?」
「…いや、前はさ」
「ちょっと気まずく別れただろ?」
「拗ねられてたりされたら、どうしようかなー、なんて思っててな…」
「…可愛い♥」
「気持ち悪い…」
「酷いわね!?」
「いや、何かしらのリアクションは返してくるとは思ってたけど…」
「…「可愛い」って」
「引くわ-」
「アンタねぇ…!!」
「…まぁ、それは置いといて」
「何で俺を呼んだ?」
「…」
「理由も無く呼んだんじゃないだろ?」
「…霊魅君」
「…なるほどな」
「彼の事さ」
「気に掛けてるんじゃないの?」
「…」
「一度でも関係を持った人を…」
「…あのさ」
「?」
「良いよ、別に」
「吹っ切れてるから」
「…え?」
「俺は吹っ切れてる」
「逃げ続けようと思う」
「…どういう意味?」
「織鶴さんや火星さん達が俺を気に掛けてくれてるのは解ってる」
「俺も、まだまだなんだなって実感した」
「…逃げる、ってのは?」
「…俺」
「今、真正面から、この事に向き合ったら辛いと思う」
「だから向き合わない」
「後回しにする」
「…良いの?」
「そのツケは後で2倍にも3倍にもなって回ってくるわよ」
「覚悟の上だ」
「…そう」
「じゃ、私から言う事はない?」
「何も」
「…強くなったわね」
「まだまだ弱いさ」
「問題を後回しにしなくちゃいけない程、な」
「…頑張ってね」
「おう!」
「あ、たこ焼き1個ちょうだい」
「…はいはい」
タクシー内
「ん…」
「…お早うございます」
「すぐに軍本部に着くわ」
「準備しなさい」
「はい」
「軍に着けば手続きをし、すぐに発つのか?」
「そのつもりよ」
「…解った」
「では、俺達はタクシーの中で待つとしよう」
「解りました」
キキィッ
「じゃ、行ってくるわ」
「はい」
バタンッ
「…雨雲さん」
「何だ?」
「ありがとうございます」
「…気付いていたのか」
「まぁ、火星さんは誤魔化しが下手ですから」
「何処となく、解ってました」
「そうか」
「それを知った上で行くのか」
「無論です」
「火星さんの言う通り、俺には経験が足りないんです」
「だから行きます」
「解った」
「…だが、予め言っておく」
「[切り裂きジャック]を相手にするな」
「切り裂きジャック…?」
「ロンドンの有名な殺人鬼の子孫でな」
「戦うべき相手ではない」
「どうして相手にしちゃ駄目なんですか?」
「単純な強さ的な問題も有るんだが…」
「何より、体だ」
「…体?」
「奴は[呪われた体]と言われる物を持っているらしい」
「[呪われた体]?」
「詳しくは解らない」
「能力の事かも知れないし、本当に呪われている故の物かも知れない」
「ただ、言えるのは[戦うな]という事だ」
「…解りました」
「それと…」
「…」
「…?」
「…いや」
「何でも無い」
言うべきではない、か
蒼空 波斗
この少年は少なくとも[正義感]たる物を持ち合わせている
持っている人間ならば、奴の行いを許せるはずがない
だからこそ、言うべきではない
ジャックと双肩を成す男
奴とは決して戦うべきでは無い
[人形師]モルバ・ゾバット
「…」
奴と戦ってはならない
ガチャッ
「お待たせ」
「このまま空港か」
「えぇ、そうよ」
「資料、読んどいて」
「…ふむ」
「[破壊屋]、[食人]、[吹泡]」
「[人形師]、[盲目]、[切り裂き]…、か」
「有名なのは、その6人」
「…写真とかが無いんですけど」
「名前だけなのよ」
「顔写真なんて無い無い!」
「えぇー…」
「その、それぞれの[2つ名]は相手側が流したのよ」
「脅威のために」
「脅威を与えれば良いだけだからな」
「態々顔をさらしたりはしない、という事だ」
「そうなんですか…」
「厄介な奴等よ」
「…まぁ、今回はアイツ等も居るから大丈夫かしら」
「アイツ等?」
「…会えば解るわ」
ロンドン空港
「トイレ行きたい…」
「勝手に行けば良いでしょうが…!」
「ほんな怒りぃなや!」
「…糞共が」
「あ?」
「怒りぃなやって!相手は子供やで!?」
「…テメェ、誰の直属部下だぁ?」
「そこは問題にせんといて欲しぃんやけどなぁ…」
「お待たせ-、変人共」
「「「あ?」」」
「…まさか、今回の任務に一緒に行く人達って」
「そうよ」
「昕霧、馬常、防銛、響」
「そして、私、アンタ、雨雲」
「この7人よ!」
「トイレ満員だった…」
「女子トイレにでも入ってろよ…」
「いや、ほれは色々と問題やで!?」
「ちょっとぐらい静かにしなさいッッ!!」
「…何だ、この構成は」
「あ!雨雲さぁ~ん♥」
(…大丈夫なんだろうか)
某所
「…」
「ありゃ、何処かに行くんッスか?橋唐さん」
「憂さ晴らしだ」
「ウサ?」
「え?兎?」
「…何か、言ったか」
「なななな!何でもないッス!!」
(兎ネタは禁止だったのを忘れてたッス…)
「お前が憂さ晴らしなんて珍しいんだゼ」
「何処に何をしに行くんだゼ?」
「…お前達には関係ない」
「今回は私情の込み入った事だ」
「…面白そうなんだゼ」
「ちょっとぐらい教えろ!なんだゼ」
「…信念」
「?」
「信念や信条」
「言わゆる[粋]という物に部類される物が俺は好きでな」
「それは知ってるんだゼ」
「敵だろうと味方だろうと、尊敬すべき相手は尊敬する」
「だが、屑は屑として扱う」
「それがお前なんだゼ」
「そうッスね」
「昨日の人形師の一件でもそうでしたッス」
「…人形師?」
「あー、そういう事か!だゼ」
「…馬鹿には黙っておけ」
「厄介だ」
「馬鹿?」
「馬鹿って…」
(やめとくんだゼ!霊魅!!)
(え?何がッスか?)
(アイツが祭峰の事を「馬鹿」と呼ぶのは、相当イラついてる時なんだゼ!)
(死にたくないなら黙るんだゼ)
(わ、解ったッス)
「行ってくる」
「行ってらっしゃいッス!」
「気を付けるんだゼ-」
「跳ね返らないように…」
「黙れ」
「…兎ネタは禁止ッスよ」
「忘れてたんだゼ」
読んでいただきありがとうございました