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秋鋼  作者: MTL2
156/600

告白

「助かりました、火星さん」


「何、気にしないでね」

「町内会の人達から苦情も来てたから、それを片付けただけだよ」


「助かりました」


「どういたしまして」

「織鶴の乱射に比べたら…、コイツ等なんてね」


(やっぱり撃たれてたのか…)


「コイツ等は俺が片付けるよ」

「君達は祭りを楽しむと良い」

「そろそろ、目玉の花火だろう?」


「あ!」


「今年は近年最大規模らしいからね!」


「良いですね!」

「…熊谷」


「解ってるよ~」

「じゃ!俺達は行くから」


「おい!何処に行くんだ!?」

「花火…」


「桜見に着いてやってくれ」


「…!」


「私達よりね、蔵波君の方が良いの」

「お願い」


「私からも頼むわ」


「…解った」

「桜見」


「…」


暗く俯いている桜見

目は生気を失い、沈んでいる


「…俺の穴スポットに連れて行ってやる」

「良いか?」


「…」


桜見は静かに頷く




社裏の丘


「綺麗だろ」


「…」


「ー…」


小さくため息をつく蔵波

桜見の表情は、先から一向に変わらない


「…桜見」

「俺は野郎共が何言ってようが関係ねぇ」

「それは皆も同じだ」

「蒼空、熊谷、森草、夕夏」

「アイツ等は、そんなに薄情な奴じゃないだろう?」


「…私、怖い」


「怖い?」


「今でも…、覚えてる」

「あの時…、あの暴走族にされた事を…」


「…」


「怖かった…」

「誰も…、助けてくれない…」

「誰も…、誰も…」


「…だけど」

「今は違うだろ?」

「皆が居る」


「…うん」

「…でも、私は総長だよ?」


「関係ねぇよ」

「縛双って言やー、知る人ぞ知る暴走族だ」

「暴走族を検挙する暴走族、ってな?」


「…知ってたのかよ」


「このテの情報には詳しい自信が有るぜ?」

「熊谷から聞いてるからな」


「…それよりも」

「私は…」


「…体の事か」


「…」


桜見は静かに頷く


「誰も、そんな事を気にしたりしねぇよ」


「…する」


「しねぇって」


「…パパとママは」

「それで離婚した」


「…!」


「昔の…、話」

「ママはイギリス人、パパは日本人」

「私はハーフよ…」


「そうだったのか…」

「でも、名前が…」


「…離婚したから」


「…悪い」


「…良いの」

「私が…、奴等に辱めを受けてから…、警察が動いた」

「でも逮捕されたのは、極一部」

「殆どの奴等は逃げた…」


「…っ」


「パパとママは毎日、毎日ケンカ…」

「私の事について、ね…」

「私は毛布にくるまってた…」

「悪戯がバレた子供みたいに…」

「私は…、悪くないのにね…」


「…桜見」


「…暫くしたら離婚したわ」

「ママは去り際に言った」

「「貴女のせいで」って」


「お前のせいじゃねぇよ…」


「…どうだか」

「私が…、勝手に出歩かなきゃ…」

「良かったのにね…」


桜見の頬を涙が伝う

彼女は手を爪で強く抓っている


「…学校でも、皆が私を蔑んだ」

「心配してくれた子も居た」

「だけど…、本当に心配してくれる子なんて1人も居なかった…」

「…惨めだった」


「…」


「中学は、うんと離れた所に通った」

「そこで夕夏に会った」


「夕夏に?」


「うん…」

「離れた所だったから、誰も私の事は知らなくて…」

「…夕夏と、他の女子とも仲良くなれた」

「だけど…、それも長くは続かなかった」


「…皆に知れたのか?」


「噂が広がるのは早くてね…」

「皆、私を避けた…」

「…気持ち悪い、だとか、非処女なんて何度も言われた」

「皆、私を蔑んだ」

「だけど、夕夏は違った」

「私と仲良くしてくれた」

「だけど…、それが怖かった」


「どうして?」


「だって、皆は私を避けるのに」

「彼女だけは私に接してくれる」

「何か裏が有るんじゃないか、って疑わずには居られなかった」

「だから、ある日聞いたの」

「「私は気持ち悪くないか?」って」


「…夕夏は何て?」


「「気持ち悪いよ」って」

「「怖いし、何だか近寄りたくない」って」

「…やっぱりね」

「からかわれてたんだ私は、って思った」

「だけど、夕夏はこうも言ったの」

「「でも、面白い」」

「「良い人だし、その髪の毛も地毛でしょ?」」

「「襲われたのだって、好きで襲われたんじゃないでしょ?」」

「「だったら、何も問題ないんじゃないかな」」

「「桜見ちゃんは桜見ちゃん」」

「「ぜぇーんぶ、引っくるめて桜見ちゃんだよ」って」

「…嬉しかった」

「何よりも、今までの何よりも」

「私を認めてくれたのが…!嬉しかった…!!」


「…そうか」


「蔵波も同じ…」

「私を守ってくれた…」


「当たり前だろ?」


「…蔵波」

「私、蔵波が好き」


「…」


「恋人なんて言わない…」

「だから、せめて…!」

「せめて、友達で居てくれ…!!」

「お願いだ…!!」


「…嫌だね」


「っ…!!」


「誰が、こんな乱暴で」

「暴走族総長で」

「中古品で」

「身勝手で」

「金髪で」

「元虐められっ子で」

「強気で」

「胸のないような奴と友達でいるかよ」


「…そうだよな」

「こんな…!奴と…!!」

「誰も…!!」


「だから、彼氏にしてくれ」


「…え」


「乱暴で」

「暴走族総長で」

「中古品で」

「身勝手で」

「金髪で」

「元虐められっ子で」

「強気で」

「胸のないような奴が俺は大好きだ」

「愛してる」

「だから、友達じゃなく」

「彼氏にして欲しい」


「…」


「駄目か?」


「…そ、それは告白かよ」


「そうだ」


「…私も」

「変態で」

「色好きで」

「見境なくて」

「ヘタレで」

「馬鹿で」

「たこ焼きにマヨネーズかけなくて」

「そんな奴の友達になんか、なりたくない」


「…言うじゃねぇか」


「言うわよ」

「だから」

「変態で」

「色好きで」

「見境なくて」

「ヘタレで」

「馬鹿で」

「たこ焼きにマヨネーズかけないような奴の」

「彼女になりたい」


「…」


「駄目…、か?」


「…返事は言わなくても良いんだろ?」


「してくれなきゃ解らないだろうが」


「…大好きだ、桜見」


「…私も大好き、蔵波」


ドォー…ン


「あ、花火…」


「綺麗だな」


「…うん」


そっと蔵波に桜見は寄り添う

彼へと体を預け、耳元である言葉を呟く


「…俺もだ」


「…ありがと」


蔵波の頬へと唇を添える

紅くなりながらも、桜見へとそれを返す


「大好きだぜ、桜見」


「…私もだよ、蔵波」






読んでいただきありがとうございました

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