不穏
ベキッ!!
「がぁああああ!!」
3本目
3本目の骨が折れた
「カハハハハハハハ!!折れますねぇ!!綺麗に!!!」
「次で4本目でさぁ!!」
矢毘詩 十全の行った拷問は骨折り
1本1本、徐々に骨を折る
「あっしの名の由来…、「娯楽」」
「あっしの「娯楽」の為に死」
ゴロン
「…え?」
目の前に大きな塊
足下に頭のない体
足下に広がる血
「うっ…!!」
状況理解などの前に腹の奥から胃液が沸いた
「おえっ…!!」
ドサッ
「!?」
委員長を抱えていた男も同様に首と胴が離れている
「うぐっ…!!」
「い、委員長…?」
委員長は?
まさか…、死…
…んでない
死んでない!!
「委員長…!!」
「うぅ…」
気絶したままか…
何はともあれ、無事で良かった
だが、それよりも
誰だ?誰が助けてくれた?
辺りには誰も居ない
有るのは2つの肉塊
壊れたヘルメット
そして委員長と俺
「誰が…」
解らないが、助かったんだ
…腕はかなり痛いが
今はそれよりも逃げなければ
もし教員や警察官達でも来て、正体がばれれば…
即抹殺
「…逃げよう」
「う…」
「ここは…?」
「い!?」
「蒼空…、波斗?」
「それと…、きゃあああああああああああ!!!」
「委員長!!」
倒れそうになる森草を支える波斗
「委員長!大丈夫か!?」
「蒼空 波斗…、コレは…?」
「コレは…、えっと…」
「…夢!」
「ゆ…め…」
ガクンッ
「…気絶したな」
(大丈夫かな…、もの凄い言い訳したけど)
ガンガンガン!!
「!!」
屋上の扉が激しく叩かれる
(来たか…!!)
このままじゃバレる!!
ヘルメットは壊れて被れないし…!!
「おい!大人しくしろ!!」
マズい!マズいマズいマズいマズい!!
このまま扉を開けられたら…!!
即抹殺!!
「おい」
「え?」
バタァン!!
「大人しく…」
「…あれ?先刻の男は」
「せ、先生!!」
「どうしました?」
「アレ…」
「うわっ!!」
「人の…、死体…?」
万屋
「馬鹿野郎が!!」
「う…」
手当てされた腕
包帯をグルグルに巻いただけの荒っぽい治療だが幾分はマシになっている
「蒼空!テメェ、無茶し過ぎだ!!」
「死んだらどうする!?」
「すいません…」
ソファに正座させられている波斗
それを見下ろすゼロ
「どうしてゼロさんが?」
「軍の連中が援護に向かった」
「俺はテメェの所に援護に行ったんだが…」
「行ってみりゃ、テメェは血だらけ!!」
「その上!このガキに顔を見られやがって…!!」
「俺が行かなきゃ即抹殺だぞ!?馬鹿野郎!!」
「本当にすいませんでした…」
「…このガキは?」
「委員長です」
「あ-、クラスの」
「はい」
「このガキがねぇ」
「…顔、見られたんだな?」
「…はい」
「消すか」
「そんな!!」
「仕方ないだろうが」
「このガキはテメェの顔を見た」
「自分が死ぬのと、このガキが死ぬの…、どっちが良い?」
「…自分が死ぬ方です」
「軽々しく口にするなよ」
「覚悟もねぇくせによ」
「誰かを犠牲にして生きるくらいなら死んだ方がマシです!!」
「…何も知らねぇガキが」
「調子に」
「うぅん…」
「はれ?ここ何処…?」
「「!!」」
「蒼空 波斗と…?ホ-ムレス?」
「誰がホ-ムレスだ!!」
(この風貌じゃぁなぁ…)
「す、すいません…」
「…まぁ、良い」
「いや、良くねぇけど」
「お前、妙なモン見なかったか」
「え?」
「変なライダ-ス-ツに、ヘルメットを被った野郎を」
「み、見ました!!」
「正体、見たか?」
「それが…」
「直前の記憶が…」
「…そうか」
(良かったぁああああああ!!!)
「あ-、ガキ」
「ガキじゃありません!!」
「森草 蜜柑です」
「悪い悪い、森草」
「はい?」
「何者だ?テメェ」
「え…?」
「テメェからする匂いは女の匂いじゃねぇ」
「戦士の匂いだ」
「爆炎と硝煙のな」
「…」
「委員長…?」
「多分…」
「あの男の人…」
「は?」
「一緒に居た人だと思うんですけど…」
「…あ」
「なるほど!」
「なるほど!じゃないですよ!?」
「何言ってるんですか!ゼロさん!!」
「いや-!悪ぃ悪ぃ」
「あの、もう帰って良いですか?」
「駄目だ」
「どうして!?」
「外はまだ危険だ」
「ここに居ると良い」
「でも…」
「コイツも居る」
「心配はしなくても良いだろ」
「は、はぁ…」
「蒼空、手伝ってくれ」
「コ-ヒ-でも淹れよう」
「は、はい!解りました」
コポポポ
「…おい」
「何ですか?」
「アイツ、いつから知り合った?」
「中学からですよ」
「別に普通でしたし、特に変わった事は…」
「疑ってるんですか?」
「いや…」
「お前の周りにいた奴等、敵だな?」
「…はい」
「確か、矢毘詩 十全とか」
「娯楽の矢毘詩だな」
「その娯楽の、って何ですか?」
「五眼衆のトップ5人に与えられる称号でな」
「五眼衆の崇めてる神様は五つの眼が有り、その全ての眼に意味が有るらしい」
「娯楽、慈愛、混沌、憤怒、選択ってな」
「五眼衆の5人の内、3人は面が割れてる」
「混沌のファグナと憤怒の雅堂」
「それとテメェが殺した矢毘詩」
「…俺、あの人は殺してませんよ?」
「あ?テメェが殺したんじゃねぇのか?」
「ゼロさんがやったんじゃ?」
「違ぇぞ?」
「…あれ?」
「おい!コ-ヒ-!!」
「あ!!」
「…えっと」
「どうしたの?そのコ-ヒ-塗れの包帯」
「零しました…」
「…全く」
「それ!取って」
「新しいのに変えるから」
「え、いや…」
「早く!!」
「は、はい!!」
「…コレで良いわね」
「あんな雑な巻き方しちゃ駄目でしょう!?」
「丁寧に…」
「…悪かったな」
「あ、この人が…」
「ゼロだ」
「ゼロさん?」
「変わった名前ですね」
「まぁな」
「もっと丁寧に巻きましょう」
「…へいへい」
「ほれ、コ-ヒ-だ」
「あ、ありがとうございます」
prrrrr
「電話か」
「もしもし?」
『ゼロ?』
「織鶴か」
「どうだ?片付いたか」
『やられたわ』
『コイツ等、雑魚』
『囮よ』
「囮ぃ?何の為の」
『解らないけど、暴走した能力者達と今回の一件』
『時間稼ぎに思えるわ』
『狙いは何かしら?』
「…知るか」
『そっちで調べといてね』
『火星は?』
「無事だろ」
「防銛が行ったしな」
『解ったわ』
『波斗は?』
「無事だ」
「娯楽の矢毘詩を殺ってたぞ」
『へぇ、驚きね』
「殺ったのは蒼空じゃないがな」
『誰?』
「知らん」
「蒼空も解らないそうだ」
『妙ね』
『貴方の他に増援は?』
「行ってないはずだ」
「蒼空が殺ったとも考えにくいし…、仲間割れか?」
『どうして』
「…さぁな」
「だが、間違い無く俺達の知らない水面下で何かが起きている」
「何かが、だ」
読んでいただきありがとうございました