デート終了
現在
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「…まぁ、そんな話だ」
「…」
「重かったか?」
「…重いですヨ」
「ゼロさんはNo,2に親友を殺すか愛した人を殺すかを選ばせたんですカ?」
「…そんな所だな」
「最低な選択をさせちまった」
「…誰も悪くなイ」
「運命ガ…、そうさせたんですネ」
「他の選択肢も有ったかも知れない」
「だが結果的に…、3人の中で最後まで生きているのは俺だけだ」
「…いや、俺も」
「言わないでくださイ!!」
「…」
「ゼロさんは生きてまス!!」
「今!ここデ!!」
「…あぁ、生きてる」
「生きてるんだよなぁ…」
「…ゼロさン」
「心配すんな」
「別に変な気を起こそうなんざ思ってねぇよ」
「自分の中で決着も区切りも付いてる」
「お前と蒼空のお陰だな」
「蒼空さんのノ…?」
「…セント」
「は、はイ?」
「今日は楽しかった」
「ありがとな」
「私も楽しかったでス!」
「そうか」
「はイ!」
万屋
「さて…、と」
「火星、鉄珠」
「「ん?」」
「最終プランX、始動」
「「勘弁してください織鶴様ぁああああああああ!!!!」」
「はい、却下」
「行ってきなさい」
「お願い!本当にお願い!!!」
「マジで無理!無理だから!!!」
「行け」
「「…はい」」
カランカラーン
「…何か、死地に行く兵隊の後ろ姿みたいでしたけど」
「織鶴さん、最終プランXって?」
「まぁ、見てれば解るわよ」
「2人は犠牲になりましたけどね」
「…?」
小路
「森草は家か?」
「はイ、多分」
「結局、あの2人はしなかったね」
「何をですか?」
「ちゅー」
「そんな事したらセントさんが昇天しますよ…」
「おいおいおいおいおいおいおい!兄ちゃんよォー」
「彼女さんとデートかい!?」
「あ?」
「え?」
「うわ、チンピラがゼロに絡んだ…」
「命知らずだね…」
「…」
「…蒼空君、どしたの」
「アレ…、火星さんと鉄珠さんです」
「…えっ」
「最終プランX…、始動させたのか」
「鬼だな、織鶴さん」
「最終プランXって何…?」
「もしゼロさんとセントさんの仲が険悪になったり…」
「空気が気まずいときに、奥の手として」
「チンピラに扮した2人がゼロさんに突っかかって…」
「ゼロはセントちゃんを守って仲直り、って事?」
「…はい」
「うわぁ、鬼畜」
「ですよね…」
「だって、結果は」
ゴキィンッッ!!
「行くぞ、セント」
「はイ」
「アレだもの」
「うわぁ、瞬殺」
「だってセントさんとか当然の如くスルーだもの」
「まぁ、解りきった事だからねぇ」
「あの2人が気の毒すぎるんだもの」
「惨めだねぇ」
「織鶴さんが鬼畜だもの」
「…だねぇ」
「馬常-!帰るぞ-!!」
「はいは…」
「…え?」
「もう見つかってるって気付いてたんだもの」
「それは早く言って欲しかったかな…」
万屋
「「使えねぇな」ですね」
(鬼だわ…)
「望み薄かったけどね」
「頑張った方でしょ」
「鉄珠は逃げてましたけど、火星が足掴んで逃がしませんでしたね」
「1人じゃ怖かったんでしょうね」
「ですよねー」
「「あははははは」」
(悪魔だわ…)
「どうします?」
「2人のデート、終わっちゃいましたけど」
「まぁ、そうね」
「終わりかしら」
「サラっと終わりましたね」
「チューぐらいしたら良いのに」
「…そんな事したらセントさんが卒倒すると思うんですけど」
「「あー…」」
「…ま、森草ちゃんもお疲れ様」
「ゼロが心配かけたわね」
「私はまだ…」
「セントさんが見るに堪えませんでしたから…」
「その為の罰ゲーム☆ですよ」
「ザマァないですね、ゼロ」
「そうねぇ」
(悪だわ…)
カランカラーン
「ただいま戻りましたぁ…」
「お疲れ様、波斗」
「俺の尾行って必要でしたか…?」
「別に?」
「ですよね…」
「委員長は?」
「もう帰ったわよ」
「ゼロさんの復帰祝いに晩ご飯を奮発するんだって」
「凄いですね…」
(俺は、あの蕎麦屋に行こう…)
「織鶴さん、茶葉が切れてますよ」
「あら、そう?」
「波斗ー」
「はいはい」
「いつもので良いですか?」
「うん、よろしく」
「それと馬鹿2人も捜してきて」
「やっぱり帰ってないんですね…」
「全くよ」
「彩愛-!ユグドラシルに連絡入れといて-!!」
「はーい」
「じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
カランカラーン
大通り
「…はぁ」
終わったのか、全部
No,2との決戦は
あの人も何かを思ってたんだろうな
軍に対する裏切り
ゼロさんに託した名前
王女との約束
多分、もう心が埋め尽くされてたんだと思う
限界だったんだと思う
解る
その心境が
夢に悩んでたとき、雨雲さんに打ち明けて少し楽になった
あの人は居なかったんだろうか
そんな事を打ち明けられる人が
ゼロさん?直属部下の人達?
…違う
そんな簡単に打ち明けられる事じゃない
自分の過去を
それも、忘れ去りたいような過去を他人に打ち明けるなんて…
俺は無理だ
出来ない
だから、だろうか
あの人は…
だから、あの人は軍を裏切ったのか?
耐えきれなくて裏切ったのか?
それは、あの人の自己中心的行動じゃないか
いいや、違う
こんな理由で裏切ったんじゃないだろう
…でも、どんな理由でも
あの人には直属部下が居た
一緒に裏切った
それ程に信用がある人だったんだろう
嫌な感じはしなかった
恐怖だとか、悪寒だとか
そんな感情は抱かなかった
普通の人だった
近所で会うお兄さんとか、近くも遠くも無いよな
そんな、雰囲気だった
でも、敵だ
あー!もう!!
混乱してきた!!
あの人は、何を思ったんだろうか
ゼロさんに何を託したのだろうか
名前?違う
「それ以上の何か、か…」
「ぉー…」
「え?」
「聞き覚えのある声が…」
「もうやだぁ…」
「そう言うなよ…」
「だけどさぁ…」
「…何してるんだ、あの2人」
屋台の暖簾から覗く2人の後ろ姿
そう、火星と鉄珠である
「何してるんですか…」
「蒼空君~~~」
「織鶴が怖いぃ…」
「彩愛が怖いぃ…」
(酔ってる…)
「ほら!良い大人が泣き言を零さないでくださいよ!!」
「おぉ!兄ちゃん、コイツ等の知り合いか!?」
「え、えぇ、はい」
「何か知らねぇけど、苦労してるみたいだぜ」
「全く!嫌な上司を持つと苦労するねぇ!!」
「は、はい…」
「兄ちゃんも飲みねぇ!飲みねぇ!!」
「み、未成年ですよ!?」
「おぉ!じゃぁおでん食え!!」
「え、え、え!」
「飲めよ蒼空ぁ~」
「飲んじゃえよぉ~」
「おいおい!兄ちゃん達!未成年に飲酒させんじゃねぇよ!!」
「「え~」」
「じゃぁ、熱燗1本~」
「俺も俺も~」
「へいへい!」
「…この大人達は」
結局、答えは出なかった
ゼロさんの事もNo,2の事も、何も
だけど、思う
あぁ、あの人は懸命に生きたんだな、って
読んでいただきありがとうございました