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秋鋼  作者: MTL2
143/600

自分を殺す事

浴場


「ふぅ…」


何なのかしら、あの人達

大臣や他の傭兵と違う

変な大人


「…馬鹿みたい」


キチンとした綺麗な身だし

ボサボサで汚い身だし


見た目なんて全く違う

話し方も声も


違うのに似ている


…性格かしら


「…うぅ」


ブクブクと泡を立てるシス王女


「…本当、馬鹿みたいですわね」


「誰が馬鹿ですか」


「ブフォッッ!?」


「あー、あー、年頃の女性がはしたない」


「ななな!何で入ってきているのですか!?」


「お嬢様が「石鹸が切れている」と言ったのではないですか」

「何処に置けば…」


「出て行きなさいっっっっっっ!!!!」




脱衣場


「…何してんだ」

「頬が真っ赤に腫れてっぞ」


「…お前は何してるんだ」


「風呂に入ろうかと」


「…やめとけ」

「今入ったら俺みたいになるぞ」


「あー、王女が入ってるのか」

「心配するな」

「女にも、ましてや断崖絶壁に興味はねぇ」


ゴッッッ


「…石鹸が飛んできた」


「痛いだろ、石鹸って」


「超痛いな」

「て言うか王女様が石鹸ってどうなんだ」


「自然由来の高級品だぞ」


「へぇ」


「…」


「…」


「まな板」


「平面図形」


ゴッッ!ゴッッッッ!!


「石鹸とかタワシが大量に飛んでくる」


「避けるけどな」


ヒュンッッッッッッッッ!!!


「ナイフ飛んできたんですけどぉおおおおおおおおおお!?」


「待て待て待て!俺達が悪かった!!!」



王女部屋


「…」


「不機嫌でいらっしゃるようで…」


「まな板ね…」

「あぁ、次は平面図形の勉強でしたかしら」


「…調子に乗りました」


「同じく」


「…まぁ、良いですわ」

「私も未発達であることは確かです」


「「…」」


「かと言って、牛乳を用意する必要はありません」


「「…チッ」」


「全く…」

「…どうするのですか」


「何が?」


「これから」


「あぁ、スケジュールですか?」

「午前は民への今後の抱負などの演説を行います」

「午後は…」


「そうではなくて!」

「貴方達ですわ!!」


「…どう、って?」


「もう…、解っているのでしょう」

「この国は…」


「「だから?」」


「え、えぇ!?」


「言ったはずですよ、シス王女」

「私達は貴女に忠義を誓ったのです」


「離れねぇよ」

「テメェを生かすためならな」


「…馬鹿な人達」


「馬鹿はお前だ」

「いつまで自分を殺す?」


「…っ」


「…どういう事だ?ロスト」


「気付いてなかったのか」

「このシス王女、元は庶民だぞ」


「はぁ!?」


「…どうして解ったのですか」


「喋り方にムラがある」

「その上、牛乳嫌いだ」


「…牛乳は関係ございません」

「喋り方だけで、よく解りましたわね…」


「喋り方は確定事項だからな」

「幾つかの妙な点は有った」


「…何ですの?」


「こっからは仮説だがな」

「思考や歩き方」

「風呂に入るとき1人」

「そして…、歴史」


「…調べたんですのね」


「図書室にな」

「この前、行った」


「厳重に保管していたはずですが?」


「簡単に破れたよ」

「見張りが居なかったからな」


「見張りが居ない?」


「この城には俺とゼロ、そしてシス王女だけだぜ?」


「他の兵は!?」

「大臣は!?」


「全員、逃げた」

「と言うよりは[逃がした]の方が正しいか?」


「…えぇ、そうですわ」

「この様な国と共に死なせる事はないでしょう」


「まず、そこだ」

「王族なら重役の家臣は身辺に置く」

「最後まで、だ」


「…逃がしたから、ですわね?」


「そうだよ」

「次に歩き方だ」

「お前の歩き方は訓練された王族のそれじゃない」

「普通の歩き方だ」


「…見ただけで解るのか」


「観察力には自信がある」

「そして、風呂」

「王族ならば侍女に世話をさせるはずだ」

「だが…、お前は平然と1人で入ってただろう」


「ナイフを持ち込むのは?」


「それは知らん」


「護身用ですわ」

「野蛮な男性から身を守るための」


((それに俺達も含まれたのか…))


「…で、だ」

「歴史」


「…それは」


「言えばゼロに嫌われると思うか?」


「っ…」


「心配すんな」

「コイツは、そんな器の小せぇ男じゃねぇよ」


「…」


「…教えてくれ」


「コイツは王と庶民の子だ」


「…ふむ」


「王が顔の良い庶民の女を娼婦として雇った」

「そして、その間に出来た子が…」


「私ですわ」

「10歳の私は、ここに住まわされましたの」


「本来は身代わりだった…」

「そうだな?」


「はい」

「隣国より王女を差し出せ、と」

「そうすればアリシア王国への進軍を止める、との通告が…」


「それでシス王女が…」


「絶好の的でしたわ」

「まず隠し子だと悟られないために王学教育を受けましたわ」

「言葉遣いや食事マナー諸々…」


「それでも癖は隠せなかったワケだ」

「4年でそこまでは、な」


「その通りですわ」

「ですから、父様は苦肉の策で自らの子を…」


「だが、隣国は約束を守らなかった」


「解りきった事でしたわ」

「でも、従うしか無かった」


「掌で踊らされてるに過ぎないのにな」

「そうして続いて…」


「母様も、兄様も…」

「…父様も」


「ってなワケだ」


「…そうでしたか」


「軽蔑する?侮蔑する?嘲弄する?」

「どれでも構いませんわ」

「事実ですから」


「…シス王女」


「何ですの?」


「貴女の出生など、私は知った所ではありません」

「作法も言葉遣いも胸の大きさも」


「む、胸は…!!」


「しかし、私は忠誠を誓った」

「貴女がどれほど変わり果てようとも、怪物になろうとも」

「それが貴女であるのなら、私は尽くします」

「それが私の流儀です」


「…俺も同じく、だ」

「報酬はキッチリいただくぜ?」


「…おかしな人達ですわね」


「もう、自分を殺さなくて良いんだぜ?」

「普通に喋っても…」


「どうにも、この喋り方が身に付いてしまいましたの」

「今更変えるのは無理ですわ」


「そうか…」

「…牛乳飲めば」


「牛乳は万能薬じゃねぇぞ」


「えっ」


「いや、流石にそこまではねぇだろ」


「そうなのか」


「そうだよ」


「…フフッ」


本当に変な大人

今までの人と違う


面白くて強くて


優しい大人



読んでいただきありがとうございました

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