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秋鋼  作者: MTL2
133/600

罪とタガ

「…」


「…懐かしいな」

「あの時も、こうやって向かい合った」


「…そうだな」


「ただ、あの時と違うのは…」

「俺とお前と場所」

「約束、立場、環境…」

「…恐ろしい物だな」

「たった数年の月日で、ここまで変わるのか」


「変えたのは時間だけじゃねぇだろう」

「俺が変えた」


「…俺も、な」


「…」


「…」


まるで、十数年越しに会う友人同士かの様に2人は喋らない

言葉ではなく、相手ではなく

時間を懐かしむかのように


「…」


「…」


「…だが」

「終わりなんだよな」


「…ここでな」


立ち上がる両者


「最後に、お前が見えて良かったよ」


「俺も、お前に会えて嬉しかった」


「最も」


「[最後]は」




------どちらにとってかは解らないが



「本気だ」


「全力だ」


「本気でテメェを」


「全力でお前を」


「「ぶっ殺す」」


ドンッ



ガァアアアアアアアアアアアンッッ!!!!!


「ゼロ…!!!」


「No,2…!!!」


ギリギリと硬直する両拳


心なしか、2人が笑っているように見える


「ぬぁああああああああああああああああ!!!」


「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


ゴキンッッッッッッッッッッッッ!!!


拳が砕けた

確実に、どちらかの


「…フンッ」


「体術は俺の方が負けていたな?ゼロ」

「絶対治癒」


バキンッ


「…」


「…」


距離を取る2人

両者は拳を見つめ、握っては広げを繰り返す


「懐かしいな」


「あぁ、懐かしい」


ガシャンッッッッ!!!


「あの時は、こんな物は無かった」


空間切離装置を踏みつぶすゼロ


「あの時は、こんな物は無かったな」


天から神撃が姿を消す



「な…?」


「解らないか、蒼空 波斗」


「No,1…?」


「奴等は俺達の前には居ない」

「今、奴等が居るのは[過去]だ」


「過去…!?」


「…戻してるんだよ」

「奴等は時間を戻してる」

「互いのために」


「…意味が解らない」

「何で!?敵同士だろう!?」


「…元は味方同士」

「奴等は…、言うなれば[親友]に部類すべき関係だ」


「奴等は約束を交わしていたらしい」


「約束って…?」


「[ある女性を忘れたとき、忘れた方を殺す]」

「…妙な約束だな」


「…約束?」

「どうして…」


「俺には解らない」

「ただ、解るのは…」

「…あの2人は戦っているんじゃない」

「話している、という事ぐらいか」


「話してるって…」

「どういう事だよ!?2人はどう見ても戦って…」


「どう見ても、話してるようにしか見えんな」

「拳を交えて」

「互いの時間の中で」



「…なぁ、ロスト」


「何だ?」


「俺はお前に名を預けただろう?」


「…あぁ」


「今は…、返してくれねぇかなぁ」

「…約束を、護らせてくれねぇかな?」


「…今更だろ」


「今更だな」


「…ゼロ」

「お前が彼女との約束を忘れたのなら、殺していた」


「忘れていないさ」

「だから、ここに居る」


「…俺が言ったんだったな」

「[もし軍がお前の気に入らない組織なら潰せば良い]と」

「だから、裏切ったんだろう?」


「あぁ、そうだ」


「その理由は…、教えてくれないのか?」


「お前が勝ったら教えてやるよ」


「言ったな?」


「言ったさ」


「[約束]だ」

「破るんじゃねぇぞ」


「…あぁ、[約束]だ」

「ロスト」


「…[約束]だ、ゼロ」


「…絶対神撃」

「天帝」


「…来い」



「…ふむ」

「手加減無しか」


「何だよ…!この数!!」


「大凡、一垓と言った所か」


「い!?」


「一京の上の位だ」

「知らないのか」


「待てよ…!そんな数!!」

「一京でも、ここが吹き飛ぶ威力だぞ!?」

「そんなの撃ったら地殻変動だって起きかねない!!!」


「起きんさ」


「何で、そう言い切れるんだよ!?」


「…No,2はNo,3を狙う」

「No,3は俺のように防ぐ術を持たない」

「ならば、1発狙いなどしないだろう」


「全部…!当てるのか…!!!」


「…あぁ、そうだ」


「でも!ゼロさんなら避けられる!!」


「確かに奴の能力…、時間操作を使えば可能かも知れない」

「だが、奴は使えない」


「どうして…!?」


「恐らく、No,3の能力使用条件は体内時間の促進」

「先刻、間近で見たから間違いは無いだろう」


「…つまり?」


「一垓もの神撃を避けきれると思うか?」

「その時間、能力を発動し続けれると思うか?」


「…ぁ」


「そんな事すれば、残るのは白骨だ」

「…いや、それすら残らんかもな」


「で、でも!一京の時は威力より数を優先したんだろ!?」

「一垓なら、さらに威力は落ちてるんじゃ…」


「…始めに言っておいてやる」

「No,2は本気すら出していなかった」


「!?」


「最も、俺と戦った時の奴は本気だっただろうがな」


「ど、どういう…?」


「タガが外れた…、と言えば解るか?」


「タガ?」


「仲間の死」

「No,3との戦闘」

「そして[約束]」

「これ等がNo,2のタガを外した」


「…タガって何だよ!」


「No,2は自分を抑えていた」

「最も、俺もNo,3もそうだが」


「…抑えてるのか?」


「戦場では意識的に抑えるさ」

「人間としてのまともな物を持っていたんじゃ、狂うからな」

「だが、No,2はそれをしなかった」

「自分の罪を、現実を受け入れようとしたんだろう」

「だから自身の体がフィルターをかけたのさ」

「現実に対するフィルターをな」


「そ、それが、どうしてタガが外れる事になるんだよ!?」


「奴は能力を得る前、傭兵だったそうだな」

「No,3もそうらしいが」

「…一傭兵が戦場で大量虐殺を行えると思うか?」

「腕が立ったとしても6、7人程度が良い所だろうな」

「その程度、慣れてしまえばどうと言う事はない」

「だが、能力を得た時は違う」


「…何が違うんだよ」

「人を殺してる事に変わりは無いじゃないか」


「違うな」

「ナイフせ刺せば、銃で撃てば相手は自分を見て死んでいく」

「相手の死が実感できる」

「だが、能力は違う」

「発動させて相手に向ければ、それで終わりだ」

「解るか?蒼空 波斗」

「死を実感できないんだよ」

「人間にとって、それがどれ程大きいと思う?」


「死を実感って…」


「罪を背負えない」

「相手の死を見えない」

「人は戦場に置いての殺戮を少なからず正当化しようとする」

「一般的には[人を殺した]という罪を背負う事によってな」

「だが、能力ではそれが出来ない」

「ごく簡単に人が殺せるからだ」


「…だから、フィルターを」


「そうだ」

「まともな精神にフィルターをかける」

「だから、耐えられる」


「でも、No,2はフィルターをかけなかった…」

「罪を背負うために…」


「背負えない罪を背負おうとしたんだろう」

「だから、奴は無意識にフィルターをかけた」

「自分が壊れないように」


「…でも、それっておかしくないか?」

「罪を背負えてないのに、背負った気になるんだろ?」


「ならないさ」

「だから、奴は変わった」

「例えば、重い物を持ったとき、それは重くなかった」

「それ所か持っている感覚すら無いんだ」

「それが…、どれだけ恐ろしいんだろうかな?」


「…!!」


「つまり、奴はそれだ」

「いや…、[だった]か」


「だった?」


「言っただろう」

「タガが外れたんだよ」


「…罪の意識で?」


「あぁ」

「だから、今までフィルターが防いでいた罪が一気にNo,2を襲った」

「普通ならば心を壊しただろう」

「だが、No,3がそれを止めた」


「止めた?」


「No,2は壊れる事より、No,3との決着を…」

「[約束]を果たす事を決めたんだろう」

「そして、その事が心を支える柱となった」

「心を壊すことが出来ない罪は[心]よりも[タガ]を壊した」


「…だから、外れたのか」


「…俺やNo,3のように意識的に外すのでは無い」

「外したのでは無く、壊した」


「壊した今は本気…」


「…正直言って、No,3に勝ち目は無い」

「本気すら出していない奴に負けたのだからな」

「本気を出したNo,2に勝てるとはとても思えない」


「…いや、違う」


「何?」


「ゼロさんの目…」

「先刻、負けたときとは違うんだ」


「…?」


「迷いが無い」

「真っ直ぐな目だ」


「…迷いを捨てたNo,3は強い、と?」


「俺はそう思う」

「あの人は強い」


「…フン」

「お前の予想が当たれば良いがな」








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