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秋鋼  作者: MTL2
132/600

一京の神撃

廃墟前


「げほっ!げほっっ!!」


「どうした?その程度か」


「…畜生」


何だよ?コイツ

本当に…、バケモノみたいじゃねぇか


攻撃が当たらないとか、効かないの類いじゃない

攻撃すら出来ないんだ


「ほら、次だ」


「このっ!!」


バチィイイイインッッ!!!


「…危ねぇ」


「どうした?まだまだ続くぞ」


「ッ…!!」


防がなきゃ殺される

逃げなきゃ殺される


どうする!?どうする!?

アイツがゼロさんを殺しに掛かったらどうする!?

本気で来たらどうする!?


ガキンッッ


マズいマズいマズい!!!

岩壁に亀裂が入ったか!?

もう一重張るか!?

張った方が良い!

このままじゃ耐えきれない!!


ペタッ


「え?」


能力が発動しない!!

何でだよ!?


「血が…!乾いて…!!」

「くそっ!!」


ガリッッ!


「痛ぇっ!!」


でも、コレで…!!


バキンッッ


「鬼ごっこは仕舞いだよ、少年」


「ぁ…!!」


岩壁を突き破る神撃

その隙間からは神撃を背にしたNo,2が覗く


「君を殺すな、とは言われてるんだがね」

「何分…、奴は約束の付け方が下手すぎる」

「殺さなければ良いのなら、手足を刈っても良いんだろうかな?」


「!!」


コレ…

殺されるんじゃないのか?俺



殺気


「!!!」


「…来ると思っていたよ」


覚えてる

あぁ、忘れるはずがない

この殺気は…!


「No,1…!!」


「No,2…、裏切ったそうだな」


「まぁな」

「で?No,1はどうしたんだ」


「殺しに来た」


「…そうか」


岩壁の縁から手を離すNo,2

向きをNo,1へと向け、首を慣らす


「…」


「…」


会話など、彼等にとって必要ないのだろう

軍最強の2人だ


似ているのだろう、2人は


死と殺を味わい続けた2人

人の闇を見続けてきた2人

戦場という場所に立つ2人


似ているんだろう、彼等は


「…」


「…」


ドンッッ


「…ぇ」


え?何だ、今の


立ち籠める土煙

腕を組み、鋭い目つきのNo,2


「放った、のか…?」

「神撃を…」


待てよ

おいおい、嘘だろ?

俺に撃った時はそんなに速くなかったじゃないか!!


「下らん」


土煙の中からNo,1は姿を現す

無論、傷などない


「…憶測では」

「かすり傷は出来るかと思ってたんだがな」


「かすり傷?」

「付けたいのなら全力を出せ」


「…面白い」


ヒュルッ


「ど、何処に!?」


「ここだよ、少年」


「!」


気付けばNo,2は土手の上に立っている


「少年、見ておくと良い」

「軍の頂上決戦を」


「…嘘だろ、オイ」


「…」


神撃、だよな

あの人の技だよな?


「絶対神撃・天帝」


天を覆う刀

十本や百本、況してや千本などではない


「刀数にして、一京」

「まぁ…、これ以上の数は地形変動を起こしかねないんでな」

「押さえさせて貰う」


「…数ではなく威力に回したか」


「お前には無意味だと…、解ってはいるさ」

「だが一発だ」


そう、一発で良いんだ

たった一発で…


「お前を殺す事が出来る」


「…やってみろ」


ヒュッ




何が起きたんだろうか

解らない

解るはずがない



No,2が手を振り下ろした所までは見えた

次に見えたのは



何も、無い


地面も

廃墟も

残骸も

土煙すらも


ただ、中心には男が立っていた


「…無傷、か」

「その上、ゼロまで庇ったんだな」


「No,3は、まだ利用価値がある」

「死なすには惜しい」


「俺は?」


「裏切り者に何を」


「…そうだよなぁ」



ピピ-----ッ


『只今、No,2側のクイ-ンが敗れました』

『No,2側は残りキングです』


「…絵道が死んだか」

「残りは…」


言葉に詰まるNo,1


「…?」


何だ?

No,1が…、怯えてる?


「…」


ゾクッ


「…絵道」


違う

No,2だ


この顔がNo,2なんだ


「唄巳、狗境、利宇、ヴァミタ…」

「…皆」

「すまない、な」


戦場における戦士の心境なんて知らない

No,2に至っては、つい先刻に出会った

どんな人間かも知らない

ただ、強くて軽くてゼロさんと何か有った

それぐらいしか知らない


だけど今、解ったんだ


あの人は軍の能力者集団のNo,2だと言う事が


「あー、すまんな、No,1」

「少しばかり…、哀愁に浸っていたよ」


(…この男、間違いない)


俺とは違うタイプの人間だ

No,3とも違う…


強いて言えば、中間の人間


俺のように自分を押さえたり解放したりする事が出来るタイプではない

No,3のように自分の闇を封じ、時に放出して暴走するタイプでもない


コントロールすら出来ていない

感情を


何と哀れな

この世界に入って、ごく普通の精神を保ってしまったのか


人間であったが為に

普通であったが為に

生きていたが為に


お前は狂ったのだろう


「ははは、本当に老人の様になってしまった」

「No,1、お前はどう思う?」


「…」


懐から丸い何かを取り出すNo,1

それを起動させ、足下に落とす


ヴゥ----…ン


「…空間切離か」

「俺の空間を切断する事が出来る装置…」

「作ったのは布瀬川だな」


「ご明察だな」

「起きろ、No,3」

「能力が使用できるはずだ」


「ぐ…が…」

「…あー…、くそ」


むくりと起き上がるゼロ


「ゼロさん!!」


「…No,1か」


「便利な能力だな」


「テメェほどじゃねぇさ」

「…さて、と」




「下がれ、お前」


「…何?」


「そのまんまの意味だ」

「下がってくれ」


「つい先刻、殺られかけたんだろう?」


「それでも、だ」


「…」


「…」


「…深くは問わない」

「援護はしないぞ」


「元より、そのつもりだ」


「…そうか」


静かに土手へと移動するNo,1

その場に座り込み、ゼロとNo,2に視線を向ける


「…楽しませて貰うぞ」

「強者の狂演を」



読んでいただきありがとうございました

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