表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秋鋼  作者: MTL2
129/600

墜ちる

現在


草原


「…少し、昔の事を思い出していたよ」

「老人のようになってしまった」

「そうは思わないか?ゼロ」


「…」


瓦礫に埋まるゼロ


「ゼロさん…!」


「案ずるな、少年」

「彼は死んでは居ないよ」


「…ッ!」


「そう身構えるな」

「一瞬で終わるよ」

「死なんて、そんな物さ」


「させるかよ…!!」


「…何か、勘違いをしているようだな」

「俺が言ってるのは」

「君を、だよ」


「!!」


「絶対攻撃」


「くっ…!!」


バチィンッッ!!!


「…弾くか」


「俺が狙いかよ…!!!」


「まぁ、目的としては違うけどね」

「二番目と言った所か」


「…チィッ!!」


マズい

マズいマズい!!


奴はNo,2!

とんでもなく強いのは明らかだ!!

現にゼロさんがやられたんだぞ…?

俺に勝てるはずが無い!!


「どうした?諦めたか」


「馬鹿言うなよ」


だけど、諦めるワケにはいかない!

ここで逃げ出したらゼロさんが殺られる…!!


「来いよ…!!」

「相手してやる!!」


「言われなくてもね」



改札口


「…どうするんですか」


「どうしましょうか」


背中を合わせる2人

彼等の周囲を囲む動物達

その奥では絵道が2人を睨み付けている


「このままじゃ埒が開きませんね…」


「でも、その方が良いんじゃ…」

「織鶴が追いついたら援護して貰えるし…」


「彼女は来ませんよ」

「これだけの時間、彼女が立ち往生しているとは思えない」


「…また敵が?」


「そう考えるのが妥当でしょう」


ヒュンッッ!!!


「「!!」」


2人の頭上を鳥が凄まじい速度で飛び去って行く


「…来ましたね」


「行きなさい、獣共」


「「「「「ウォオオオオオオオオオッッ!!!」」」」」


それを合図に幾多の獣達が2人へと襲い始める

火星は銃を構え、奇怪神は何かを考え込んでいる


「…そうですね」

「火星君、耳を」


「え!?」



「…」


抵抗しないのね

まぁ、この数の獣に囲まれたら無理も無いかしら


…待ってて

すぐに行くわ

貴方を1人になんて出来ない

壊れてしまうわ

相手がゼロなら尚更

壊れないで

すぐに、行くから


パァンッ!


「!」


ビスッ


「グゥゥ…」


「危ないわね」


「動物を盾にしやがった…」

「酷ぇな」


「女性に発砲する貴方もね」


今はこっちに集中すべきね

コイツ等を殺さなきゃ…


「ウォオオオオオオッッ!!」


「危ないですよ」


「うげっ!?」


火星を蹴り飛ばす奇怪神

彼のお陰で熊の攻撃は火星から外れたが…


「お…が…」


「…少し強すぎましたかね」


奇怪神の思いの外、良い蹴りが決まってしまったようである


「痛いんですけど…」


「そうでもなければ死んでいましたよ?」


「そ、そうですが…」


「死ぬ順番が変わっただけよ」


振り下ろされる豪腕


「…」


とんっ


奇怪神はゆっくりと熊に触れる


「どういう気かしら」

「そんなので獣は止まらないわよ」


「どうでしょうかね?」


「ウォオオ?」


「!?」


「良い子ですね」

「森に帰りましょう」


「…ウォオオ」


熊は森の奥へと消えていく


「なっ…!!」


「やはり、ですね」

「貴方の能力は肉体には作用していません」

「神経系統しか支配できてない」

「違いますか?」


「…えぇ、その通りよ」


「やはりですか」

「では簡単な話です」


クイクイと手首を慣らす奇怪神


「神経系統を支配すれば良い」


「何ですって…?」


神経系統を支配?

馬鹿な、彼の能力は心読

相手の精神伝達の流れ、思考を読み取る事

それを、どうやって神経を支配するというの…!?







「心読とは言え、元は同じですからね」

「元が同じなら自分の能力をコントロ-ルするのと大差有りません」








元が同じなら?

そうか、そういう事か


「…私の能力を狂わせるなんてね」


「よく解りましたね」

「100点です」


そう、奇怪神は同系統の能力の操作を行ったのだ

奇怪神は元能力開発局長

そして能力者である


開発局長の位置で見てきたのは何千万という能力の波長パタ-ン

人間の脳と同じで能力にもパタ-ンが存在する

だが、それ等は全て異なる

微妙な違いや機械でも判定しにくい違い

その違いを見つける作業は天才的な才能を持ったとしても簡単では無い


奇怪神はそれを数十年に渡って行い続けたのだ

幾千の、幾万のパタ-ンを記憶し

それ等を元に研究し解析する

数十年の研究と解析によって身についた経験則


それを利用し、自らの能力を自ら研究した

そして理解する


常人には到底、理解する事の出来ない行動

波長パタ-ンを記憶するなど、常人には不可能だ

否、理解しようと言う思想を浮かべる事すら不可能なはずだ

奇怪神が行ったのは世界中の人間の名前を暗記する事と大差ないのだから


「…さて」

「この動物達は私に触れられれば元に戻りますよ」

「どうします?」


「…」


再度、精神制御する?

無理よ、出来ないわ

そんな事を繰り返せば私の精神が朽ち果ててしまう


絵道の精神制御の能力発動条件は自己精神を疲労させる事

自己の精神力を削る度に能力を使用できる

絵道は、この多くの動物を支配するのに、かなり精神を疲労させた

これ以上の能力使用は絵道としても避けたいのだ


「余所見が過ぎるぜ?絵道」


パァンッッ!!


「くっ…!!」


ビスッ


「ウオオオオオオオオオッ!!」


「また動物を…」


どうする!?

奇怪神は制御できない!

火星は…?

無理よ!人を制御するだけの体力なんて…!!


カランッ


「…?」


絵道のポケットに何かが入っている


「…コレは」


それは黒い錠剤だった

No,2が部下達に与えた錠剤





「いつかは決断の時も来ようぞ」





…唄巳、貴方の言う通りね

決断の時なんて…、すぐに来ちゃった


「…何です?それは」


「…ごめんなさい」

「皆…」


ゴクンッッ


私、墜ちちゃったわ

屑虫と同じ所まで


許して


私を許して


こんな屑虫同然に成り果てた私を


許してくれるよね



優しいから


許して


くれるよね?






読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ