表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秋鋼  作者: MTL2
118/600

防銛の過去

地下街


「六天崩拳」

「三天・空撃」


ドンッッ!!


「…くうアツノこうげキカ」


「そうです」

「…鉄程度ならば粉砕できる威力なのですがね」


ゴキンッ


腕を鳴らすヴァミタ

その表情に先までの優しさはない

冷徹な機械の表情となった


「もウまもルモノハない」

「わたしはさツジんきカイとナリハテヨう」


「元より、その為に造られたのでしょう?」


「…ひていシタイジじつもあるノダ」


ベキベキベキ…


「コレヨりヘイキフういんをカイジョする」

「こ-ド[DD3-%2QPR]」


ベキンッ


ヴァミタの右腕が少しずつ変形し出す

まずは2つに割れ、その間から鋸歯状の刃物が覗く

そう、チェインソ-だ


「…実現していたんですね」

「自立型兵器は」


「…そんナニリっぱなモノデはなイ」

「ただノサつりくをカタちにしたモノダ」


バキンッ


次には左腕

左腕の中央からは先尖の銃口が出てくる


「…光線銃ですか」


「そうダ」

「こんくリ-トであろうトいわであろうトカンたんにやきキル」


「そうですか」

「…1つ問います」


「ナンだ」


「それ等の兵器はとても個人資産で用意できる物ではない」

「それに、貴方は機械」

「それなりの実験と研究を経て実現しているはずです」

「かなり巨大な組織でなければ、それを行うだけの資産は用意できないはず」

「つまりは…、貴方の裏には組織の存在が有る」

「そうですね?」


「…かんシかめラは9だイか」

「ヘタナシばいだ」


「余計なお世話ですよ」


ギュィイイイイイイイインッ


「…ころス」


「その言葉、そのまま返します」



1F受付


「痛い…、にゃぁ…」


「きゃははははははっ♪」


千切れ飛んだ利宇の左足

焼け落ちた右目


「にゃ…ぁ…」


「殺す殺す殺すぅ♪」

「死ね死ね死ねぇええええ!!!!」


ドンッッッッッッッ!!


「にゃぎぃっっ!!」


「外れちゃったぁ~♪」


「ひぃ…!ひぃ…!!!」


楽しんでいるのだ、防銛は

普段日頃から常時敵に殺人を行えないのは当たり前

故に防銛は殺人が可能な任務ならば場所が海外だろうが何処であろうが受ける

人を殺すために


「はははははははははっっ!!!」

「もっと逃げて!逃げて!!逃げて!!!」

「楽しませてっ!!!」


ただ、殺してしまったのでは面白くない

人を殺すのは[殺して」快感を得るのではない

「殺すまでの過程]で快感を得るのだ


だから、すぐには殺さない

相手が能力者で、同年代で、自分の髪を焦がした相手だから


「助けてにゃ…!ヴァミタぁ…!!」


「アハハハハハハハハッッ!!!」


普通、防銛の年頃なら友人と話をしたり遊んだり部活動をしたりするのが楽しみだ


それと同じで、防銛も人殺しが楽しみなのだ

殺戮が楽しみなのだ


友人と話をするように人を殺し

友人と遊ぶように人を殺し

部活動を楽しむように人を殺す


それは殺戮症候群による物だけではない

子供故の無垢さも理由として挙げられる

子供は純粋だ

優しくしてくれる人を慕い、愛す

自分を叱りつける人を恐れ、怯える

喧嘩をすれば相手を憎み、泣く


子供は、その頃から人としての土台が出来はじめる


…が、防銛は違う


物心ついたときに、初めて殺したのは虫だった

足を引っ張ったら死んだ

あまりにも脆くて、楽しくて

気が付けば自分の周囲には虫の残骸が溢れていた


次は幼稚園で殺した

虫ではない

動物を殺した

石を投げつけたら死んだ

やっぱり脆くて、楽しくて

気が付けば悲鳴を上げる先生が居たのを今でも覚えている


次は小学校で殺した

虫ではない

動物でもない

人を殺した

その頃から能力を使える事が解った

その頃から両親が自分を愛していない事が解った

その頃から兄弟に異端児として扱われていることが解った



母を殺した



小学校2年生の時だったのを覚えている

手をかざして「死んじゃえ」と言ったら死んだ

本当に死んだ


その日から、その時から殺戮が大好きになった


お葬式の前日に兄弟と父親で準備を始めた

皆の笑顔が大好きだった

愛されてなくても異端児扱いされても

大好きだった


だから、母親が死んだのは本当に悲しかった

だから、父親や兄弟には生きて欲しかった

殺したくない


だけど


殺戮衝動はその思いに勝ってしまった


ここの記憶は曖昧

ただ悲鳴と肉音と

私の涙と


それだけは覚えている



それから、私は孤児院に預けられた

皆、私を怖がった


嫌いだった


誰も、私と血なんて繋がってない

誰も、私と同じじゃない

髪も目も何もかもが違う


大嫌いだった


小学校ではイジめられた

大嫌いだ


大嫌い


だから殺した


小学校で殺した


皆、殺した



屋上でぼうっとしていたら黒い服を着た人が私を取り囲んだ

銃を向けられてた


その奥から1人の男の人が出てきた

他の人とは違って、真っ白な服を着ていた


黒服の男達を制止し、私の前に屈み込んだ


[君は人を殺したい?]


殺したいよ?

殺したい


でも、そう聞かれたときに

私は泣いていた


泣いていたんだ


[殺したくないよ…!!]


そう、言った


その時、どうして私がそう答えたのかは解らない

未だに解らない


[そうか、そうか]


その人は何度か頷いて、私を抱きかかえた

頭を撫でてくれた

抱きしめてくれた


[もう、苦しまなくて良いんだよ]


そう、言ってくれた


嬉しかった


そうだ、殺さなくて良いんだ

もう、誰も



次に気が付いたときは

私は血の海に居た


そうだ、解った


殺さなくて良いんじゃない


殺す事を我慢しなくて良いんだ


[苦しまなくて良いだろう?]


あぁ、そうだ

苦しまなくても良いんだ



「殺す♪」


「にゃぁあ…!!!」


這いつくばる利宇

それを見下す防銛


「…飽きた」

「死ね」


「助け…!!!」


ガッ


「…誰?」


大きな手が防人の腕を掴む


「そこまでですよ」


「…布瀬川」


「コレを飲んでください」

「沈症剤です」


「…殺したい」


「後悔するのは貴方なんですから」


「…」


ゴクンッ


「うっ…」


ふらりとバランスを崩す防銛


「おっと」


布瀬川は優しくそれを受け止める


「…さて」

「利宇さん、ですね?」


「だ…れ…?」


「私は名乗る程ではない研究者です」


「研…き…ゅ…」


枯れた息

止まらない出血

千切れた足

抉れた目

そのどれか1つを取らずとも、もう利宇は死にかけだと言うことが解る


「…残念です」


「助け…て…にゃ…ぁ…」


どさっ


「…本当に、残念ですよ」



読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ