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秋鋼  作者: MTL2
115/600

九華梨ホテル地下

ゴキンッッッ!!


(コイツ…!)


猛攻

休む間もなく攻撃を加える唄巳

だが、昕霧の前では唄巳の攻撃は無力に近い

ダメ-ジを与えてこそ居るが、無力に等しいダメ-ジなのだ


「テメ-、貫通力を上げるって言ったよな?」


「あぁ、そうなりよ」


「貫通力ね-…」


貫通力なら銃弾が適してるだろうな

だが、それじゃ私には効かない

だからって素手かよ

自らの貫通力に耐えられなくなって、手を傷つけてんじゃね-か


「…埒が開かぬ」


「あぁ、そう思うぜ」


背後を確認する唄巳

彼の後ろには7階建てのホテル


「…ふむ」


「余所見た-余裕じゃね-か!!」


ゴッッッッ!!


「…っ!」



九華梨ホテル


正面玄関


ガシャァアアアンッッ!


唄巳は扉を突き破り、中へと飛び込む


「…」


そして、そのまま階段へと駆け出す


「おいおい!もう鬼ごっこはしたくね-ぜ!?」


「…左様か」



地下B1


「…」


多くの車が並ぶホテル内

唄巳は車の陰に隠れ、昕霧に見つからないように密やかに進む


「音砲弾!!」


ゴッッッッッ!!


「…ッ!!!」


「出て来いよ!無駄な足掻きだぜ!?」


無駄?

確かにそうかも知れないな


カンッ


「…有った」


職員専用駐車場


「…」


ガッ


唄巳は能力によって車に穴を開け、車内から1枚の紙を取り出す


「…よし」


その紙を握りしめ、呼吸を整える


「…行くぞえ」



「何処に行きやがった…」


あの野郎、気付きやがったな

いや…、それとも偶然か?


私の音探知の弱点

それは集中力を要する事

そして、障害物が多すぎれば使えない事だ


この音探知はコウモリ等と同じ超音波と同じ仕組み

音の反響で相手を探す

だが、生物が先天的に備えている物ほど精密ではない

元々、私の能力は攻撃特化に鍛えている

音探知などは鍛錬での副産物にしか過ぎない


バチンッ


「…あ?」


何の音だ?


バチンッバチンッ


静電気の様な、小さな電気音


タンッ


(…足音か)


耳を澄ませ

何が動いてる?

何が音を発している?

何が目的だ?


バチンッ


タタタタタッ


「…柱?」


音を発しているのは柱

走っているのは…、あの野郎か

柱に触れている?

触れる度に音を発してるのは解るが…、能力発動音か?


奴の能力は物体の貫通能力の強化

柱の貫通能力…、って何だよ?


「待たせたな」


「…あぁ?」


気付くと、唄巳が正面に立っていた

その両手には…


「DE-2I、か」

「珍しい型じゃね-か」


「よく知っているではないかえ」

「折り畳める銃器など珍しいのでな、重宝しておるのだ」


無論、その武器が向けられた先は昕霧である


「…無駄なのは解ってるだろ?」


「あぁ、そうであろうな」


ガリッ


「…何を食ってんだ?」


「何であろうな」


次々と錠剤を口へ放り込んでいく唄巳

その量は尋常ではない


「…哀れかな」

「我が姿よ」


ガチャンッ


「来いよ」

「無駄だって事を…」


ドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!!!


「最後まで言わせろよな」

「音防御!!!」


キィンッ


(何が目的だよ…?)


ドッ


「…!?」


貫通した

私の足を


「がっ…!!」


「どうしたかえ?」

「防御が弱まっておるぞ!!!」


ドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!


容赦なく打ち込まれる銃弾


「…ッッ!!」


反射的に昕霧は車の陰へと飛び込む


「無駄」


ドドドドドドドドドッッ!!


「嘘だろ!?」


弾丸は車など関係なく貫通する

まるで、何もない空間を直進するように


「どうしたのだ?その程度か」


「チッッ…!!」


駄目だ、挑発に乗るんじゃね-ぞ

だが…


ドドドドドドドドドドッ!!!


「…だ-!くそ!!」


姿勢を低くし、車の陰から陰へと走る昕霧

それを狙い撃つ唄巳


イタチごっこは正反対の状態となったのだ


(どうする?)


音砲弾でぶっ飛ばすか?

いや、出て行った瞬間に殺られる


この場から離れる?

どの道だ

移動して奴の視界に入れば…、アウト


弾切れの瞬間を狙うか?

…無駄か


ボゴンッ!!


最早、あの野郎は銃弾を撃ってない

銃の空発の振動で揺れた空気

つまりは、私の音砲弾と同じ原理ってワケだ

その揺れた空気の貫通力を極限まで上げれば空気銃弾の出来上がり、ってな


マズいな

このままじゃ-、私がなぶり殺しだぜ

野郎の能力なんざ警戒しないで、さっさと殺せば良かったぜ


「…?」


ドドドドドドドドドドドッ!!


…待てよ?

妙じゃね-か?

こんなに強力な能力なら発動条件も、それ相応のモンだろ

織鶴の野郎みて-に後から来るタイプか?

だとしても、こんな乱発すりゃ命だって…


…命?

待て、あの野郎は何を食った?

あの錠剤みて-なのは何だ?

アレを食ってから馬鹿みて-に強くなったよな?


…能力を強化するモンか?

いや、そんなモンは見た事ね-な

違法ドラッグ…、にしても情報はねぇ

極々最近に造られたモンなら納得は出来る

だが、そんなモンを実戦で使うか?

奴等にとっちゃ決戦だぜ?

そこで、いきなり、不安要素の多いモンを使うか?

いや、有り得ね-な


じゃぁ、何で…?




「…ケホッ」


びちゃっ


…この服はお気に入りだったのだがな

返り血はともかく、よもや自らの血で汚すとは計算外であった

早く奴を仕留めねば時間が無いな


ドドドドドドドドドドドドッッ!!!


「…」


待っていろ、狗境

俺もすぐに向かおうぞ

貴様が泣き媚びるまで説教を止めん

天国から地獄に墜ちるまで説教を止めん

地獄すら突き抜けて、あの方に頭を下げるまで説教を止めん


だが、安心しろ

俺も付き合ってやる

お前の愚行に付き合ってやろう


俺も、大馬鹿者だからな



読んでいただきありがとうございました

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