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秋鋼  作者: MTL2
114/600

能力の予測

「う…」


…空?

青い…、空…


「起きた?」


「…ノアさん?」


「え?」


「ば、馬常さんでしたか!」

「申し訳ございません…」


「別に謝らなくても…」

「…痛いトコ、ない?」


「いえ、特には」

「…狗境は?」


「死んだよ…」

「自滅した」


「自滅!?」


「彼ね、最後の力を振り絞って建物全てに物体を引き寄せる糸を張ったんだ」


「そ、そんな事をすれば…、引き寄せられた鉄骨などによって潰されますよ!?」


「うん、だから自滅」

「俺達ごと死ぬ気だったんだろうね…」


「…ここは」


「天国じゃないよ?」

「工事現場の外」


「脱出できたんですね」


「うん…、そうじゃなきゃ本当に天国だよ」


「それもそうですね」


愛想良く笑う茶柱

それに対し、馬常は遠い目をしている


…最後に呼んだ名前

レウィン、だっけ


家族かな、恋人かな、親友かな

誰にしても…、最後に名前を呼ぶんだから大切な人だったんだろうね


その人を残して死んだんだよ、君は

馬鹿だね、本当に馬鹿だ


君は知らないんだろう

残された者が、どんな思いをするか

残された者が、どんなに悲しいか

残された者が、どれほど憎しむか


君は知らないんだろう


結果的に君を殺した僕が、どれほど恨まれるか


君は知らないんだよね


だから、こんな馬鹿な事が出来るんだ



「…馬常さん?」


「ん?どうかした?」


「いえ、少し…、顔色が優れないようで」


「それは君だよ…」

「…俺の服、ゲロまみれ」


「え?どうして」


「君を庇ったら吐かれたんだけど…?」


「あ!!」


「今頃だよねぇ…」

「まぁ、良いけどさ」


「せ、洗濯して返しますから!!」


「この場で脱げと?」


「ぅ…」


「…別に汚れたのは良いんだよ」

「どうして吐いたの?」

「こんな事、聞くのは失礼だと思うけどさ」


「…」


「…答えられないんだね」


「…ごめんなさい」


「人には1つや2つの隠し事は有るよ」

「まぁ、お気になさらずね」


「はい…」


「で、この後はどうするの」


「取り敢えずは軍に戻りましょう」

「No,2の言っていたル-ルが適用されるのなら、彼が幹部なら」

「何らかの役で有った可能性は高いでしょう」


「ル-ル?」


「チェスの役です」

「キング、クイーン、ルーク、ビショップ、ナイト」

「その5役を倒せば終わりだと」


「…ふぅん」

「彼がその内の1役とでも?」


「恐らくですが」

「普通に考えるのならばキングはNo,2」

「クイ-ンは絵道ですね」

「残りは幹部達でしょう」


ピピ-----ッ


「「!?」」


『只今、No,2側のナイトが敗れました』

『No,2側は残りキング、クイ-ン、ル-ク、ビショップです』


「…何?今の」


「街頭放送ですね…」


「そんな事したら、街の人達に…」

「…居ない」


無人

誰も居ないのだ

普通ならば、先の戦闘の大音で誰かが気づくはず

警察が来てもおかしくなどない


だが、誰も居ない


「やはり、ですね」


「軍が?」


「いえ、違います」

「軍からの連絡は来ていません」


「じゃぁ、どうして…」


prrrrrr


「電話?」


「はい」

「もしもし?」


『あぁ、茶柱ちゃんね』


「総督殿!」


『厄介な事になったわ』

『今期の戦い、No,2のル-ルに従わなきゃならない』


「どうしてです?」


『よく聞いて』

『今、九華梨町には能力の反応が出てる』


「こんな広範囲にですか!?」


『そうなの』

『人が居ないのも、多分それね』

『能力を使ってるのは恐らく…』


「No,2…!」


『そう、正解』


「しかし、どうして彼のル-ルに従わなくてはならないのですか」


『白月に情報を集めさせてたの』

『恐らく、彼は範囲を関連させる能力者よ』


「範囲を?」


『そう、範囲』

『特定の範囲内でしか能力を発揮できないけど、その能力は強力』


「森草ちゃんと同じですね」


『蜂土が気付いたのよ』

『彼女の能力に似てる、ってね』


「では、No,2の能力は人払いの類いですか?」


『ううん、少し違うわ』

『恐らくだけど…、特定の範囲内なら絶対のル-ルを課すんじゃないかしら』


「…そんな能力」


『有り得ないと思う?』

『現に有り得ない能力なんて幾らでもあるわ』

『それに、こうでもなきゃ説明が付けられない』

『私の部屋でゼロが机に突っ込んだのも、街に人が居ないのも、ゲ-ムのル-ルも』

『統一性が有るのはNo,2が関わっていて、彼が行う可能性が有ること』

『そうでしょう?』


「…確かに、その通りです」

「しかし…、それだと」


『厄介ね、かなり』

『彼の能力がそれなら彼の戦場での話も納得は出来る』

『逆に言えば…』


「そんな反則的な能力に勝てるかどうか、ですね」


『そうよ』

『でも、たった今No,2側のナイトが敗れたわ』

『貴方達?』


「はい、馬常さんが」


『そう、よくやってくれたわ』

『残りはキング、クイ-ン、ル-ク、ビショップね』

『…負傷は?』


「少しですが」

「気に病むほどではないです」


『解ったわ』

『これから、雑兵共を相手にして頂戴ね』


「…解りました」


『負傷したら迷わず軍に帰還しなさい!』

『解ったわね?』


「はい」


「それじゃ」


プツッ


「…さて、行きましょう」


「うん」



大通り


「おいおい!出て来いよ-!!」


「…」


壁の角に隠れる唄巳

先刻から戦況は一方的だった


(流石、No,4…)

(恐るべき強さだ…)


武器は砲弾によって破壊され、居場所も特定される

逃げては反撃し、逃げては反撃し、とイタチごっこ状態なのだ


「どうするか…」


「そこか」


ゴッッ!!!


「ッ…!」


「…また逃げやがったな」



カチャンッカチャンッ


「…」


俺の能力

それは物体の貫通力の強化

コンクリ-トも楽に貫通させられる


…だが、貫通の前に弾丸自体が粉砕されては意味が無い

奴は超音波で防御する

奴の防御は厄介だ

超音波で弾丸が削られ、奴に着弾する前に消える

繰り返していては、こちらの装備が尽きる


その前に勝負を決めなければ…

だが、勝負を急いで雑に出れば殺られるのは間違いない

そう言っても持久戦は不利


…どうする?


「見ぃ付けたっ♪」


「!!」


ゴッッッッッッ!!


「おいおい、いつまで逃げるんだよ-」


「くっ…!!」


『只今、No,2側のナイトが敗れました』

『No,2側は残りキング、クイ-ン、ル-ク、ビショップです』


「…何だと」


負けた?

狗境が?


…負けた?


「…ほ-?テメ-等のお仲間さんが殺られたってよ!!」

「テメ-を早くぶっ殺してNo,2も速攻で殺してやるよ!!!」


「…」

「…そうであったな」

「俺とした事が忘れておったかな」


「はぁ?」


ゴキンッッッッッ!!!


「っとぉ!危ね-じゃね-か!!」


突然、拳を繰り出す唄巳

だが昕霧の防御の前に威力はなく、逆に唄巳の拳から血が滲み出る


「私は常に音膜のガ-ドを張ってんだ」

「そうそう簡単に破れると…」


プツッ


「…思わなかったんだけどな」


昕霧の上着の袖がふつりと斬れる


「俺の能力は貫通力の強化なり」

「No,2がため、我が友のため」

「貴様を倒す」


愚か者が

頑張れ、と

あの方から直々に言っていただいたのだぞ?


どうして頑張らなかった

あの人が[相手を殺す事を頑張れ]と言ったのではない事ぐらい、解っているだろう?

生き抜く事を、死なない事を[頑張れ]と言ってくださったのだ


それを、あの方の言葉を無視しおって


大馬鹿者が


読んでいただきありがとうございました

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