No,4の能力
大通り
「…あ-、怠い」
コキコキと首をならす昕霧
彼女を囲むは数十人の武装兵
「No,4、昕霧 凜とお見受けする」
「No,2の指令により…」
「[敵を殺すなら早急に]」
「[名乗るなら死体に名乗れ]」
「[殺しは勝負ではない]」
「[殺し合いである]ってね」
「何?」
「殺戮定義の基本だ」
「それでもNo,2の部下なのかよ?テメ-等」
「…そうだな」
「死体に名乗ろう」
男が手を掲げる
それと同時に向けられる銃
「…フン」
昕霧は小さく息を吸い、呟く
「[冥殺の詠]」
「!!」
その言葉に合わせ、耳を防ぐ男
「全員!耳を…」
その言葉がほかの兵に届く事はなかった
まるで眠るかのように次々と息絶えていく兵達
「…ほ-?耐えるか」
「貴様の能力はNo,2から聞いている…!!」
昕霧の能力
それは[音]
能力によって様々な音を操るのだ
たった今、昕霧が使ったのは殺人音
狂化音などが存在するように、音は人の脳波などに影響を与える
その[音]を能力によって変化させれば人すら殺せるのだ
音の速さは秒速340m程度
空気の乾燥度や環境によって変化はあるが、それでも充分
殺戮や伝達の長けた様々な応用力の有る能力なのだ
ただし、弱点もある
「耳を防げば音は遮られる!」
「つまりはお前の能力も無意味だ!!」
如何なる応用が出来ようとも結局は音なのだ
耳さえ防いでしまえば音は遮断される
それが能力の弱点
しかし
「確かにそ-だぜ」
「だが、そんな事なら私はNo入りなんて出来ね-んだよ」
「No舐めんな」
「ほぅ?」
どうすると言うのだ?
俺と貴様の距離は20m程度だ
銃を抜くか?
俺は腐っても兵士だ
この距離なら銃など無意味
さぁ!どうする!?
「距離21,8m…」
「スゥ---------------…」
大きく息を吸い込む昕霧
(大音量か?)
(無駄だ!こちらは防音対策はしている!!)
(全ての音を遮断してやろう!!)
「ッッッッッッッッッッァ!!!!」
ゴゥッッッッ!!!
「あぇっ…!?」
無い
無い無い無い無い無い無い!!
腹が!無い!!
「音の砲弾だ」
「いや、音と空気の砲弾ってトコか?」
「あ…、ぁ…」
「声も出ない美声です-、ってか?」
「糞雑魚、死んでろ」
腹を風穴とした男は倒れ込む
ピクピクと痙攣した男を踏みにじり、舌打ちする昕霧
「雑魚、雑魚、雑魚」
「No,2は何処だ!?あぁ!?」
「俺が相手では不満だろうかな?」
「…ほぉ?唄巳か」
「左様」
「俺は唄巳 羽々」
「尋常に手合わせ願いたく存ず」
「良いぜ」
「で?何処だよ」
昕霧は辺りを見回す
しかし、何処にも唄巳の姿はない
「私はマジックショ-を見に来てるんじゃね-んだぜ?」
「そうであろうな」
「然れど、姿は見せられぬのだ」
ころころ…
「…サイコロ?」
「それで勘弁願いたい」
カッ!!!
「!!」
辺り一面を照らす激光
(閃光弾かよ…!!)
「目が見えぬのならば相手を捕らえるのは不可能」
「先程の砲弾は使えまい」
「チッ…!!」
「[冥殺の]…!!」
「無駄なりよ」
シュゥウウウウウウウ…
「がっ!?ごほっ!ごほっ!!」
(煙幕…!!)
「コレで呼吸は出来まい?」
「そうとなれば、音も出ぬ」
(厄介だな…)
(向こうにゃ私の能力はバレてる…)
(だから仲間同士の戦いってのは面倒なんだよ)
「さて、後はなぶり殺しかな」
「…」
静かに目を閉じる昕霧
決して諦めたのではない
聞いているのだ
[音]を
空気の流れ
地形
空音の変動
敵の体音
気温と気質
「…そこか」
「む?」
ゴッッッッッッ!!
「何っ!?」
咄嗟に伏せる唄巳
その頭上を砲弾が擦り飛び、唄巳の頭上は灰燼と化す
「…流石に厄介か」
ビュウンッ!!
「げほっ!げほっ!!」
「か-、死ぬかと思ったぜ」
煙幕が一斉に張れる
昕霧はその中から咽せ込みながらも平然と歩いて出来た
「音で煙幕を…」
「テメ-だな?」
「中々の手際じゃね-か」
「No,4に褒めていただくとは光栄の極みなり」
「然れども今では敵対する身なりて」
「だろうな」
「3秒でミンチにしてやるぜ」
「3秒とな?」
「それは無理であろう」
「何でだよ」
「そもそも俺に勝てないからであろうよ」
「…上等だ」
工事現場
建築物内
「…うんとね」
「…どうするんです?」
「どうするってさぁ…」
鉄骨の陰に腰掛ける2人
つい先刻は狗境を前に勝負する気だったのだが、当てが外れたのだ
「だって、すぐに建物の中に逃げるなんて思わなかったもん…」
「確かに私も予想外でしたね」
「しかし、彼の意図は一体…?」
「さぁ」
「俺にも解らないかな…」
「ふむ…」
どうして中に?
彼の刀は長刀
とても、こんな鉄筋や資材が込み入ってる場所で扱える物ではない
でも、それは馬常さんの巨大な傘にも言える事
武器封じ?
相手の武器を封じるために、自分の武器まで封じた?
いや、それはない
そんな馬鹿げた事はないはず
では、何故?
ここに誘き寄せて爆破
私達を一網打尽、とか?
…それもない
私達の誘いに乗ったという事は人集を嫌ったも同然
そんな事をすれば人を集める
罠?
それならば他の手が有るはず
何故…?
「…考え中?」
「はい、少し静かにお願いします」
「う、うん…」
(苦手だな…、この人…)
カァ-…ン
「「!」」
丁度、鉄筋や資材の間に刺さる長刀
「…武器を捨てた?」
「準備は整った故、勝負を開始する」
「!!」
上を見上げる馬常
そこには空中に浮いている狗境の姿が有った
「浮…!?」
「楽しき芸の始まり故、見逃さぬ様」
読んでいただきありがとうございました