無の殺戮者
地下
地下へと歩を進めるゼロと織鶴
すれ違う人々は頭を下げる
「目立つな」
「まぁ、元No,4とNo,3が居りゃ当然か」
「それよりも、早く行くわよ」
「事は思ったよりも面倒な事になってんだから」
「…そうだな」
「はい」
「切符だ」
「ありがとうございます」
「こちらへ」
「ご苦労さん」
「いえいえ」
地下街
「久々だな、ここも」
「そういえば、森草ちゃんの家に寝泊まりしてるんだって?」
「変な事、してないでしょうね?」
「テメェんとこの野郎と一緒にすんじゃねぇよ」
「そんぐらいはするさ」
「それは何よりね」
「まぁ、アンタが手を出す方が信じられないけど」
「…それは喜んで良いのか?」
「おや、ゼロ様に織鶴様」
「…茶柱じゃない」
「何でここに?」
「昕霧様が総督に呼ばれまして」
「私は靴が汚れ始めましたので買いに」
「チッ…」
「頼むから喧嘩すんなよ」
「止めるの俺なんだから」
「確証は持てないわね」
「でしょうね」
「…何で女ってのは面倒くさいんだ」
軍本部
45F総督室
「…」
「…」
如何にも険悪な空気
織鶴と昕霧は異常に距離を置き、ゼロに至っては別のソファへ
総督と白月、茶柱は机をまたいでその光景を臆しながら見ている
「…あの」
「「あ?」」
「話…、始めたいんだけども」
「良いかな…?」
「「勝手にすれば?」しろよ」
「…はぁ」
「貴様等、布瀬川様が重要な一件のために直接お話しなさってくださるです」
「その反応は何ですか」
「良いのよ、白月」
「この2人の仲の悪さは前からだし」
「…はい」
「申し訳ございません…」
「貴女が謝らなくても良いのよ、茶柱」
「軍施設能力者育成学校で2人はトップを争い続け…」
「最後の最後に引き分けで卒業」
「総成績も全く同じ」
「何を争っても同じ」
「同族嫌悪ってトコかしらねぇ」
「「誰が!!」」
「ウフフフ」
(総督様、楽しんでますね…)
「…だけどね」
「今回はそんな和気藹々とした事じゃないのよ」
「解ってるわね?No,2が裏切ったわ」
仕事の表情、とでも言うのだろうか
軍最強能力者集団の7人のうち、2人
そして、元それの1人
彼等は様々な任務を熟してきた
故に、この任務が余裕ではない事をよく理解しているのだ
「彼の強さはNoである、もしくはNoだった貴方達がよく知ってるはずよ」
「だからこそ、この戦力を投下するの」
「足りないぐらいだがな」
苦々しそうな顔をするゼロ
「[無の殺戮者]」
「奴がこう呼ばれてる所以、知ってるだろ」
「彼が任務を遂行した後には何も残らない」
「残るのは、全てが無に帰したという事実のみ…、ってね」
「奴はそれ程の相手だ」
「俺も手加減はしないし、できない」
「それは私も同じよ」
「つーかよ、私達だけで良いのかよ」
「幾ら何でも兵力が少な過ぎやしねーか」
「少数精鋭の必要があんだよ」
「奴は単数より多数の方が得意だろ」
「[無の殺戮者]、ね」
「厨二臭ぇネーミングだな」
「だが、その分の実力はある」
「奴が終わらせた暴動や戦争等…、数を知ってるか」
「さぁな」
「テメェみたく、強者オタクじゃねーんだよ」
「約5千以上だ」
「…ほぉ」
「あのNo,5のノア以上だな」
「そう」
「そして奴と同じ経歴」
「傷を負わないんだよ」
「ノアと同じじゃねーか」
「私もそんぐらい」
「では、聞くが」
「1分足らずで戦場を鎮圧できるのか」
「…どういう意味だ?」
「もっと解りやすく言いやがれ」
「そのままの意味よ」
「No,2は何らかの能力で一瞬の内に大量虐殺を行う」
「何らかの能力、ってなんだよ」
「それを説明しやがれ!」
「さぁ?知らないし」
「はぁ!?」
「軍の記録を見りゃ…」
「それがね」
「何処かの馬鹿みたいに記録を偽造してるのよ」
「…悪かったな」
「記録の意味なんてないもんねー!!」
「あーあ!先代の総督に申し訳ないわー!!」
「悪かったって言ってんだろ!」
「だったら軍の内部情勢を整えたらどうだ!?」
「フーンだ!!」
「話が脱線してますよ、皆さん」
「…そうね」
「さてと、じゃ白月!メンバー表」
「了解しました」
机の上に広げられる図
「まずは織鶴のグループね」
「織鶴、火星、鉄珠、蒼空君」
「波斗も連れて行くの?」
「まだ早いんじゃ…」
「あら、No,1を倒す実力者を放っておくと思って?」
「「「…は?」」」
ピタリと止まる時間
ゼロも昕霧も茶柱もぽかんとして口を開けている
「え?おい、マジか」
キラキラと少年のように目を輝かせるゼロ
「…嘘だろ」
昕霧は目を丸くし、唖然としている
「…」
茶柱も同じく
「…隠した意味が無いじゃない」
「もう意味なんてないのよ」
「はぁ?」
「今回の戦い、蒼空君にはNo,2を相手にして貰うわ」
「!?」
「確かに経験も浅い彼だけどねぇ」
「No,1を倒したのは事実」
「潜在能力に賭けるってか」
「そういう事よ」
「駄目だろ、危険すぎる」
「それだったら、No,3と私で攻めた方が良いんじゃないか」
「その後で、この腐れ馬鹿とそいつを一緒に行かせたら良い」
「誰が腐れ馬鹿だ?糞ビッチ」
「あぁ?」
「喧嘩するんじゃないの!!」
「「黙れババア」」
「私はまだ20代ですーーーーーー!!!」
「また話が脱線してんじゃねぇか」
「で?続きを話してくれ」
「…ったく」
「でも昕霧が言うのも一理あるわね」
「おい、コイツとの天之川追撃戦を忘れたワケじゃねぇぞ」
「被害を被るのはゴメンだぜ」
「あん時はテメェが」
ギィ…
「難しい話の途中だったか」
「すまない、失念していたよ」
ドゴゴオンッッ!!
「リアクションの前に攻撃か」
「面白い」
小さく笑う男
男は1歩踏み出し、殺気を放つ5人へと近づく
「総督殿、白月」
「織鶴、昕霧、茶柱」
「そして…、ゼロ」
「久しい再会ではないか」
「久しいだと?」
「そうだろう?」
「前に会ったのは…、資料室だったかな」
男はソファに腰掛け、机の上の茶に手を伸ばす
「うむ、美味い」
「絵道が淹れるほどではないが」
「惚気話をしに来たんじゃないでしょう?」
「あぁ、そうだな」
「貴様等を一網打尽にしようかと、思ったのだがね」
「止めだ」
「…目的は何だ?No,2」
「ゲームの説明をしようかと、思ってね」
「ゲーム?」
「基盤ゲームだよ」
「単純な、ね」
「…どういう意味だ?」
「駒を街に放つ」
「全てを倒せば貴様等の勝ち、だ」
「…意味が解らないが」
「まぁ、待て」
「駒はチェスと同じだ」
「キングは俺」
「クイーンは絵道」
「ルーク、ビショップ、ナイトは秘密としておこうか」
「ボーンは残りの雑兵だ」
「…つまり、だ」
「3人の幹部とテメェと絵道をぶち殺せば良いんだな?」
「それを邪魔する雑兵共ってか」
「…で?まだルールには続きが有るんでしょう」
「流石は織鶴、察しが良い」
「このゲームはお前達にも同じ枷を嵌めて貰う」
「?」
「そうだな、キングは総督で良いだろう」
「クイーンは白月」
「ルークは昕霧、ビショップは織鶴」
「ナイトはゼロだ」
「…何を」
「貴様等が全員、死ねば終了だ」
「解るな?」
「大凡のルールは把握した」
「だが、それに従うとでも?」
「従わざるを得ない」
「却下だな」
No,2へと殴りかかるゼロ
「控えろ、愚者」
ドゴォンッッ!!
「がぁっ!?」
ゼロは机へと叩きつけられる
しかし、No,2は一切の攻撃を加えていない
「解るか?愚者よ」
「俺はこの場に置いて[王]なのだ」
「逆らうなよ、愚者」
「テメェ…!!」
「挨拶とルール説明は以上だ」
「俺は退散するとしようか」
「逃がすのか?総督さんよ」
「今、戦って勝てるワケじゃないわ」
「ルールに従わせてもらうわよ?王様」
「…良いだろう」
「開始時間は明日の明朝」
「良いな?」
「上等よ」
「楽しみにしているぞ、総督殿よ」
バタンッ
読んでいただきありがとうございました