九華梨高校からの撤収
病院
21号室
「…ぅ」
目覚める桜見
白い毛布から体をお越し、確認するように額に手を当てる
何処だ?ここは
私は校舎で変な男に会って…、それから…
…それから?
「頭が…」
「お?目が覚めたかな」
「…誰?」
「んー、ここの院長」
「君達が緊急で運ばれてきたからね」
「…誰が運んだんだよ」
「蔵波って言ったかな」
「彼だ」
「蔵波が…」
「熊谷って子も連れて来てたね」
「お蔭でこっちは大忙しだ」
「…帰る」
「おっと!まだ無理はしない方が良い」
「脳の損傷が酷いからね」
「…脳?」
「記憶が一部、抜けているだろう」
「何らかのショックだね」
「それが緩くなるまで休むと良い」
「大忙しなんだろ?」
「まぁね」
「だが、男だらけのむさ苦しい職場だ」
「花が有ったらやる気が出るよ」
「…花って」
「院長ー、37号室の患者のカルテです」
「ナースちゃんナイス!!」
「…で、症状がですね」
「え?スルー?」
「普通スルーするー?」
「なんちゃって!」
「彼女と同じく記憶損失に似ています」
「恐らく、同じ症状化と」
「いや、ちょっとぐらいリアクション返してよ」
「じゃないと触っちゃうぞ?」
つるん
「何処触ってんですか!!!」
バチィイイインッ!!
「失礼します!!」
バタンッ!!
「…大丈夫かよ」
「何、頬にビンタをくらっただけだよ」
「超痛ぇ」
「…そりゃ尻触ったら当然だろ」
「てか、あの人は花じゃないのか」
「ナースは飽きたかな、って」
「最低だな、お前」
「…蔵波と熊谷は?」
「37号室でお休み中~♪」
「…そうか」
「何で私だけ別室なんだ」
「レディじゃん」
「そう認識してんのなら、とっとと出てけ」
「ちぇー、釣れないなぁ」
「じゃ、面会人も待ってるしグッバイ」
「…面会人?」
バタンッ
部屋を出ていく院長
それと同時に波斗が入ってくる
「大丈夫か?桜見」
「お前かよ…」
「んな露骨に嫌な顔しないでくれよ」
「…何でお前が居るんだ?」
「途中で蔵波に会ってさ」
「ここまで運ぶのを手伝ったんだ」
「…あっそ」
「愛しの蔵波じゃなくてゴメンねー」
「 」
「…夕夏さんに聞きました」
「協力して欲しい、だってさ」
「…あの馬鹿」
「そう言うなよ」
「彼女だってお前の事を思ってるんだしさ」
「…で?お前は知ってどうするんだよ」
「蔵波に直接伝えるのか?」
「意味ないだろ、それじゃ」
「お前が蔵波に伝えるべきだと思う」
「…馬鹿じゃないんだな」
「そのぐらいは弁えてるよ」
「でさ、これ」
「はぁ?」
波斗の手に握られていたのは広告
大きく[九華梨夏祭り]と書かれている
「再来週にさ、有るだろ?」
「そこでお前達にチャンスを与えます」
「…意味が解らないんだけど」
「まだ解らなくてOK」
「頭の隅にでも置いといてくんねーかな」
「…わ、解った」
「ん、ありがとよ」
「…1つ、聞いても良いか」
「何?」
「どうして、そこまでしてくれる?」
「お前にとっちゃ蔵波は友達だ」
「だけど、私は違う」
「ついこの前、話をしただけだ」
「…理由なんて無いけど」
「は!?」
「そうやろうと思ったからやってるだけなんだ」
「別に、小難しい理由なんてないよ」
「誰かのためになるのなら、それで良いかな…、って」
「…そっか」
何だか、解ったような気がする
森草がこの馬鹿を好きな理由が
休憩室
「…どうだった?」
廊下にもたれ掛る火星
その隣には煙草を吸う院長
「記憶も無いみたいだし、別に良いかな」
「消さなくて良いだろ」
院長は懐から銃を取り出し、火星へと投げる
火星はそれを受け取り少しだけため息をつく
「…覚えてたら殺したんだろ」
「規則だからな」
「俺達も記憶操作を研究しちゃ居るが、まだまだリスクが大きい」
「下手して廃人化とかさせたくないだろ」
「…そりゃ、そうだが」
「デルタロス、だったか」
「奴等に感謝しなくちゃな」
「奴等が彼女達の記憶操作をしてなかったら殺さなきゃ…」
「おい、デルタロスには樹湯しか念力系の精神系能力者は居ないぞ」
「しかも物写だから、記憶は…」
「じゃ、誰が弄ったんだよ」
「お前達の仲間には居ないだろ?」
「…どうなってるんだ?」
「俺に聞くなよ」
九華梨高校
2階廊下
「…マジかよ」
「織鶴とか呼んだ方が良いかなー…」
黒く焼け焦げた廊下
窓ガラスは割れ、教室の窓枠はパチパチと燃えている
「何処。だ」
「黒くて。素早い」
「まるで。ゴキブリ」
「誰がゴキブリだよ…」
つーか、ヤバい
空気の圧縮は念力系か?
いや、特殊系…
どちらにしても、ヤバい
今はシルディも本気じゃない
本気を出されたら?
ましてや、援軍が来たら?
洒落にならん…
「…逃げるか」
コロンッ
「ん。?」
シュゥウウウウウウウウ!
(煙幕。か…!)
「今回は撤退させて貰うわ!」
「また今度ねー!!」
「待て。逃がさない」
「逃げる!!!」
裏路地
「大丈夫?森草ちゃん」
「体力の消耗が激しいですけど…、どうにか」
「皆さんは無事ですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「楓も体力を消耗こそしいるが大丈夫だ」
「…良かった」
「森草、取り敢えずお前は帰って休め」
「俺と織鶴で軍に報告に行くからよ」
「ゼロも行くの…?」
「ちぃと野暮用も有ってな」
「序だ」
「…そう」
「俺達は彩愛と万屋に帰っていよう」
「その方が良いだろう?」
「えぇ、そうして頂戴」
「アンタの代わりに私が軍に報告しとくから」
「感謝する」
「鉄珠は何処だ!?」
「そのうち、帰ってくるでしょ」
「命令も守らない馬鹿なんて知らないわよ」
(怒ってる…)
「何て言われてる所に空気を読まずに参上!!!」
「鉄珠でっごふぁ!?」
鉄珠の頬に織鶴の鉄拳
勿論、問答無用の能力使用状態である
「何処に行ってたぁ?腐れ屑が…」
「ごふぇっ」
びちゃびちゃびちゃっ
「…洒落になってないぞ、織鶴」
「そ、そこまで強く殴ってないわよ!?」
「てへっ♪」
「内臓が潰れてますのでご注意を!」
「「「…は?」」」
九華梨高校
2階廊下
「…逃げ。られた」
「ホホホホホ!情けないですねぇ」
「…アロン。か」
「シルディさん、祭峰さんがお呼びですよぉ」
「急いで帰ってきてくださいぃ」
「…。解った」
「貴様の。方は。上手く。いった。のか」
「えぇ!邪魔は入りましたがねぇ」
「…楽しみ。だな」
「ホホホホホホホ!」
「全く持って…、その通りですよぉ」
読んでいただきありがとうございました