踊れない夜に、君と
第一章:制度通知、そして“ホスト”という現実
2043年、22歳以上の未婚者に義務的にパートナーを割り当てる「結婚出産義務法」。
LOVEYOUの中でも圧倒的なパフォーマンス力を誇るダンス担当・**美月(みづき/23)**に届いた通知。
> 【割当対象者】涼真(27)/職業:接客業(歌舞伎町ホストクラブNo.1)
性交義務期限:30日以内
「……ホスト!? なんでよりによって……」
ファンへの誠実さを信条に、真面目に生きてきた美月にとって、
涼やかに笑う“夜の男”は、最も相容れない存在だった。
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第二章:ペアリング開始、衝突の日々
同居初日、美月は部屋の空気をぴんと張り詰めさせた。
「ルールは守って。アイドルの名に恥じない生活をしてもらう」
「……へぇ、きっつ。女王様系かと思ったけど、ほんとに鉄壁なんだな」
互いを“役割”としてしか見ないふたり。
しかし、涼真のある言葉が美月の心を揺らす。
「……でもさ、好きな女と子ども作るって、案外悪くないって思ってたんだよね。
制度がなきゃ、俺らは出会わなかった。それってちょっと面白いよな」
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第三章:初めての夜、そして妊娠
期限が迫り、政府からの警告通知が届く。
迷った末、美月は自ら扉を開いた。
「……これは義務。でも、私はプロとして“向き合う”。あなたを仕事の一部としてじゃなく、人として見る努力をする」
そうして交わった夜は、静かで、不器用だった。
やがて妊娠が発覚。事務所は「活動休止を許可」し、美月は表舞台を一時離れる。
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第四章:踊れない日々、涙の中で
つわりに苦しみながら、日々のリズムも崩れ、
“踊れない身体”に、美月は苦しむ。
「私、アイドルでいたかっただけなのに……母親になる準備、できてないよ」
そんなとき、涼真が不器用に差し出したのは、小さなぬいぐるみだった。
「店の客がくれたんだ。お前が落ちてるって知ってさ」
彼は変わった。ホストという肩書きではなく、“誰かを支える男”として。
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第五章:再び妊娠、そして静かな決意
第一子の出産から1年。制度により第二子出産義務が課される。
「二人目なんて……このまま私、“ママ”だけになっていくのかな……」
だけど、ある夜。テレビで流れた過去の自分のダンス映像を見て、ふと涙が出た。
「……私は、美月だ。踊れる。きっとまた、戻れる」
涼真はそっと言った。
「だったら俺が、二人分、頑張るよ。お前が踊れるようになるまで」
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最終章:踊れる日が来るその日まで
第二子出産後、美月は体調を見ながらトレーニングを再開。
LOVEYOUのステージは、まだ遠い。
でも、彼女の目は生きていた。
「今は踊れないけど、止まってるわけじゃない。
母親であることも、アイドルであることも、どっちも私」
涼真は子どもを抱きながら笑う。
「またステージ戻るんだろ? 俺、最前列に並ぶから」
> ―そして彼女はもう一度、光を浴びるために、リズムを刻み始める。
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―完―