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都平阿坂の苦難3

すったもんだの果てにシャンプーを終え、

連理に、風呂から上がったら着ている濡れた服を絞って洗濯機に入れるように伝えて僕は風呂場を後にした。

風呂場に続く廊下には誰もいなかった。安心した。

疲れ果てた気がする。いや疲れ果てていた。

もう何もしたくないし、何も考えたくない。

ぼんやりとしていると時間が経つのもあっという間で、

気がつくとびしょ濡れの連理が出てきた。

そう来たかと思った。

そうだよな。乾かすという概念もないよね。とあきらめの境地に立っていた。


仕方がないのでリビングに移動し連理の髪をブラシでとかしながら丁寧にドライヤーをかけていく。

脱衣所で、あんな狭いところで妹にドライヤーをかける兄はなんだかよくない気がした。

なんというか倫理的にだめだと頭のどこかで声が聞こえた。


途中父がリビングに顔を出し、ほほえましそうな顔をしてすぐに出ていった。

どうやら僕らは喧嘩中であったという設定になっているらしい。

兄妹が仲良くしているのがうれしいのだろう。

親の反応がつらい。


幸い連理の髪は短めなのでドライヤーは10分とかからず終わった。

そして、僕をこき使えたことで連理は満足そうだった。

そりゃぁ、自分は飲み物を飲みながら兄にドライヤーをかけてもらっていればもうお嬢様扱いは気持ちがいいのだろう。

「じゃぁ僕は風呂に入ってくるから。連理はもう部屋に戻って寝なよ」

連理な反応を確かめずに僕は風呂場に向かう。

疲れ果てた心と体には風呂が必要だったし、連理の濡れた服も洗濯しなくてはいけなかった。

親にばれる前に何とかする必要があった。

洗濯機を回し、僕は風呂に入る。


長めに息を吐く。お湯に疲れが溶けていくように感じる。

様々なことが脳裏をよぎっていった。

この世界に来て初めて自分の存在がなんであるか思い出したときのこと。

図書館に通いつめたときのこと。

あるいは大学の研究者のもとにも通い詰めて連理のことを調べたこと。

どうしようもないとわかってしまった時のこと。

高校に入学したときのこと。

初めて真代さんに声をかけたときのこと。

真代さんから石碑に座る女生徒の話を聞いた時のこと。

そして、元の世界のこと。

あの時の小説を書いていた時の気持ち。

親や友人のこと。好きだったこと。

仕事のこと。

失ったもの。

手に入れたもの。

そうだ。僕にはもう世界に干渉する力は残っていない。

連理が人の姿をもって僕の目の前に現れたと時、僕の中にあった何かは失われた。

あれは結局何だったのだろうか。

ぼんやりと何ができるかわかっていた。

なぜまあのタイミングで分かったのだろうか?

でももう使い切ってしまったのだからどうしようもできない。

僕はどこにでもいる平凡な高校生になったんだ。

つらつらといろんなことに思いをはせているうちに思考は水の中へと沈んでいくように薄れていった。

意識がふつりと途切れていく。


「ねぇ」

ざぶんと音がした。僕が風呂から沈みかかった顔を出した音だ。

どうやら寝てしまったらしい。風呂に沈むところだった。

危なかった。

脱衣所に連理がいる。風呂場の扉越しに僕に話しかけてきたようだ。

「なっなに?どうしたの?」

僕は慌てて取り繕って声を出した。

「…寝るってどうやるの?」

僕は唖然としながらも納得した。そっか。睡眠って必要なかったもんな。


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