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No.41 良い返事だ


「着゛い゛た゛あぁぁぁ…」


現在の時刻、午前11時過ぎ。

船に揺られて5時間、ついにハオカ島に上陸した。


「みんな見ろ!!海!!森!!青空!!!そして向こうには明らかに栄えている街だ!!!!」


『うおおおおお!!!』


ヒバナの言葉で生徒達のテンションが上がっていく。


「…ヒバナってなんであんな元気なんだ?」


「知らないわよ」


ルーチェに聞いても意味ないか…。


「ジフ、休めた?」


「る、ルカ!!」


キラに蹴り飛ばされてから全く姿を見ていなかったルカがパジャマ姿で現れた。


「…なんでパジャマ?」


「気付いたらさ、特別授業終わってたし、医務室の先生にもう自由時間だから寝てて良いよって言われたから」


それで律儀にパジャマ着るか?というかパジャマ着て寝るタイプだったのか。


「じゃあずっと医務室に居たんだ」


「その通り」


枕片手にピースをするパジャマのルカ。こんなアホみたいなヤツだったか?腹蹴られて頭おかしくなった?


「うーし、お前さんら全員居るなー?」


「は!?!?3回目のコージロー・ムラサキ!!!」


ルーチェが興奮気味に反応する。

3回目って、目にする度数えるつもりかお前。


「ここからはリゾートホテル組と普通のホテル組と山の動物観察小屋組に別れてもらうぞー」


「…」


『え!!!??』


3種類の驚きの要素が詰まった声が生徒達から挙がる。


「なに驚いてんだ」 


「ちょ、マジだったの!?」


「マジに決まってんだろ」


島に着いたら『うそでしたーみんなの競争心を煽るためにいったことでーす!さぁみんな!リゾートに泊まるぞー!』ってなるかと思ってたのに!!


「あの!!!普通のホテルってなんですか!!!」


あ、ロドリゴだ。(No.21参照)

アイツもこの合宿来てたんだ。


「特別授業の時言ったろ?『最高ランクはリゾートホテル、最低ランクは山の動物観察小屋だ』って。つまり普通のランクもあるって事だろ」


『ええぇぇぇ…』


リゾートホテル組ではない生徒達からため息が漏れる。


「ちなみに、普通のホテル行きの生徒はポイントランキングトップ10以下、1ポイント以上を獲得しているヤツだ」


「海獣は倒したけど1匹くらいしか倒せなかったヤツは基本普通のホテルって事ね」


おいルーチェお前は補足するな。さっさとリゾートホテルに行け。


「…ん?」


1ポイント以下…???


「リゾートホテル組は保健医のプラトンのトコに着いて行けよー」


「おいで〜」


『はーい』


リゾートホテル組を睨みながら見送る。

ルーチェがそそくさと保健医の所へ走って行った。

キラが舌を出し、私に手を振りながら歩いて行く。


「ぐぬぬぬぬぬ」


怒りで身体が震える。


「じ、ジフ…!?大丈夫…!?」


待ってろよ、絶対ボコボコにしてやるからな、キラ・ユーキリス。


「そして、今から逆トップ10を発表する。そいつらが山の動物観察小屋組だから心して聞け」


バッ!!!


生徒達が皆一斉に祈り始める。もちろん私も。


「第1位!マイナス5ポイント!ジフ・レインバール!」


「はああああああ!!!??」


「良い返事だ」


「返事じゃねぇよボケぇ!!ほんでマイナスってなんだよ!!!理由を言え理由を!!!!」


「ずっとキラと戦って授業に参加していなかったから」


「そ!れ!は!私のせいじゃなくて!!」


「キラと半魚人(マーマン)が戦ってる時に割り込まず、他の魔獣倒しに行けば良かったろ」


「あ」


ま、マジか、全部見られてる…。


「海から落ちそうになるわデッキ周りボロボロにするわ、もう少し考えて動け」


「は、はい…」


「第2位!マイナス3ポイント!ルカ・ワンダーホーク!」


「はえ!?」


ルカが大きい声を出す。珍しい。


「特別授業中、9割寝て過ごすとは何事か」


「い、いや、半魚人に蹴られて、それで気絶して」


「目は覚めてたろ」


「え!?」


「げ」


「船酔いの影響もしてたんだろうが目を覚ましてから自分の意思でスヤスヤ寝てたろお前さんは」


「ルカ、あんた…」


「あは」


「第3位!マイナス2ポイント!リリア・スコープ!」





「リリア・スコープ」


「はいはいはい!!?」


コージローがリリアの頭を掴んで持ち上げる。


「海は嫌いかね」


「はい!!!」


ものすごいスピードで断言した。


「ずっと逃げていたな」


「魔獣コワクテ」


「でも本当は?」


「山に行きたくて!!」


「自ら山行きを選ぶな!!!」


す、凄い。

地面が好きってだけでリゾートホテルの可能性捨てられるのめちゃくちゃ凄い…。

もしかしてコイツ、カッコいいヤツなのでは??


「あとはプリントで各自見ろ!リーナ!紙配れ!!」


「はいはい」


リーナが魔法を使うと紙が生徒達の手元に飛んでくる。もう私は動物観察小屋行き確定だからな。

プリントを見ても全くテンションは上がらない。

一応、目は通してやるか。


「…えっとぉ?」



第4位、マイナス1ポイント、ヒバナ・アストロ(逃亡)


第5位、0ポイント、ジャム・ジョレンテ(戦闘放棄)


第6位、0ポイント、ライナ・リリイ(授業不参加)


第7位、0ポイント、ノエル・ダイヤモンド(食事優先)


第8位、0ポイント、イチロー・カトウ(戦闘不能)


第9位、該当無し。



8人を除いた生徒達が歓声を挙げる。


「あれ!?ロドリゴ!?あんたは!?」


「おれ、カニ倒して1ポイントは取ってる…」


な、なん…だと…!?

つまりクラスDの中で一番の落ちこぼれは私!?

ロドリゴより下!?ウソぉ!?


「って事で山組は俺に着いてこい。残りのヤツらはリーナに着いていけー?ひとまず、解散」


生徒達は港に8人だけを残し、ぞろぞろとリーナが居る場所へと移動する。


「まじなの?コージローまじなの??」


「諦めろジフ」


や、山…?リゾートホテルを目の前にして山…!?

動物観察小屋で宿泊…!?


「先生質問」


女の敵ことジャム・ジョレンテが手を挙げる。


「ポイントランキング、そして船内で言ったトップ3はリゾートホテル確定という言葉…これはつまり合宿期間内でランキング順位に変動があるって事で良いか?」


…ん?そんなこと言ってたか?

覚えてないや。


「良い質問だ。答えは『ある』。そしてそれが意味する事は…?」


パチンとコージローは指を鳴らす。

ランキングが変動する、という事は…。


「…山組からリゾートホテル組になれる!?」


「その通り。モチベーションになるだろ?」


おお〜、と少しテンションの低い歓声が挙がる。


「ただ、しばらくは山で過ごしてもらうぞー。せっかくランキングが出てリゾート行けたのにものの数時間で山行きだなんて不憫だろ。少なくとも今日1日はお前さんらは山だ」


『え〜』


ぐっ、今日は山から脱出出来ないのか…せめてその動物観察小屋が少し豪華な事を祈る。


「ジフさん!」


「リリアか…」


「山!!楽しみですね!」


それはお前だけだ。

私は一刻も早くリゾートホテルに行きたいよ。


とかなんとか言ったらまた色々うるさそうなので、


「…そうだな」


と答える。




──────────────




港から小さなバスで山の悪路を進む事30分。

高床式のそこそこ大きな小屋の前に着く。

動物観察小屋だからか、窓が無い。不安だ。

しかしこの大きさなら8人でも広々と使えそうだ。


「…てかなんで車?」


「リゾートで観光地だからな。トラブル防止、景観を損ねる、とかの理由で魔法で空を飛ぶ事は禁止されてんだ。だから基本移動は車だ。こういう所じゃないと中々乗る機会も無いからな。たまには良いだろ」


「いや、私は…ぼぇ、ぅぷ」


ルカがまた吐きそうになっている。

乗り物全般に弱いのか、箒では普通に飛べるのに。


「俺は車ん中で次の授業の準備してるから小屋でも見てこいよ」


車から生徒達がポイポイと降ろされる。

こいつホントに教師か??

もう少し案内とか説明とかあるだろ。


「…とりあえず、行くか」


「先行っててください!!!」


「だーめ」


興奮気味のリリアのリュックを掴む。

1人ずつ小屋の中へと入って行く。


整備は行き届いているのか、想像していた小屋よりかなり綺麗だ。トイレにも扉が付いている。良かった。

中は広々としていてベッドの間隔も長い。

空気も美味しく、緑が豊か。少しテンションが上がる。


「…風呂ないじゃん」


前言撤回、早くホテル組になりたい。



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