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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夢を追ったその後

作者: dook

親に借金があることを伝えた。

もう1千万以上肩代わりしてもらっているが、さらにもう200万の借金を肩代わりしてもらえることとなった。

私はなんと愚かなのだろう。

親への申し訳なさと感謝で死にたくなった。

しかし親は死ぬなと言う。

やはり仮にも子供である私のことを愛しているのだろう。

そして、私は200万を握り締め、なぜかカジノへ来ていた。

消費者金融先ではなく、カジノに、だ。

私は素直に返して、何度目かは分からない消費者金融の解約手続きをすれば良かったのだろうが、懲りもせずカジノへ来ていた。

そう、明日からポーカーの大型大会が始まるのだ。

この200万円があれば、参加費40万円のメインイベントにだって5回も出られる。

これは運命だと思った。

この大会で優勝すれば、これまでの親への借金を返せるだけでなく、余裕でお釣りが来てしばらく遊んで暮らせる。

親にだってお金をたくさんあげられて恩返しができる。

そうだ、これは決して自分のエゴだけではない。

親のためを思って出るのだ。

そして、私はエントリーした。

勿論、ここまで来る飛行機代やホテル代もそれなりにかかったので大会に使えるお金はせいぜい150万円程度である。

それでも十分だ。

そして始まった大会初日

もう後戻りはできない。

私は震える手でカウンターにお金を出し、エントリーを済ませ、席へとついた。

ファーストハンドは5ポケ。

まだ200bb近くある、ディープスタックでは悪くない手だ。

+1が2.5bbオープンし、私はcoからコールした。

するとsbが8bbの3betを打った。

しめた、と思った。

相手が上ポケで55のセットが刺されば全弾取れる!

bbフォールド、coはコールした。

当然私もコール。

フロップ ak5のレインボーボードだ。

私は思わず鼓動が早くなるのを感じた。

セットがもろ刺さりしていたからだ。

sbまでチェックで回り、sbは26bbのポットに対して13bbのベット。

+1コール、私はqjsやakに向けてレイズをするか少考したが、+1も巻き込みたいと思いコールした。

ターン 2h

しめた、ラグだ。

ハートのフラドロこそできたが、aがハートなためkqsなど、考えられるカードは少ない。

またしても+1までチェックで回り、sbは65bbのポットに60bbの大きめのベットをした。

+1フォールド、私はここでオールイン一択かと思いオールインをした。

するとsbスナコ

嫌な予感がした。

akakakak私は心の中で何度もそう唱えていると、出てきたのはkk

私は全身の血の気が引くのを感じた。

セットオーバーセットである。

私の勝率は2%

リバーは2cで捲れるはずもなく負けた。

だが、まだ90万円ある。

ここですぐリエントリーするか別のday1に出るか悩んでいたが、あまりにあっけない飛びに悔しさが募り結局すぐリエントリーした。

150bbある。

まだまだレベル2だ。

何も怖がることはない。

しかし、このあと56sやa7oといった微妙なハンドこそくるものの、3betを受けたり、ボードと絡まずレンジブラフをするもチェックレイズを食らったりしてポットを落としていた。

そしてレベル3 アベレージ110bbに対して私は60bbしかなかった。

ここはダブルアップせねば。

するとakoが来た。

最悪だと思った。

akは確かに強い、が、それはあくまでプリフロでの話、さらにこのスタックでは4betに対して降りられない。

そしてutgがオープンした。

嫌な予感がした。

この8人テーブルでのutg2.5bbオープン、強いことが多い。

coがコールし、btnの私は10bbに3betした。

utgは少し悩んでコール、coコール

33bbのポットである、ここでaやkが落ちれば降りられない…。

そう思っているとボードに出たのはa58のレインボーボード。

私までチェックで回ってきたので16bbのハーフを打った。

もうこの時点でオールインが来ても降りられない。

utg、coともにコール。

ターンはkd

私までチェックできて、ポットは81bbでスタックは38bbしかなかったためオールインした。

するとutgコール、coオールイン、utgスナコ。

もうこの動きで勝ってることはないなと思いながらハンドを開くと、utgaa、co88。

私はドローイングデッドだった。

aaは正直想定外だった。

コール止めもあまり考えられなかったし、何よりaを2枚ブロックしているからだ。

しかしこういうようなことは往々にしてある。

まあポーカーを一ヶ月もしていたら1回くらいはあるのだ。

こうしてあっという間に80万円を溶かした私は50万円を手にどうしようか迷っていた。

選択肢は3つあると思った。

1.メインイベントリエントリーする。

2.帰って50万円だけでも消費者金融に返す。

3.他のトナメに出る。

私は何かメインイベントに呪いのようなものを感じ、3の他のトナメに出ることにした。

25万円mysterybounty

確かにバウンティは分散がでかい、ミステリーとなると余計にである。

しかし、やはり好きなものは仕方ない。

楽しいし、それに慣れているから自信もあった。

だが、まず1回目はレベル5でakとjjのフリップとなり引けずに負けた。

そしてそのままリエントリー。

60bbだった。

もう後がない。

ここで敗退したら、負けである。

マネープレッシャーに押しつぶされそうになりながら、ハンドを見るとそこにはaa。

私は高鳴る鼓動を抑えながら+1の2.5bbオープンに対して3betの準備をしているとhjが7.5bbの3betをした

きた!!!

叫びそうになるのを抑えながらsbから21bbの4betをすると、驚くべきことに+1はオールイン、さらにhjもオールインした。

当然降りるはずもなくオールインするとaa,kk,jjが出てきた。

勝率は一番高い、頼むぞ。

そう願っているとフロップ24qターン2リバーk

k

k

私は吐きそうになった。

震えながらナイスハンドと言いその場を後にした。


頭がクラクラしていた。

インマネすらできず、mysterybountyすら発生せず終わったのだから。

よくポーカーの分散を考えてバンクロールの1%までのトナメに出ろとは言うが、だとするならば私は2万円程度のトナメに出ていれば良かったのだろうか。

もう何も分からなくなった。

残った数千円をスロットで適当に擦って、カジノを後にした。

残ったのは200万円の借金のみだった。

しかも200万円肩代わりしてもらった直後である、もう200万円、肩代わりしてくれなんてとても言えない

第一、仮に貸してくれたとしてもまたすぐにギャンブルに手を出してしまう気しかしない。

200万円とは言え月々の返済は7万円程度である。

とはいえ私は学生の身分、まだ仮にバイトをしていたならば、ギリギリ返せただろう。

だが、今は卒論直前でとても時給千円程度のバイトで毎月7万円返すのは時間的に不可能である。

実は時給3千円のバイトがあったのだが、先ほどクビの連絡が来た。

なんというタイミングだろうか。

これは神が下した天罰なのだろうと思った。

そして、神は私のことがよほど嫌いなのだと悟った。

やはり神は私が死ぬように仕向けているとしか思えなかった。

そんなこと思いながら、ぼーっと「お金 借り方」「100万円 作り方」みたいな馬鹿みたいなことを検索していた。

すると、「ソフト闇金」を名乗る業者が広告で引っかかった。

もう私はどこでもいい、借りられるところから借りるしかなかった。

そこで私は収入証明を求められた。

困った。私はつい先日バイトをクビになったばかりなのだ。そう、私は無職なのだ。時給が良かっただけに悲しかった。少し自分語りをさせていただくと、私は本当は親からの肩代わりではなく自分で返済しようとしていたのだ。本当だ。そんなことを思っていた日、いきなり解雇通知がメールで届き、親に泣きついたのだった。

しかし、先月までは働いていたのでとりあえずそれを提出した。すると、なんと審査に通ったのだ。私は無我夢中で何社もの闇金業社に電話をしまくって、気づくと手元には200万円があった。しかし私は先程の度重なる不運に恐れ慄いたのかトーナメントには出る気になれなかった。そこで私はキャッシュゲームに座ることにした。しかし、1/2なんかを打っていてはとてもこの200万円を400万円にはできない。そこで私は10/20に座ることにした。ハイレートということで少しびくついていたが、1万6千ドル、800bbある

しばらくハンドが来ないなと思っていると、aaが来た。私は当然3betした。すると相手は4betオールインを返してきた。私はスナップでコールすると出てきたのはjj

私は思わず「そんなハンドでオールインするやつがあるか!」と叫びそうになったが大声を出してフィッシュを逃しては元も子もない。

私はニヤニヤしながらフロップを待つと、フロップにjがあった。aは当然のようになかった。私は思わずテーブルを叩きつけていた。叫ばなかっただけマシだと思って欲しい。ディーラーから軽い注意を受けると、そのままターン、リバーと出てaは落ちず負けた。もう何が出たかなんて覚えてないけど、ともかく負けた。120bbが、2400ドルが一瞬にして失われた。日本円にして36万円が、である。

流石に私はティルトしていた。

36万円が、aaが、jjなんかに負けて失われたなんて正気の沙汰ではいられないだろう。

そして、しばらく鼻息を荒くしていると、今度はkqsが来た。coから3betが来たのでとりあえずコール留めした。

フロップはjt8レインボー

悪くない、そう思ってチェックするといきなりポットの何倍かもわからないオールインが来た。

は?

意味がわからない、が、私は反射的にコールしていた。

出てきたのはqq

そして、私はkもストレートも引けず、負けた。

私はカモにされていた。完全に舐められていた。そうでなければあんなプレイは出てこない。

私は、また36万円、合計で72万円負けたこと以上に、舐められている事実に腹が立ちまたリバイした。

今度はttが来た。3betしたらコールされた。

フロップは8h6h6d

するとドンクオールインが来た。

またか!?

私は流石に少し考えた。

しかし3betコーラーに6はあまりないのではないか?あるとしてa6sくらいか?88?しかしそれもコンボ数としては少ない。

99,77,44,33,22あたりだろうか?もしかしたらaq,ajもいるかもしれない。

勝ってるコンボ数が多すぎる。私はチップを前に出すと出てきたのはkkだった。

意味がわからなかった。

そしてそのままtを引けるはずもなく、負けた。

これで360bb、108万円負け

残り92万円

そのあとはボロボロだった

一時期200bbほどに増やしたスタックもみるみるうちに崩れ、気づくとa4sでaj76ボードにオールインしてaqにコールされるなど、もうとにかくボロボロだった。

いや、gto的にそこまで間違ったプレイをしているとは思えない。ただ、私は、"搾取"され続けた。

気づくと残りの92万円も溶け、残ったのは200万円、いや、400万円の借金だけだった。

200万円の借金も、バイトをクビになった今では返せるかわからないのに、さらにもう200万円、さらにヤバい所から借りてしまった。

しかも見て見ぬ振りもしていたが、闇金は貸す時に手数料や利息分を先に引いて渡す、つまり闇金の実質の借金は300万かそれ以上、しかも違法な金利で貸してる以上、すぐに返さなければ利子すら返せなくなる…。

私は、死ぬことを本気で考えた。

よく「お金じゃ買えない大切なもの」とかなんとか寒い歌の歌詞にあるが、今の世の中でお金で買えないものはないと思う。売春やパパ活やホスト、風俗などが蔓延しており、"愛"ですら買えるような世の中だ、他に買えないものなんてあるか?

逆を言えば、"金は人を殺す"のだ。

かつてないほどお金が力を持った今、金がなければ生きていけない上、友人や家族といった関係すらも希薄なこの世の中、金がなければ明日を生きることすら許されないのだ。ましてや借金まみれの人間が、どうやって明日を生きよう?仮に今から死ぬほど働いたとして、きっと利息すら払えず、明日食べるご飯すらままならないだろう。

だからと言って親に泣きつくか?たった数日前に200万円も借りておいて、400万円さらに貸してくれと頼めるか?

そもそもそんな金が実家にあるのか?

なかったとして、私はどうなるのだ?

もし仮に私の容姿が整っていれば、風俗やらホストやら、金を稼ぐ手段はいくらでもあったのかもしれない。なんで妄想をして現実逃避してみる。

彼ら、彼女らの苦悩を知らずにこんな無責任な物言いをしている時点で、やはり私はそらにすらなれないのだろうな、仮に顔が整っていたとしても。そもそも顔が整うような努力をしなかったのは自分自身ではないか。それに、仮に顔が整っていて、水商売の努力もできたとして、金が入ったとして、それをそのまま借金返済に投じられる自信もない。きっと入った金をそのままカジノに横流しするだけだろうな。

そんな自己嫌悪をしたところで何一つ得なんてないのに、都合の良い妄想すらできない自分に少し嫌気がさした。

よく、"分相応"という言葉がある。これは一体なんなのだ。私が数千ドルのトナメに出るのが、10/20に座るのが、大金を夢見るのがそんなに不相応なのだろうか。

血の滲むような努力も、汗もかかずに、夢見ることがそんなにいけないことなのか。

神に問う。"貪欲"はそんなに大罪なのですか。

しかし、それを罪としてしまえは誰も何一つ努力のできない社会が出来上がるだろう。

例えば会社一つとっても、この社会を良くしたいだとか大金が欲しいとか色んな野望を抱いて、上昇志向を持った人間が努力して起業したからできたのだろう。

上昇志向が、より良い生活を求めることが、より良い社会を求めることが、己の生活一つを良くしようと思うことが、そんなに悪なのか?

それらの源泉は、"貪欲"なんじゃないのかい?

ギャンブルしている時、誰だって神に本気で祈ったり、髪を本気で恨んだり、神に本気で感謝したりするものだ。しかし、私は負けた時こそ、神に本気で対峙するべき時だと思う。

少なくとも私はこうやって大負けした時、ずっと神のことを考える。

まあ、流石に今日ほど負けたことはないが。

神に問いたい。そんなに私のことが嫌いなのか?そんなに私が憎くてたまらないのか?

なあ。どうしてjjを勝たせたんだ?

なあ。どうしてjt8なんてボードを出したんだ?

なあ。どうして俺は、生まれてきたんだ?

苦しんで、自殺するためか?

だとするならば、生まれてこない方がずっとマシだったよ。

せめて、生まれてきたとして、ギャンブルなんて、出会わなければよかった。

なあ。生きるって、そんな大罪なのか?

その日の夜、家から持ってきた眠剤をodして夢の中に神が現れた。神は滑稽なアニメキャラクターの姿をしていた。

「神様、私の犯した罪なんなんですか?せめてそれだけでも教えてください。」

「お主自身わかっておるじゃろ。」

「バンクロール管理ができなかったことですか。」

「そうじゃな。」

「もっと言えば、"ギャンブルしたこと"ですか。」

「そうじゃ。」

そうして神は消え、目が覚めた。

「odじゃ死ねない、か…。」

「ギャンブルしたこと、それ自体が罪、か…。」

私は分かりきったこと、知っていたことを改めて再確認した。

「とは言っても、もう全て遅すぎるな…。」

時計を見ると18時を過ぎていた。

私はこれからどうしようか考えていた。いや、死ぬこと以外何もできることはないのだが…。

しかし、私は今更になって死ぬことを恐れていた。いや、それどころか恐ろしいことに、頭の中は99%をギャンブルが占めていた。

「こんなんになってもギャンブルがしたくてたまらないなんて、な…。」

私は一発逆転とか、取り戻すとか、そういうこと以前にもう"ギャンブルしている時の快楽"そのことしか頭になかったのだ。

とはいえもう金も、借りる先も、ない。

自己嫌悪が凄かったが、それ以上にギャンブルしたい欲求に苛まれた。

「ホント、何してんだろ…。」

乾いた笑いしか出なかった。

笑えばこの苦しみから解放されるわけでも、借金が減るわけでもないのに、乾いた笑いが止まらなかった。

空港に着き、帰りの電車賃がなかったので友人に3千円借りた。

400万円失った男が、3千円借りるのに少し躊躇したのは笑えるな、と我ながら思った。

プライドが高いから友人にお金を借りるのが許せなかったのだろう。

私はやることがないのでこうやって、あったことをとりあえず文字に起こしてみた。

我ながら酷いな、と思う。

しかし、こうやって文字に起こして他人に見てもらうのが何よりの慰めになると思った。

それにこうやってギャンブル依存症への啓蒙活動することが、ちょっとした神への反抗になると思ったからだ。

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