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episode2-51 勝利の宴

 あの後、有栖先生の言う通り生徒会室に集まった俺たちは、何が起きていたのかをそれぞれの視点から共有し合い、今回の事件についてようやく全貌が明らかとなった。

 生徒会室に集まったのは、舞締会長、彦根副会長、坂島会計、朱鷺戸書記、黒石庶務の生徒会役員+有栖先生。

 それから俺と樹霧、古條、如月の四人+美月。

 最後に加賀美と八木橋の二人だ。


 全員の話をかいつまんでまとめるとこういうことになる。


 ①一年半ほど前、当時はまだ庶務だった舞締会長はインポスターという悪の組織に誘拐され、研究所らしき場所に監禁された。このインポスターは加賀美と八木橋をマスカレイドに改造した組織でもある。

 ②会長は改造される前に魔法少女に選ばれ、力づくで研究所を脱出。その時同じように誘拐されたと思わしき少女を助ける。これが黒石だ。

 ③無事異能庁の保護を受け、色々な検査や取り調べの結果、黒石がインポスターの造り出した怪人であることが判明する。

 ④さらに会長の情報によってインポスターの秘密研究所が発見され、異能庁による制圧が完了し、残された資料や研究データから黒石が普通のマスカレイドとは異なる、組織にとって切り札と呼べるような重要な存在であることがわかる。

 ⑤異能庁上層部でどのような話し合いが行われたかまでは会長も把握していなかったが、最終的に黒石の存在を餌としてインポスターの残党を誘き出し捕縛又は討伐する作戦が立てられ、その舞台として元々会長が通っていた咲良第二高校が選ばれる。また、監視役として異能庁から職員が一人派遣され教師に扮する。これは有栖先生のことのようだ。

 ⑥選挙戦で勝利した会長がこの計画のためのメンバーを選出して、現生徒会を発足。その時に役員全員に事情は説明済らしい。

 ⑦インポスターの残党は少数であり、派手に襲い掛かって来るのではなく校内に潜んで近づいて来る可能性が高いと予想されたため、ホルダー狩りを行い定期的に異能のお披露目会を行うことで、派手な動きが出来ないよう牽制しつつ炙り出しを行う。マスカレイドは異能の発動がわかりやすく見ればわかるからお披露目会を開いていたということのようだ。当然学校側にも事情が説明されているため、あの暴力的な勧誘が看過されていたわけだ。

 ⑧俺たちが喧嘩を売って来たのを利用して黒石を孤立させ、インポスターの残党を釣りだそうとする。ホルダー狩りもかなり佳境を迎えていて、もし潜伏している者がいるならそろそろ焦って動き出すだろうと読んでの作戦だったらしい。

 ⑨インポスターの残党、すなわちマスカレイド・キメラを釣りだすことには成功するが、まさかの生徒会役員全滅で大ピンチ。黒石は黒石でなぜか八木橋が変身した途端正気を失い、キメラの命令に忠実な戦闘マシーンへと変貌。

 ⑩如月と加賀美が参戦して優勢になるかと思いきや、ブレイクを発動した黒石が暴走を開始。キメラを食ったかと思えば逆にキメラに乗っ取られ、加賀美たちを襲い始める。ちなみに八木橋は神経系の麻痺毒で行動不能になっていただけだったらしく、命に別状はなかったようだ。

 ⑪会長に頼まれたとか、騒ぎを聞きつけたとか理由はそれぞれだが、俺や樹霧、古條が参戦。この時美月は自分のスマホと古條のスマホを通話状態にして、身を潜めながら様子を見ていたらしい。

 ⑫魔力が尽きている中、会長が力を振り絞って旧校舎裏まで駆け付けると、予定にない黒石の暴走で状況は混沌と化しており、しかもなぜかインポスター壊滅の立役者である加賀美と八木橋が戦っているという何もかもが予定外の状況。今回の作戦について、異能庁は加賀美たちを巻き込まないと決めていたらしく、だから因縁の組織であるにもかかわらず加賀美たちは何も知らなかった。逆に生徒会側は加賀美たちの事情を知っており、ホルダー狩りの対象から外していたとのこと。正直、巻き込まないつもりならそもそも別の高校でやれと思わなくもないが、偶々会長と加賀美たちの通っている学校が同じだったためにこんな中途半端な対応になってしまったらしい。

 ⑬万が一予定外のハプニングが起こった場合、生徒会は有栖先生をアテにしていたそうだが、影も形もなくてそれはもう焦ったそうだ。有栖先生は異能によって作り出された分身で常に黒石のことを監視していたとのことだが、もしもの場合の予備戦力であるため本当に逆境と呼べる時まで動けなかったらしい。

 ⑭美月が参戦し、明の異能、不可視の鬩ぎ合いボーダーオブインビジブルを発動して黒石とキメラの攻防に干渉。なんでも朱鷺戸書記と古條の戦いに助太刀したらしく、そのまま流れでキメラ戦にもついて来たらしい。やけに詳しく事態を把握していたのは、古條のスマホを通話状態にして話を聞いていたからだそうだ。

 ⑮そして事態が収束し、今に至る。



 途中までは計画通り進んでいたみたいだが、⑧あたりから段々おかしな方向に進んで行ったみたいだな。

 こうしてまとめてみると、カオスというかなんというか……。


「あの、もしかして私たち余計なことして状況をややこしくしてたんじゃ……?」


 これまでの経緯について説明や情報共有が終わった後、偶然居合わせただけの俺たちは早々に解放されることとなった。

 黒石の力を利用すればマスカレイドから人間に戻れると判明したわけだが、加賀美と八木橋は人間に戻るのか、そして黒石の処遇はどうなるのか。この辺の話は気にならないと言えば嘘になるが、部外者である俺たちは関係ないということで帰されてしまったわけだ。


 華々しい勝利を飾ったというのにそのまま解散というのも味気ないため、VS生徒会、および、VSインポスターの祝勝会として俺たちは焼肉屋にやって来ていた。普通の学生なら躊躇うようなちょっと良いお値段の店だが、俺には腐るほど金がある。こういう時に使わずしていつ使うというのか。


 各々好きなように注文した後、肉を待っている間に古條がおずおずとそんなことを言いだしたのだった。


「結果オーライだろ。先生も生徒会の連中も別にそのこと自体は文句つけてこなかったし、全部丸く収まったんだから言いっこなしだ」


 模造聖剣を破壊されて異能を失ったらしい朱鷺戸や、坂島賭博場を破壊されたことでこれまで奪ってきた権利を全て喪失したらしい坂島が小言を言っていたが、それは俺たちが介入したことそのものに対する文句ではなかった。


「樹霧たちに負けるようじゃ、生徒会がインポスターに勝てたかもわかりませんしね!」

「箸を置け箸を。行儀悪いぞ」


 待ちきれないというように箸を握りしめている樹霧が、楽しそうに目を輝かせて言う。


「それに不可視の鬩ぎ合いボーダーオブインビジブルがなかったら、最後もどうなってたかわからないもんね」

「……まあ、そうだな」


 当たり前のようについて来ている美月がアピールするように俺を見ながら言った。

 恐らく生徒会や有栖先生は、美月のことを俺たちのグループに属しているホルダーだと判断していたと思われる。キメラに乗っ取られた黒石を足止めしていたのも当然評価されてるだろうが、一番重要な働きをしたのが美月であることは認めざるを得ない。だからこそ、俺たちが余計なちょっかいをかけたことを蒸し返したりしなかったのだろう。


「だからそんなに気にしなくて大丈夫だよ、古條さん」

「ありがとうございます、そう言って貰えると気が楽になります……」


 生徒会室で各自の状況を説明しあった際に聞いた話だが、古條は朱鷺戸を気絶させるところまで追い込むことは出来たらしいが、実はG1レプリカ持ちだった朱鷺戸が強制執行モードに突入し、にっちもさっちもいかなくなっていたところを美月に助けられたらしい。

 だからか他のメンツに比べて明らかに親し気であり、普段の引っ込み思案で人見知りな美月からは考えられないほど自然と話すことが出来ている。


 美月には聞きたいことも言いたいこともあるが、折角の祝勝会で説教するのも興醒めだ。話をしてる間に肉も運ばれて来たことだし、今日のところは勘弁しておいてやろう。


「ま、色々あったがよくやったお前ら! つまんねえことは脇に置いといて、今日の勝利を祝おうじゃねえか! ここは俺の奢りだから好きなだけ食え!」

「ヒュー! 流石です氷室くん! いただきまーす!」

「見直したよ氷室。あんた意外に気が利くじゃん。ありがとね」

「ありがたくいただきます凪様!」

「御馳走になります、凪兄さん」


 全員手を合わせ、いただきますをした後それぞれ肉を焼き始める。


「しっかし樹霧、お前はもう少し手加減してやれなかったのか? 副会長の背中ひどいことになってたぞ」

「あれでもちゃんと加減しましたよ? 実際悪魔の治癒力で自然回復するレベルだったから最後生徒会室に集まれてたわけですし」

「姫路さんのコピーはいくつまでストックしておけるんですか?」

「たしか10個くらいだったかな? 最大までは埋めてないから曖昧だけど……」

「にしても姫路ちゃんはほんとに氷室の妹みたいだねー。血は繋がってないんでしょ?」

「はい。特異変性は縁の強い相手の影響を受けるって話も聞くので、だからかなと」

「へぇ~。じゃあ氷室があんなに必死になってたのはやっぱ姫路ちゃんのためなんだね」

「つまんねえ話してんじゃねえよ」

「あー! それあたしが育ててたお肉なんだけどぉ!?」

「他人の育てた肉はうんめぇなー」

「まーまーりりちゃん、どうせ氷室くんの奢りなんですから追加で頼めば良いじゃないですか」

「凪様、私の育てたお肉も献上します。どうぞ」

「いや、お前は自分で食えよ。ただでさえチビなんだから食わなきゃ大きくなれないぞ」

「はん、一番のチビが何言ってんだか!」

「うちの凪兄さんがすみません如月先輩。私の分を食べて良いので怒らないであげてください」

「姫路ちゃんが気にするようなことじゃないって!」

「たしかにスライム筋肉使うにしても自前の身体が強くてデカイに越したことはねえよなぁ」

「!? ダメです凪様! 凪様は可憐で可愛い凪様のままでいてください!」

「おーいーしーいー! 美味しいです! 美味しいですっ! こんなに美味しいお肉は初めてです!!」


 そうして出禁にならない程度のバカ騒ぎは夜まで続くのであった。

二章本編終了です

明日からは閑話をいくつか更新します


凪くんちゃんのイメージイラストを描いて貰ったので、見てあげても良いよという方は以下からどうぞ

https://x.com/penguin_frame/status/1867905849299173381

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― 新着の感想 ―
そりゃ自分達の都合で一般生徒巻き込んで勝手な事してる政府機関と学校と生徒会に文句つけられる謂れは無いわ 同じ学校でやるのを避けられないなら加賀美八木橋には説明はしとけよ
インポスターという名前があまりにもアレな感じな気がしてちょっとネットさまに尋ねてみたら、ちゃんとした言葉なのね。でも、インポスター症候群は、自分の達成を内面的に肯定できず………、とかあって、何か似合わ…
イラスト可愛いです! 第二章も楽しく読ませていただきました
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