☆彡静寂の夜空
薄暗い海を抜けると、あなたの乗ったバスの目の前に、大きなおおきな月が、夜を煌々と照らしていた。
バスの周りを飛び散る水飛沫が、月明かりを受けてきらきらと宝石のように煌めく。
バスはまるで普通の道を走るかのように、ガタガタと揺れながら夜空を昇っていく。
バスは、夜を昇っていく。
『夜の澄んだ空気に触れると尚、こころと身体が癒されます。窓を幾つか開けさせていただきます。寒くなったら仰ってください』
運転手がそう言うと、あなたの隣の窓と幾つかの窓が、からりからりと…ゆっくりと、自動で開いた。
満月を横目に、ゆっくりとバスは夜を昇っていく。
…本当に、静かで。
日々、時間や喧騒に振り回されて、なかなか落ち着くことができない、こころと身体。それらが、ゆっくり…ゆっくり…と、夜の澄んだ空気と少し冷たい夜風に溶けていく。
あなたの疲れたこころと身体が…ゆっくりと癒されてゆくでしょう。
やさしくてあたたかな月明かり。
ゆりかごのように揺れるバス。
窓から入ってくる心地よい夜風が、あなたの頬をやさしく撫でる。
あなたはきっと、ふわふわと眠くなってくるでしょう。
ふわふわ。
ふわふわ…
夢と現実の間。
今、この夜のバスに乗っている刹那は、現実でしょうか?それとも─────……?
あなたが、ふわふわとした眠気に揺られてると。バスは満月を横目に、ぽふんっと、雲にもぐり込んだ。
ふわふわとした雲の中を、バスは走り進める。
そして─────
ぽふんっ!
雲を抜けるとそこは、ちいさな粒がきらきらと夜空に散りばめられていた。
『次は終点【七色の星屑の橋】です』
運転手のやさしい声が、そう言った。