☆彡森の奥の秘密のバス停へようこそ
それは、満月の夜。
とある森の奥の奥。月明かりも届かない闇の中を、蛍の淡い緑がまるでその場所へと導くように、森の中を飛び交い照らす。
あなたは蛍の淡い緑を辿るように、森の奥へ奥へと行く。すると、少しだけ開けた場所に辿り着く。あなたはそのまん中で、刻が来るのを待つ。
冷気が漂う、深夜。
刻が零時を知らせる10分前。
にょきにょきぽこんっ!
と、地面から、背の高いキノコと小さめのキノコが生える。
背の高いキノコはまるで、バスの停留所のようになり、小さめのキノコは、まるでイスのようになる。
小さめのキノコに座る。キノコの傘の部分が、ふわっふわで気持ちいい。
あなたは小さめのキノコに座り、バスを待つ。
満月の零時にしか現れないバスを─夜を旅する秘密のバスを、待つ。
まっくらな深いふかい森の中。ほわほわとした蛍の淡い緑が、闇をやさしく照らす。澄んだ森の空気が、呼吸をする度、あなたの体内を浄化する。
ふわり…と、ほんのりと冷たい風が、あなたの頬をくすぐる。
あなたがキノコのイスに座り、バスを待っていると。
ガタンッ!ゴトトッ!!
タイヤの音が森の奥から聴こえ、闇の中からピカッとしたライトがあなたを照らした。
ガタガタとタイヤの音を鳴らし、闇の中から現れたのは、町中でよく見かけるようなバス。
バスは背の高いキノコの傍に停まると、プシューッと音を立ててドアを開けた。
『お待たせしました、夜を旅するバスです』
あなたがバスに乗ると「こんばんは」と運転手は言い、にこっと微笑む。やさしい笑顔をした、おじさんだ。
運転手とあなた以外は誰もいないバス。あなたは好きな席に腰を下ろす。
そして。
『出発します』
運転手がそう言うと、バスは森の中を走りはじめた。