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013 VSサーヤ(縛りプレイ)


「そろそろ約束の時間だな……」


不動産管理会社でサーヤと賃貸契約を結んでから既に4日が経過した。


約束の時間、いや、復讐の時間が迫っていた。


「お久しぶりです〜お時間大丈夫ですか?」


「おぉ、お待ちしておりました。どうぞこちらに」


きれいな制服に身を包んだサーヤが姿を現した。


部屋に差し込んだ光が彼女のサラサラの金髪を輝かせる。


「商売の方はうまくいってますか?」


彼女が目をキラキラさせながら、指でコインの形を作る。


「おかげさまで。鍛冶の方はうまくいってないのですが、別でいくらか儲けることができました」


「そうですか、別口がうまくいったのはよかったですね」


あきらかに使われていない鍛冶道具が後ろに転がっている。


サーヤはそちらにちらりと目をやっていた。


「パフェっ娘の方々がいらっしゃるのが来週なので、契約することができれば鍛冶の方もうまく進めていけるかもしれません」


「パフェっ娘の方々とのご契約は大チャンスですからね。拠点で商売するのでしたら逃す手はないでしょう」


彼女の言うことをどれだけあてにしていいかわからないが、パフェっ娘との契約というのはやはり大チャンスらしい。


フトシも同じことを言っていたし、まったくの筋違いということではないのだろう。


「それではレーヤ様は契約の更新をご希望ということでよろしいでしょうか?」


「はい、是非お願いします」


「今までのお試しプランと違いまして、今からご説明致します契約は、月単位のご契約になります」


「月額が60万Gとなりますが、こちらお支払可能でしょうか?」


俺は手持ちの金額を確認した。この女……手持ち全額、当然のように指定して来やがる……


「おお……それなら手持ちがちょうど」


しかし、正直ここまでは予想通り。


彼女は完全に俺をカモと見ている。


「実はご契約の際に、3ヶ月分の家賃を一括で頂いておりまして……」


「そうでしたか……」


サーヤは少し申し訳なさそうな顔をした。


「現在のレーヤ様の手持ちですと本来はご契約して頂くことができないのですが......足りない分の家賃を弊社から借り入れ頂くことが可能です。借り入れ頂けましたら、引き続き拠点をご利用いただけます。いかがでしょうか?」


「それはありがたいです!」


「それではこちらの契約書にサインをお願い致します」


彼女が書類にサラサラと書き込んでいる。その後渡された契約書を確認する。


表面には大きく借り入れ金額120万Gの記載。金利については裏面に記載との文言が非常に小さく書かれていた。


裏返すと、さらに小さい字で金利についての説明が記載されていた。


……


要約すると金利は10日で20%......しかも複利だと……


「ご安心ください。初回の請求のみ今させていただきますが、2ヶ月分の家賃は契約満了時のお支払いで大丈夫です」


俺の動揺が顔に出ていたのか、彼女が恒例の天使のほほえみを浮かべながら補足した。


サーヤは法外な金利で請求を水増しするつもりのようだ。


10日で20%の金利が3ヶ月かかると、返済金額は120万Gから600万Gほどにまで膨れ上がる。


まぁ相手がぼったくってくると分かっていたらこんなものには引っかかりはしない。


最初の頃とは違い、この世界についてもある程度の情報は得た。


叩きのめすための準備も十分にしてある。


俺は反撃を開始することにした。


まずは金利の話から。


「こちらの金利は……少々お高いんですね?一般的な数字なのでしょうか?」


俺は彼女の顔色を伺う。一瞬笑顔が硬直したような気がしたが、彼女の微笑は崩れなかった。


「そうですか?」


彼女は契約用紙を手に取り、確認した。焦った顔をしてこちらを見る。


「も、申し訳ございません!手違いで間違った契約用紙を使用しておりました!」


先程作った契約書なのだが、金利を誤って記載しまっていたと彼女は説明した。


「大変申し訳ございません。こちらが正しい契約書になります」


彼女が再び差し出した契約書には年間で20%の金利というように差し替えられていた。


先程のものだと、年利に換算したら70000%を超えるのだから、数千倍というレベルのミスということになる。


まぁ彼女は金利については「誤っていた」というふうに説明した。


こちらがこれ以上追求しても突っぱねるつもりだろう。


「そうですか〜いやぁよかったです。安心しました。」


今ので少し警戒されたかも知れないが、彼女、とことん俺からむしり取る気だったな……


どこのゲームに初心者から金利含めて660万G......、66万円もぼったくるNPCがいるだろうか?


こいつはこの世界の平和のためにも一度ギャフンと言わせなければならない。


俺は再度心に誓った。


俺はペンを持ち、サインをする寸前まで手を動かす。


「あ、家賃の方は間違いないですよね?なんだか心配になってきました」


契約寸前に手を止めてサーヤを焦らしてみる。彼女は顔色ひとつ変えなかった。


「ご安心ください。間違いありません」


「そうですか。ありがとうございます」


俺はそう言ってサインするような素振りを見せて、再び手を止めた。


「いいですか?サインしても?」


「大丈夫ですよ。どうぞサインなさってください」


確認は十分にした。彼女が確信犯であると断定するにはもう十分だろう。


「そういえばですね。隣の拠点のオーナーに聞いたんですが、彼は家賃が月に4万Gらしいんです。どういうことだと思います?」


サーヤは眉一つ動かさない。


「どうでしょうか。その方と面識がございませんのでなんとも言えませんが、勘違いか、それとも特殊なコネがあるということなのではないでしょうか」


「コネですか。それは思い浮かばなかった。ちなみにここらへんの家賃の相場っていくらくらいですかね?」


「どうでしょう。このあたりの物件は取り扱いがそれほど多くないのですが、60から80万といったところなのではないでしょうか」


「そうですか……」


俺は周辺の家賃相場が著しく低いということは知っている。


彼女は完全にしらを切ることにしたようだ。


俺は丁寧に反論していく。


「一昔前はそれくらいだったそうですね。5年前ワープが開発されるまでは」


俺はサーヤの顔を見ながら話す。少し動揺しているか?


「王都から周辺都市、あるいは農村への直通のワープゲートが整備されだして、王都周辺の地価が暴落したとか」


「安価なワープゲートを利用すれば、周辺都市に出向いて低価格な物資が購入できる……」


「王都のテナントにとって大口顧客だった貴族も周辺都市まで出かけるようになり、王都周辺のテナントは軒並み赤字撤退したとか」


「入居者がいなくなった王都の不動産価格は大幅に下落、賃料も同様に下落したと」


それはもう家賃の桁が一桁削れるほどの下落幅だったそうですね、とサーヤの顔を見ながら俺は言った。


「サーヤさん、周辺の賃料相場は提示された60万Gよりもかなり安いのではないでしょうか?」


「……」


彼女は静かにこちらを見ていた。深い溜め息をついてから口を開く。


「お客様のおっしゃるように......相場自体は確かに低いかもしれません。また、低い家賃で拠点を利用している方々がいらっしゃるというのも事実かもしれません」


「しかし弊社としてはこの価格でのご提供とさせて頂きます」


「そ、そうですか……」


まったく動揺しないサーヤを見て、逆に俺が動揺してしまっている。


メ、メンタル強いよこの人……


「ワープゲートで移動が可能とはいえ、王都という最も利便性が高い地域のテナントに、空きがちらほらあるのはどうしてだと思います?」


追い詰めるどころか、逆に質問で返される。


「……相場をはるかに上回る価格を提示されても、プレイヤーが入居するからでしょうか?」


「そうです。今はパフェっ娘さん達が王都にいらっしゃる直前の時期、プレイヤーの方のテナント需要も最盛期です」


彼女は家賃が相場よりも割高であるという事実は交渉材料にならないと暗に言っている。


お前が入居しなくても入居者はいくらでも見つけられるという顔でこちらを見ていた。


ぴ、ぴえん……


公開情報でのぎゃふんは失敗してしまった。


ここまでの情報は、どのプレイヤーでも比較的簡単に手に入れられる情報だ。


多くのプレイヤーも同じように彼女を糾弾し、そして失敗したのだろう。


いちいち手慣れているサーヤの対応もその証左だ。


多くのプレイヤーが彼女に苦渋を飲まされて来たことだろう......


しかし大丈夫だ......サーヤにぼったくられた数多のプレイヤー達よ、安心してくれ......


俺はまだ、本気を出していないぞ!


俺は、〈表計算ソフト〉......情報収集において最強であろうチートスキルを持っているのだ!


ククク......この娘は追い詰められた時にどんな顔をしてくれるのかな?


俺は事前にスキルで入手しておいた裏情報で、サーヤを攻めていくことにした。

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