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新しい屋敷と庭ダンジョン

 現れた白髪の男。眼帯をつけ、顔に傷が多い。まるで歴戦の戦士のような渋い顔立ち。なんだこの人……格好からして執事っぽいけど。



「ヘンリー様とヨーク様ですね」

「あ、ああ……僕とヨークを知っているのか?」


「ええ。ネヴィル様より仰せつかっておりますゆえ。……おっと、申し遅れました。私の名はエドワード。この屋敷の執事でございます」



 これまた渋い声で自己紹介するエドワード。カッコいい人だな。



「エドワードさん、僕はこの屋敷をそのネヴィルから買い取ったんだ」

「承知しております。では、屋敷内をご案内いたしましょう。こちらへ」



 丁寧に案内され、屋敷へ入っていく。ヨークは少し怯えて、俺の服を摘まむ。まさか、まだ幽霊屋敷と認識しているのか。そんなに怖がらなくても……とは、思ったけど廊下は薄暗く、蝋燭(ろうそく)が立ち並んでいた。


 なんだか寂しささえ覚えた。

 どうなっているんだ、この屋敷。



 広間に通されると、そこには椅子に座る少女がいた。



「ようこそ、噂の方達ですね」



 少女は笑った。

 けれど、(まぶた)を閉じたままだ。まるでその機能を失っているかのような……まさか、目が見えないのか。



「君は……?」

「わたしの名は『リナ』と申します。よろしくお願いしますね」



 リナという少女はそう純粋に微笑む。



「リナ様とネヴィル様はご兄妹。リナ様は、目が見えない故にこの屋敷で住まわれておられるのです」



 そうだったのか。……って、ネヴィルに妹さんがいたのか。


 それにしても、腰まで伸びる金髪がまぶしいほどに綺麗だ。華やかなドレスに身を包み、大変美しい。


 ――って、そうじゃない。


「待ってくれ。僕は屋敷を買ったんだが……人がいるなんて聞いてないぞ」

「恐らく、ネヴィル様には何かしらの意図があるのでしょう」


 そう冷静に紅茶を淹れるエドワード。意図ねぇ? まあいいか、ネヴィルの事を知る良い機会かもしれない。この妹さんとやらから、中立地帯やネヴィルの情報を引き出すか。

 なんて考えていると、ヨークがリナの方へ駆け寄っていた。



「よろしくお願いしますね、リナさん」

「……? 優しい手。あなたは?」

「わたくしは、ヨークです。弱きを助け、強きを挫く存在です」


 そうだったのか。

 あながち間違いでもないとは思うけど。事実僕は助かったし。


「ヨーク様は、崇高な理念をお持ちなのですね。素晴らしいです」

「そ、そんな大層なものでは……」


 恥ずかしがって顔を赤くするヨーク。僕は紅茶を飲んで状況を見守りながらも、エドワードに訊いた。



「なあ、エドワードさん」

「呼び捨てで構いません」

「じゃあ……エドワード。僕達はここに住んでいいのかい?」

「問題ありません。このお屋敷は間違いなく、ヘンリー様のもの。ただ、格安にした分……リナ様の面倒は見ていただきたいのです」



 なるほどね、これはしてやられたな。道理で安すぎると思ったんだよね。でも、ネヴィルの妹なら仕方ない。しかも、目が見えないようだし……不憫(ふびん)だ。こちらがお世話になっている身でもあるし、少しは恩返ししないとね。


 それに、もれなくカッコいい執事もついてくる。最高じゃないか。



「分かった。ここは中立地帯の中では比較的安全のようだし、敵から見つかる心配もないか」

「ええ。ここは秘密の場所ですから、かなり安全かと。それに、この屋敷の庭には『ダンジョン』もございます」


「なんだって?」


 聞く所によれば、もともとこの中立地帯・スコットは敵国の攻撃に備える為に塹壕(ざんごう)を掘りまくった過去があるらしい。だから、地下がいつのまにかダンジョン化してしまったと。

 モンスターが棲みついてしまったんだろうとエドワードは言う。今は、戦争もそれほど激化していないので出入口は限られているとか。


 その内のひとつがこの屋敷の庭ということらしい。


 僕は、屋敷と共に庭ダンジョンも手に入れてしまった。

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