表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/61

金貨投げの恐るべきダメージ

 血の付着した斧が嵐のように迫ってくる。

 やば……僕にこんな攻撃を避ける能力なんて……おぉ?


 急に目の前に“見えない壁”が現れ、斧攻撃を防御してくれた。この不思議な力はなんだ?



「シャインブレイズ!!」



 この声はヨークだ。

 そうか、彼女の魔法スキルといったところか。そうか、すっかり忘れていたけどヨークは“聖女”だったな。

 シャインブレイズは、どうやら物理攻撃を防御するものらしく、敵のブラッドアックスを完全に防いでいた。


 この隙に乗じて僕は、金貨を投げた。



「くらえ! 金貨投げ!!」



 大量の金貨を投げて遠距離物理攻撃。硬貨(コイン)は、見事に女の鳩尾(みぞおち)へ命中した。



「がはッ!!」



 恐ろしい程の高速回転で壁に激突。

 メリ込んでさえしまった。

 修理代は後で支払おう!


 それより、金貨を大量に消費すると、ここまでの威力となるとはな。そう、ちなみに『金貨投げ』は金貨を消費していた。


 1枚につき固定ダメージで『1000』の威力があるようだ。つまり、100枚使えば『100000』のダメージを。1000枚使えば『1000000』のダメージを与えられるわけだ。


 しかも固定ダメージだから、相手の防御力は無視される。どんなレア防具をしていようが関係ない。


 更に更に、僕は『金貨増殖バグ』持ち。金が減る事は一切ない。無限の金貨(・・・・・)で攻撃をし続けられるのだ。



 僕は、倒れている女の前に立つ。

 どうやら辛うじて意識はあるようだ。



「なぜ僕を狙った」

「……くっ、ころせっ!!」


「そういうのいいから! 理由を教えてくれ。チップは弾むよ」



 てのひらに50枚の金貨を出して誘惑してみた。これで受けるもよし、拒否すれば衛兵に引き渡すだけだ。



「わ、私はガヘリスに雇われたんだ。お前を殺せば金貨10枚をくれると約束してくれたんだ」



 またガヘリスか……あの野郎。僕を殺す気でいたのか……つまり、この女は暗殺者(アサシン)。追放だけで飽き足らず……ついに殺しまで。


 そんなに僕を追い詰めて楽しいのか、ガヘリス!



「じゃあ、そのガヘリスを殺してくれ。金貨100枚を払う」

「……わ、分かった。依頼の失敗は今日が初めてだった……いつもなら、完遂なのだがな。ちょっと悔しいよ。でも、依頼はきちんとこなす」



 よし、落ちたな。

 金の力は偉大だね。


 とにかく、向こうが暗殺を依頼したのなら、僕にもその権利があるはず。殺意を向けてきた以上、こちらも容赦はしない。


「じゃあ、頼んだよ。前払いで10枚払っておくから」

「あ、ありがとう……あなたのような依頼人は初めてだっ!」


「ああ、頼んだよ。暗殺者(アサシン)さん」

「必ずガヘリスの首を持って帰ろう」


 丁寧に出入り口から帰っていくアサシン。ブラッドアックスこそ超レア装備だけど、大丈夫かなあ。



 * * *



 宿屋を出ると、ヨークが頭を下げていた。


「どうした、急に」

「とても快適な宿屋に泊まらせてもらったので、感謝を示しているんです」

「感謝なんて必要ない。この力はヨークのおかげなんだから」


 そうだ、ヨークの力がなければ僕にこんな薔薇色の人生は巡ってこなかった。ガヘリスに暗殺されていたかもしれないんだ。

 僕の方こそ、ヨークに感謝だ。


「いえ、そんな……わたしなんて」

「気にするな。僕とヨークは仲間だろ?」

「は、はいっ、嬉しいです! わたし、ずっとぼっちだったので本当に嬉しい」


 そうか、ヨークは家族を失ったと。なら、僕と一緒だ。僕にも家族はいなかった。唯一、妹はいたけど生き別れ。今はどこに居るか分からない。


 だから、ギルド職員をやって必死に生活を送っていた。でも、ガヘリスは僕を散々馬鹿にして……居場所をさえ奪った。


 全部失ったかと思ったけど、ヨークが助けてくれた。やっぱり、僕の方こそ感謝しないと罰が当たるな。



「なら、ネヴィルのところへ向かおう。新しい家を買うんだ」

「おぉ、家をですか!」

「昨日の家は吹き飛んでしまったからな。建て直すにも時間が掛かるだろうし、なら、他の屋敷を買うしかないだろう」



 そんなわけで、ネヴィルの居る『ラドロー城』へ向かった。そういえば、あれって屋敷ではなく、城だったんだな。


 道中、ヨークが僕に訊ねてきた。



「あの、ヘンリーさん」

「なんだ?」

「ヘンリーさんは、なぜギルド職員をやられていたんですか?」

「僕はもともと『ぷちテイマー』でね。『ぷちドラゴン』使いだったんだ。今もその能力は失われていないけどさ」


「へえ、テイマーさんだったんですね!」


「ああ、だから……ドラゴンの事を詳しく知りたかったというか。でも、必死に働いていたらそんな暇もなかった。毎日生活するだけで必死だった。気づけばギルド職員の日々だった」


 伝説のテイマーになろうと思っていたんだけど、その才能は僕にはなかった。だから、ぷちテイマーのまま。半端者だった。


 けど、金のある今なら……なんでも出来る気がしていた。


 ふと、ペットショップが目に入ったのだが、どうしようかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ