元老院議事堂
大体のことは理解した。
ヨークが何者で、なんであんな特殊な能力を持っていたのかも。
「ありがとう、プランタさん」
「ええ、いいですよ。ヨーク様は自分のことを話すのが苦手なので」
そうだったんだ。
確かにあんまり話してくれないしな。
秘密主義なのかな。
「それじゃ、僕はリィン女王様を救いにいきます!」
「女王様を? ……なるほど、運命の導きですね」
「え?」
どういう意味だろうと首を傾げる僕。聞き返してもプランタは沈黙を貫くばかり。もう金貨100枚分の時間は終わったかな。
「ヘンリーさん、これだけはお伝えします」
「なんでしょう」
「あなたは、最高の未来を掴める」
それだけ言ってプランタは、僕から視線を外す。また分厚い本を読みだして“いつでも帰ってどうぞ”な雰囲気を出していた。
これ以上は、なにを聞いても教えてくれそうにないな。
僕は部屋から出ていく。
* * *
ヨーク大聖堂を出て、ちょっと歩くとヨークとスイカが焦って向かってきた。なんか物凄く慌ててるな。
「ヘンリーさん、大変です!」
「ヘンリーさん、ヤバイです!!」
「ど、どうした二人とも! 落ち着けって!」
ぜぇぜぇ、はぁはぁ息を切らすヨークが説明してくれた。まずは息を整えてもいいのに。
「い、いたんですよ。【▼】タトゥーの人! スイカちゃんが偶然見かけて……!」
「はい、あっちの……噴水の向こうにある“大きな建物”の方へ向かっていました」
あっちは、要人議員が集まる『元老院議事堂』か! そうか、暗殺者は視察に来ていたんだ。なんてタイミング。
やるなら今しかない。
「ヨーク、スイカも来てくれ! 議事堂へ行くぞ」
「「はいっ!!」」
全力で走って『元老院議事堂』へ辿りつく。
どこだ、どこにる? 【▼】タトゥーの人物。男か女か知らないけど、見るからに怪しいヤツのはず。僕は、キョロキョロと周囲を注意深く見渡していく。
人が多いな。
エルフやドワーフ……多種多様な種族。あまりに多くて困る。これでは、見つけられないか?
「なあ、スイカ。そいつ、どんなヤツだった?」
「えっと、えっと……その」
「落ち着いて、特徴とかないのか」
「……実は」
スイカが口にするよりも先に、僕はその人物に気づいた。……あ、あの人が暗殺者なのか……? まさか……!