暗殺を阻止せよ
詳しく聞くと、ランカスター帝国のスパイが紛れ込んでいるらしい。それが誰なのかを突き止め、確保して欲しいとのことだった。
「スパイって、そんなのどうやって見つければいいんだ」
「ええ、それなんですけどね、スパイにはある特徴があるらしいんですよ」
「特徴?」
「右腕に【▼】のタトゥーがあるようです。それがスパイの印だとか」
「なんでそんな情報を知っているんだ? だったら、ジェームズが捕まえればいいだろ」
「残念ながら、共和国には何万人と人がいるですよ~。でも、明日になると女王様が姿を現す予定です。中央噴水広場で演説をするんです。だから、チャンスはそこしかないかと」
「つまり、暗殺もそのタイミングってことか……」
「その通りです。全力で【▼】のタトゥーを持つ人物を探して欲しいのです」
やるしかないか。
パナシーアポーションを手に入れる為に。
「分かった。暗殺を阻止しよう。女王様に死なれても困るし」
「ありがとうございます! もちろん、この自分も手伝いますから」
「こっちは聖女のヨークとドラゴンのスイカもいる。まあ、なんとかなるさ」
「心強いです。よろしくお願いします、ヨーク様にスイカちゃん」
二人と握手を交わすジェームズ。
俺たちはそれから店を後にした。
* * *
「ヘンリーさん、その……女王様を助けて下さい。もし彼女が殺されたら、共和国は大変です!」
「もちろん助けるさ。でも、ヨーク……なんだか女王様と知り合いっぽい口ぶりだな」
「……そ、その。それは……はい。実は、リィンとはお友達なんです」
「リィン?」
「女王様の名前です。昔はよく遊んでいたので、幼馴染なんです」
へえ、ヨークに女王様の知り合いがいたとはね。
「そうか、なら助けないとな」
「はい、お願いします。共和国を崩壊させない為にも」
共和国の為か……やっぱり、ヨークはこの国の根幹に関わる人物なのだろうな。あのプランタも知っているはず。なら……僕は。
「よし、ヨーク、スイカ。ちょっと二手に別れよう。僕は西側を探してみる。二人は東側を探してみてくれ。少しでも手掛かりを手に入れよう」
その案にスイカがうなずく。
「なるほど、さすがヘンリーさん! では、あたしはヨークさんの護衛しますね」
「頼む。今のスイカの力なら百人力だ」
「えっへん!」
さて、あとはヨークだけど。
「というわけなんだ、ヨーク。スイカと一緒に東へ行ってくれ」
「で、でも……」
「共和国内だし、そんな治安も悪くないだろ?」
「はい。衛兵もいますし、なによりスイカちゃんが守ってくれますから。でも……」
「いざとなったら僕も駆けつける。信じてくれ」
「……分かりました。ヘンリーさん、その……」
「ん?」
「いえ、なんでもありません」
二人は背を向け、東側へ歩いていく。さて、僕は『ヨーク大聖堂』へ向かう。プランタ枢機卿から、ヨークのことを全て聞き出す……!