金貨100枚を払わないと入れない部屋
ヨーク共和国へ入っていく。
ステンドグラスの明かりが七色で神秘的だ。
信者とすれ違って、奥を目指す。
「ヨーク、こっちでいいのかい」
「はい……奥の部屋に枢機卿がいると思います」
気が気でないのか、ヨークは顔を青くしていた。大丈夫かな。泣きそうになってるし。よっぽおど枢機卿って人が怖いんだなぁ。
奥には、大きな扉があった。
固く閉ざされており、普通に開けるのには大変そうだった。手で押すか、引くしかないよな。
手を伸ばそうとするとヨークに止められた。
「ダメです、ヘンリーさん」
「えっ、ダメって?」
「この扉には魔力が宿っているんです。普通、枢機卿にお会いになる場合は、大量の金貨を支払わないとダメなんです」
なるほどね、道理で厳重だと思った。それに、金貨を投入するような“箱”があった。そこに大金を納めるわけか。
本来は金持ち貴族しか会ってくれない、そんなシステムなわけだ。
だけど、俺には『金貨増殖バグ』がある。アイテムボックスには、数え切れないほどの金貨があり、すでに限界を迎えていた。
ヨークのことが分かるなら、いくらでもくれてやるさ。
「で、いくら払えばいいんだ?」
「金貨100枚です!」
「普通に考えたら高いな。ていうか、ぼったくりじゃないか!?」
「枢機卿ですからね。一番偉い方ですもん」
そりゃそうだが、一般人には払えない額だぞ。端から会う気ないな。だけど、俺は払う。払えるのだから会ってもらうぞ。
金貨100枚を箱の中へ入れた。
すると『ゴゴゴ……』と鈍い音が響く。扉が開いたんだ。
「おぉ、凄い仕掛けですね!」
スイカが楽しそうに燥ぐ。
いや、それどころか周囲にいる信者もぶったまたげている。そうか、金貨100枚なんて大金を払えるヤツなんて、そうはいないからな。
「おお!」「嘘ぉ!!」「金貨100枚だぞ!!」「あの少年がぁ!?」「世の中分からないものだな」「貴族なのか」「いやぁ、そうは見えないけどな」「枢機卿に会えるとか、いいなぁ」「滅多に姿を現さないからねえ」
羨望の眼差しを受ける。
へえ、その枢機卿とやらは引き籠りなのかな。
* * *
奥の部屋に入っていく。
薄暗くて視界が悪い。
「えっと……」
戸惑っていると、次第に明かりがつく。部屋全体が白く輝き、昼と変わらない明るさになった。そして、そこには――。
「ようこそ、いらっしゃいました。私はプランタジネット。金貨100枚を支払われたということは、共和国の発展に貢献したも同義。あなたは素晴らしい行いをしたのですよ」
な、なんだこの人……!
女の子!?