ヨーク大聖堂
ヨーク共和国。
厳重でもない正面を進む。兵がほとんどいない。守りが手薄だなあ。
本当に戦争に備えているのだろうか。
不思議だけど、先を進もう。
綺麗な街並みが広がっている。あちらこちらに噴水があって、冒険者が腰掛けていた。へえ、ここは冒険者が多いんだな。
貴族もちらほらいる。
「のどかだなあ」
「はい、ヨーク共和国は身分とかあんまり関係ないんです。ほぼ平等ですよ~」
「マジか。なんか『ランカスター帝国』とえらい違いだな」
「共和国の女王様が、そういう国にしているらしいんです」
この国は『女王』がいるんだ。
どうやら、女王は『クリザーロー』という国出身の女王であり『共和国の議員』。この共和国の元老院議員のひとりらしい。議員の中でも女王が国民から絶大な人気を誇るらしい。
それにしても、いいところだなあ。
スイカも初めてくる国に目をキラキラ輝かせていた。
「なんだか隅々まで綺麗ですよね。ゴミひとつ落ちていませんし、清潔感があります!」
その通り、道もきちんと舗装されているし、建物も間隔があって広々としていた。これほど美しいと芸術的だな。
「うん。さっそく街を回ってみるか」
二人を連れて、ヨーク共和国内を回る。ぐるぐる街中を歩くと、なかなか広いことに驚く。これはマズイな。一日では回り切れない距離だぞ。
ふと、ヨークが足を止めた。
ん、なんだ?
「あそこは“ヨーク大聖堂”です」
「ああ、あのバカデカイ建物が」
以前、スコットのシスターに絡まれた時に出てきた名称。ヨーク大聖堂がそこにはあった。なんて美しくて綺麗なんだ。
目の前には城のように大きく、けれど荘厳な建物があった。
何十人ものシスターが世話しなく行き交っていて、参拝者らしき信者も多かった。
「ちょっと気になりますねっ」
「スイカもそう思うよな。僕もだ。行ってみようかな」
俺とスイカは、大聖堂へ向かおうとした。だけど、ヨークは乗り気ではなかった。
「……うぅ」
「ヨーク、どうした」
「だ、だって……怒られちゃいますもん」
「誰に?」
「プランタジネット枢機卿に……」
えっ、枢機卿だって?
この大聖堂の一番偉い人ってことだよな。
つまり、ヨークのことをよく知る人物というわけだ。それなら、尚更会ってみたい。僕の『金貨増殖バグ』についても詳しいかもしれない。うん、間違いないな。
情報を得るなら寄る価値はあるだろう。
「じゃあ、行こうか!」
「ひぃ~~! お尻ぺんぺんされちゃいますぅ」
ぶわっと涙目になるヨーク。
もしかして、その枢機卿って怖い人なのかなあ。でも気になるし、向かう。うん、その人に会ってみよう。