ヨーク共和国
スイカの背中に乗り、ヨーク共和国を目指した。まさか、こんなアッサリと移動できるようになるとは。嬉しい誤算だ。
――しかし、快適な旅かと思えば、そうでもなかった。
「「うああああああ!!」」
僕もヨークも絶叫していた。
スイカのS級飛行が予想以上のスピードだったからだ。い、息ができない。周囲がなにも見えない。物凄い風が吹き抜けていた。
びゅぅぅぅんと高速飛行を続けるスイカ。こんな爆速だなんて聞いてないぞ!
『振り落とされないよう、しっかり掴まっていて下さいね!』
いやいや、これは振り落とされるってえっ!!
どんどん加速。
いったいどこまでスピードが上がるんだ。エンペラードラゴンに限界はないのか。なんて飛行能力だ。ここまで優秀なペットとは思わなかった。
やがて、スイカは着陸。
中立地帯・スコットから僅か十五分で『ヨーク共和国』へ辿り着いてしまった。……はやっ。普通、一週間だぞ。
丘の上に着陸。
僕とヨークは、目を回しながら降りた。
「……うぅ、酔った」
「わ、わたしもですぅ~……目がグルグルしますぅ」
バタッとその場に倒れ、仰向け大の字になる。もう無理、吐いちゃう。
「あっ、ヘンリー様、ヨークさん! 大丈夫ですか!?」
「大丈夫に見えないでしょ……僕もヨークもヘロヘロだよ。スイカ、君は凄い飛行能力を持っているんだね」
「えへへ。これでもエンペラードゴランですから!」
えっへんと胸を張るスイカ。でも助かった。たったの十五分で辿り着けるとは思わなかったけど、目と鼻の先には『ヨーク共和国』があった。
あそこへ行けば、秘薬とかあるかも。
それに、ヨークに関する謎もついでに解けるかなと思ったんだ。だから、ヨークは乗り気じゃないかと思ったけど、意外やついて来てくれたし、もしかしたら覚悟が決まっているのかな。
「これからのプランを話す。ヨーク、スイカ、聞いてくれ」
二人とも正座して僕に注目する。
「はい、お願いします!」
「ヨーク共和国でどうなされるのです?」
「うん。それなんだけどアサシンさんを治療する薬を探す。それがまずは前提ね。で、せっかく共和国へ来たから、少し観光。と、情報集め」
「情報集め、ですか?」
「うん、ヨーク。オークに関する情報を集めようと思う。もしかしたら、レッドオークとかブラックオークについて少し分かるかもしれないし」
「なるほどですね!」
――ということにしておいた。
本音は、ヨークのことなんだけど、さすがに君のことを調べるなんてストレートに言えるわけがなかった。
さっそく、歩いて向かう。
丘の向こうには、城が見えていた。
なんで、あんな沢山のお城があるんだろう?
「……城塞都市です」
ヨークがぽつりとつぶやく。
「え、なんだって?」
「ヨーク共和国は“城塞都市”という構造で作られているんです。周囲の敵から護る為、防衛力を高めてあるんです」
「そうだったのか。確かに、周りは帝国や中立国で囲まれているもんな」
「はい、なので戦争に備えている、という意味合いもありますね」
戦争か。
帝国はとにかく戦争が好きだからなあ。百年に何度起きているか分からない。
そうして、ようやく『ヨーク共和国』へ踏み入れた。